- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087733655
作品紹介・あらすじ
第二次世界大戦下。ナチスに占領されたチェコの美しい小さな町、青年ダヴィトをかくまうヨゼフとマリエの夫婦…。ファシズムの嵐吹きあれる極限状況を、解放の日まで、愛と勇気と知恵で生き抜く人間たちを、ブラックな笑いとヒューマンな感動で描く。「過去の歴史」とは言えない「戦争」のなかの恐怖。にもかかわらず人間の尊厳をまもる勇気・寛容・誠実さ・おかしさに誰もが胸をうたれ、涙があふれる。実話をもとに描く人間ドラマの傑作。映画「この素晴らしき世界」原作。
感想・レビュー・書評
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チェコに関する前知識がほぼないまま読み始めたが、これから読む人にはざっくりと第二次世界大戦期のチェコの立ち位置などを知ってから読むことをすすめたい。
章と章が断続的に繋がっているような感じで、(おそらく作者にそのような意図はないのだろうが?)次々に入ってくる新聞記事を読んでいるようなスピード感があった。戦争の時代の、隠れて生きなければいけなかった人たちを描くのに、わざとそういう書き方をしたのかわからないが、なんだか私には妙に生き急いでいるように読めた。そういうものなのだろうか?
クライマックスはまるで劇を見ているようで、自分が感動しているのかよくわからなかった笑
滑稽な、というかこれが"チェコ的"なのだろうか?最後に掲載されていた、亡くなった訳者千野栄一氏のエッセイを読むと、この普段あまり味わわない読後感が掴めたような気がしてくる。
訳者あとがきにもあったが、この作品は事情により三人の家族によって全文が訳されている。そのあたりにも想いを馳せながら余韻に浸りたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ナチスドイツ占領下のチェコが舞台。人々は、だれが自分を密告する敵になるのかわからない緊張感の中で生活している。主人公のヨゼフは、追放されたユダヤ人の隣家の隠し金庫を開けに忍び込んだ時、偶然にも逃亡して家に潜んでいた青年ダビッドとはちあわせ、見捨てることができず、自分の家にかくまうことにした・・・。
「戦時下、ユダヤ人をかくまったある勇気あるチェコ人の話!すばらしい!!」
・・・ではないのだ。だからこの小説はすばらしい。
そもそも、冒頭から盗みに入っちゃってる時点で、
「一体どんな小説なんだ?」と思わせる。
この小説の登場人物は、ことごとくみんな、「人間くさい」のだ。
原題は「我々はお互いに助け合わなければならない」
このタイトルの方が日本語のタイトルである『この素晴らしき世界』よりも、この小説にふさわしいことは間違いはない。
決してみんな、「正しい」ことをして生きていない。
だけど、自分の譲れない一線をもっていて、それはもう、生死を分けるようなラインで「われわれはお互いに助け合わなければならない」の精神を発揮する。
その「われわれ」がチェコ人同士だけじゃなかったり、
「助けましょう」じゃなくて「助け合わなければならない」であることに、想像を超える重みと希望があるのだと感じる。
とはいえ、日本で育ってる私にとってそんなに理解しやすくもない。映画にもなっているのでそちらも見てみたい。 -
「今の時代に子供なんて」という中盤のチージェクのセリフが一つの伏線になっている。この小説の一つのミソは、最終的に生まれてくる子供(彼の未来は分からない)を除いて、ただの一人も幸福な人間がいない事だ。再読だが、前回受けた以上の重みを最後の数ページに感じ取った。何もかもが重く、苦しみと喜びでできている、この素晴らしき世界。
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大戦時代のチェコが舞台。ユダヤ人問題なども絡んで、背景のお膳立ては抜群。ドラマチックにならないわけがない。