- Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087718577
感想・レビュー・書評
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パッキパキ!冬の北京を、最強(狂)コンビが闊歩する!清々しいまでに遊びたおす、笑える滞在記。
剛力彩芽に悪霊を乗り移らせたアヤメこと <菖蒲>!濡れて狂暴化したグレムリンこと ロシアントイテリアの雌犬<ペイペイ>!のコンビ。
感情と欲望に忠実、怖いもの知らず。
銀座ホステス上がりの菖蒲36歳は、北京駐在中の夫(56歳・商社マン)の後を追って、コロナど真ん中でIN。
ブランド、ファッション、グルメ、遊び、観光、現地人の生態など「いまの中国」をビビッドに描く。無法の「自転ター」軍団!
地の文は彼女のしゃべり口調で、そのワードチョイス、ゴロの良さに何度もニヤニヤ。「楳図は赤白」とか。笑
地頭のいいアヤメの歯に絹着せぬ語りはユーモアにあふれ、グルーヴ感がある。
一筋縄ではいかない、つよつよメンタルのアヤメと、まじめで繊細よわよわメンタルの夫。2人の駐在生活の行方は?
アヤメの腹をくくって生きる強さが眩しかった。
しっかりオチもつけてくれたし。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
綿矢さんのデビュー当時の作品は、ブクログに登録してません。芥川賞受賞ももう20年前かあ。
インパクトのある表紙、帯には「中国滞在経験」「痛快フィールドワーク小説」の文字が踊ります。
主人公は、超ポジティブな女性・菖蒲(アヤメ)。単身赴任の夫が滞在する北京に行き、街を闊歩して回る姿が描かれます。豪快で物怖じせず、挑戦心あふれる外向的な性格が、読み手の笑いを誘います。
北京の雑多な様子が、菖蒲のミーハーな視点だからこそ、リアルに伝わってくる気がします。
北京の商業施設・交通事情・人・自然等の描写と菖蒲の個性がぶつかり合い、更に綿矢さんの言葉の遣い方の秀逸さが加わり、北京と菖蒲両者を表現する上で、相乗効果を発揮しているようです。
まぁ、実際に菖蒲みたいな人がいたら、ドン引きしてしまいますが、(都合のいいことに)読んでる分には、この強烈なキャラが実に楽しかったです。
菖蒲には絶対に賛否両論あるでしょう。もしかしたら、女性の方が違和感等強いかも‥。
個人的には、菖蒲の自由奔放さと満喫姿勢が余りにも濃くかつ炸裂し過ぎで、北京のカオス度合いの印象を上回っている印象なので、菖蒲の強炭酸の刺激がやや控え目の方が、バランスがよかったのかなと感じました。 -
北京に単身赴任している夫から中国に馴染めず適応障害気味で、厳しいコロナ対策で家からも出られずに鬱寸前なので、こちらへ来て欲しいと言われた菖蒲。
中国には特に思い入れもなく、中国語も喋れないが夫に呼ばれてまぁ行くか…と。
行ったからには…と菖蒲は北京を楽しむ。
シビアなほど陰と陽をはっきりさせてる北京。
油断してるといきなり野趣が溢れだしてくる。
中国の人は話すとき声デカい。
だからって何⁈とばかりに菖蒲は今日も歩く。
とにかく自分で自分のことを面の皮厚蔵だから煙たがれたりもするけど、全然へこたれない。
強く逞しいのが菖蒲だ。
北京の激しさに負けない菖蒲を味わい尽くしたという一冊だった。
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主人公が中々にぶっ飛んだ性格でよろしい。
このくらいのポジティブと言うか何も考えずに生きれたら人生楽しいかも。
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綿矢りささんによる、北京で駐在生活を送る夫にあとから帯同した30代女性を主人公とした小説。帯を見ると「痛快フィールドワーク小説」とあり、そんなジャンルがあることを初めて知った。北京の様子は知らないことも多く、そこの日本人駐在員生活に焦点を当てているのも興味深かった。主人公の女性は、日本ではさぞ生きづらかっただろうなと思うような性格をしているが(実際、夫からも「日本では対人トラブルが多かったと聞いているが、北京では生き生きしている」などと言われていた)、観察眼や意外にも本質を見る目があることを感じ、憎めなかった。綿矢さんの別作品『嫌いなら呼ぶなよ』に通じるブラックユーモアを随所に感じた。全体を通じテンポ良く進み、続きも気になるが、知らない方が良いのかもしれない、と思うに至った。どんな状況になっても主人公は逞しく生きていくと思う。綿矢さんは人間や物事の描写が上手く、面白かった。
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実際の北京滞在経験を元に書いた本とのことで
出てくる地名も店名も中国語も
北京留学経験(しかも朝陽区)のある私にとっては
わかるわかる!といった感じで懐かしかった。
だからこそエッセイを読まされた感じはある。
2度出てきた日本の家電量販店の売り場すら
私が働いていたコーナーの隣で
中国人がわんさか買いに来ていた10年前を思い出して
自分が書いたのかと錯覚するほど
見ている光景が同じでビックリした笑
さすが私の友だち!!(になりたい作家No1)笑
とにかくポジティブな主人公も好き!
『未来の私は今の私じゃない。
私はいつでも、今の私の方が大事。』
私もこれからは“精神勝利法”で生きてみようと思う!
それにしてもコロナ禍を題材にした本を
3冊連続で読むとは一体何事だろうか?
コロナ終息の兆し...? -
2024年1冊目。
北京行ってご飯食べたくなるお話。主人公の女性があまりにメンタル強すぎて、でも独りよがりじゃなく、他人の意見にはきちんと耳を傾けたり、謝ったり、俯瞰して考えたり。
無神経ではない分、脆さもある彼女の生き方、真似できないけど、嫌いじゃない。 -
途中、吹き出す面白いワードが満載で、主人公の価値観も最高!
ただとにかく私自身が北京に全く興味がないということに気がついた。いや、わかっていたけど、こんなに中国だらけの話だと思ってなかった。地名とご飯が多め。
北京好きか、これから行くか、もしくは行ったことがある、という人はめちゃくちゃ面白いんじゃないかと思う。 -
毎日張り合いが無くて退屈だって?だったら北京に行っチャイナ!
『嫌いなら呼ぶなよ』(9784309030487)から2作目の綿矢りさ作品。更に増してるキレ味と溢れ出る自由感が魅力の「“痛快フィールドワーク小説”」。
北京市内の地名や場所がわんさか出てくるので地図を見ながらの方がより臨場を楽しめるかと。
物語性を楽しむというよりも、怒涛のように連続する綿矢節の北京ライフ紹介ナレーションに楽しんでいる感覚。一応主人公の〈アヤメさん〉が歳の離れた夫との将来をどうする、みたいな縦軸があるにはあるが本作においてそこは割とあっさりしているというかそこじゃない。そこじゃないんだよなあ。アヤメさんは漢字表記で〈菖蒲さん〉と書くのだが、中国では古来より菖蒲の香りには邪気祓い・食せば長寿の効能があるとされており現代でも端午の節句に風習が残っている。アヤメさんの猛烈でパワフルなキャラクター性はその辺りの‘真っ直ぐ強い’イメージと繋がっているようにも感じる。余談だが、ショウブとアヤメは植物分類的には別の科であり違う植物らしい。漢字はどちらも‘菖蒲’だが。
アヤメさんの友達の〈美杏〉の杏も中国では由緒ある植物。
さて、本作はとにかく心を開いて北京の空気を胸いっぱいに吸い込むことこそが肝要。
「トイレの戸がちゃんと閉まった運の良い奴もいれば、トイレの戸を閉めた途端天井が落っこちてくる運の悪い奴もいる、そんなロシアンルーレットに毎日晒されて自然に運試しする運命にあるのが北京人としてあるべき生活なのかもしれない。」(p44)
「また王一博だ」(p75)
「シビアなほど陰と陽をはっきりさせてる北京」(p78)
「日本人マッサージ師なら用心して触れない眼球のキワのキワまで強めの指圧で攻めてくる。」(p115)
とか、たくさんある食事に関する事などなど。
(女性の)生き方全般に関する「もー逆に聞きたいんだけどさ、妊娠出産のどの部分が楽しいの?」(p132)から始まる数ページぶんに渡って捲し立てるような豪速球火の玉ストレートの主張は実に熱い。ちょっと唐突で戸惑うけど。
そして今猛烈に『阿Q正伝』が読みたくて仕方がない。こんな紹介されたら興味湧くに決まってるでしょう。
1刷
2023.12.30