アウシュヴィッツの図書係

  • 集英社
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感想 : 201
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087734874

感想・レビュー・書評

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  • 最初はそんな過酷な環境で本を読んでる場合じゃないだろうと思ってたけど、読み進めると命をかけてでも心を守るために必要なんだというのが分かってきた。
    その本を守り続けたディタの強さは本当に尊敬に値する。

    全編に渡って戦争のむごたらしさが伝わってくるが、とくに看守エリザーベトに対して、戦争がなければ善良な美容師に過ぎなかっただろうとディタが想像を巡らせるところが、かなりキた。
    看守たちはもとから『恐ろしい人』ではない。
    どこにでもいる普通の人が、戦争によって恐ろしい加害者になる。
    それが戦争の怖さの一つだと。

    それと、脱走したルディ。
    彼がアウシュビッツの真実を訴えても誰も耳を貸さなかったところがキツい。
    あの時誰かがルディの訴えを真剣に受け止めていたらもっと早く収容所の人たちを救えたかもしれないのに。

  • タイトルと表紙が気になって図書館に予約。
    読んで知りましたが、これは実話を元に書かれた小説でした。実際にアウシュビッツに学校が存在してたそうです。非公式に図書室も。内容はタイトルから想像できるように悲惨な環境です。毎日のように死が隣にあって肉の焼ける臭いに満ちていて、それでも子供たちに学ばせよう、学校へ行ける日常を与えようと、大人や少年少女たちが戦う物語。何気ない毎日を過ごせる国と時代であることに感謝。

  • 実話にフィクションで肉付けをしたという小説

    アウシュビッツ収容所にたった8冊の本を隠し持つ図書館があり、ディダはその図書館の図書係として命懸けで本を守る。
    本を読む事を禁じたナチスは、ユダヤ人に「考えること」を許さなかった。

    赤十字の視察に備えて子どもを楽しませる小さな学校が作られ、その中に秘密の図書館があった。
    紙の本だけでなく、本の内容を話すことができる「生きた本」という人々の話にもみんな夢中になった。

    あまりに酷い収容所の現実。いつガス室送りになるか分からない毎日の中で、現実を忘れさせてくれる本の存在は小さくなかった。

    そんな中でも、子供たちに教育をしようとした人物や、収容所の実態を告発しようとした人物もいた。

    読むのが辛かったが、読んで良かった一冊

  • 実話をもとにしたフィクション。だが、ほぼノンフィクションに近いと思う。

    辛く悲しい気持ちで読み進めたが、これは人類である以上、知るべき内容だと思う。

    知ることしかできないということは、知ることならできるということ。

    まずは知ることから。

  • アウシュヴィッツ強制収容所内にあった秘密の図書館の物語。
    史実に基づいていて、巻末では「その後」も紹介されています。

    言動によって結果として描かれる登場人物たちの内面が、とてもリアルに浮かび上がってきました。
    そこにあった日常。そこにあった日々の営み。心の動き。会話。助け合い。絶望。希望。

    リーダーであるヒルシュの存在に心惹かれました。
    彼のあり方、彼はなぜそこにいて、その役割を担うことを決めたのか。

    どのような場所にあっても、自分が大切にしたいことを大切にし続けていくにはどうしたらよいのかを問われる物語であるように感じました。

  • 第80回アワヒニビブリオバトル「出張!アワヒニビブリオバトル@天神さんの古本まつり」で紹介された本です。チャンプ本。
    2021.10.17

  • たった八冊の本が、荒野どころか地獄の真ん中で、どれほどの意味があるのだろうかという問いに、ウィリアム・フォークナーが冒頭で答えを示してくれる。
    ⭐⭐「文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。」⭐⭐

    話の構成は上手く作られていて、現在と過去(アウシュビッツ前とアウシュビッツBⅡb区画に来てから図書係になるまで)が交差しながら、語られる。
    登場人物たちの感情は、冷静に表現され、その分、比喩表現などが上手く使われており、心の動きはよくわかる。
    この世界で感情表現に重きを置かないのは、もっともかもしれない。事実、山のような死体が自分の横を通って行くのにも慣れてしまう日常だったのだから。
    翻訳の力もあるかもしれないが、普通の小説以上に読みやすい。
    前半、収容所内にも関わらず、やや学園ドラマ的なムードが続き冗長さも感じたが、いよいよBⅡb区画に死神が訪れ、ヒロインのディタは家族やたくさんの仲間を失う。
    それまでの、異常な日常の中で彼らが求めた「ささやかな日常」(読んだり、書いたり、学んだり、身だしなみを気にしたり、恋心を抱いたり)を思い返すと胸が詰まった。人はどうにかこうにか飢えをしのぐだけでは生きていけない。ボロボロの本はもちろん、皆で歌う唄、そしてちっぽけな石鹸の匂いや安物の髪留めでさえ、心のよりどころとなり得る。
    だが悪魔の所業は、いとも簡単に彼らの希望の光を踏み躙った。ガス室の描写はもちろんないが、数頁前に登場していた人物の台詞が蘇り、哀しみが聞こえてくる。そしてディタがいた家族収容所も閉鎖され、目の前には死しか見えない過酷な強制労働の日々が続く。
    ユダヤ人というだけでなぜ?

    アイヒマンなど歴史的に知られているナチスの人物も登場する。しかし、彼らもナチズムのプロパガンダに狂わされてしまった“普通のドイツ人”だったのかもしれない。

    幸せをつかむディタだが、プラハで今度は、ソ連共産党に夫とともに苦しめられる。
    時代は繰り返すのか?いや、たとえ繰り返したとしても、ディタのような賢く強い人間を根絶やしにすることなど出来ない。そして必ずや正義は息を吹き返す。

  • [文学は、真夜中、荒野の真っ只中で擦るマッチと同じだ。マッチ一本ではとうてい明るくならないが、一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。]
    まさに本書の冒頭に掲げられたこの言葉を噛みしめる内容だった。
    フィクションの皮を被ったドキュメンタリーと言ってもいいのだろう本書。何故人はそんなにも残酷になれるのかとうち震える反面、そんな環境の中でも本を教育を守った主人公達の尊厳に畏敬の念をおぼえる。
    きっと文学でも漫画でも映画でもなんでもいい、人は何かを見て心を震わすこと無しには生きていけないんだろうな。

  • 「全然教育的じゃないし、罰当たりかも。下品だ、不謹慎だとその本を認めない先生たちもいる。しかし、そんなふうに思うのは、花は花瓶の中でしか育たないと思っている、文学の「ぶ」の字もわかっていない人たちだ。図書館は今や薬箱なのだ。もう二度と笑えないと思ったときにディタに笑いを取り戻させてくれたシロップを、ちょっぴり子どもたちの口に入れてやろう。」

    普遍的な本の力、この本が伝えたいこと。
    全てが、この文章に集約されていると思う。

  • ディタの強さに焦がれる

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