- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087722932
感想・レビュー・書評
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5/12
『怒りと悲しみの血を吸い込んだ沖縄の土地に繰り広げられる恐喝、暴行、殺人…。沖縄の地を生の根源とする作家の鮮烈な想像力の閃めき。熱気をはらんだ筆致の第一創作集。第4回すばる文学賞受賞作。』(「Amazon」サイトより)
目次
ジョージが射殺した猪/窓に黒い虫が/ギンネム屋敷
ギンネム屋敷
(冒頭)
『ギンネムが密生した丘はうねりながら四方に広がっている。丘のすぐ後ろに巨大な入道雲が湧き、固まって動かず、陽は一瞬もかげらない。ギンネムの柔らかい葉は水気を失い、なえている。私は目の前にうなだれている葉をむしった。砲弾で焼き尽くした原野をおおい隠すために米軍は莫大な量のギンネムの種を飛行機でまいた、と聞いている。』
『ギンネム屋敷』
著者:又吉 栄喜(またよし えいき)
出版社 : 集英社
単行本 : 212ページ
受賞:すばる文学賞(『ギンネム屋敷』)
:九州芸術文学賞(『ジョージが射殺した猪』)
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「ジョージが射殺した猪」「窓に黒い虫が」「ギンネム屋敷」の三篇が収録。
著者の初期の代表作がまとめられた一冊。
「ギンネム屋敷」がすばらしい。
沖縄戦を語る言葉の中で、いつもいつも見えなくなってしまうものがある。
その一つが「朝鮮人」だ。
とてつもない暴力を生き延びた者が、それを語る言葉を持ちえることは稀だ。
死者、語ることのできないままに生をつなぐ存在、そして語っていても聞き手を持ち得ない存在。
そのような存在が沖縄の文学に描かれる試みは、「ギンネム屋敷」から始まったのではないかと思う。 -
2010/3/29購入