梯の立つ都市 冥府と永遠の花

著者 :
  • 集英社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087745351

作品紹介・あらすじ

7年前に内臓の悪性腫瘍を摘出した作家の「私」は、駅のホームを照らしだす異様に透明な光を手術前夜に見て確信する。生きていてよかったと-死と隣り合う生の根源的な輝きを鋭利に描く短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 困った。日野啓三のどの作品を読んでも同じ感想になってしまう。晩年に書かれたこの作品集はより死の影が濃い。闇よりも暗く、黒よりも黒く。そこに一条の光が刺す恍惚に思念が深まる。夜の人けないオフィス街に林立するビルディングの狭間に(どこか古代都市のようでもあり岩窟のようでもある)ふと聳え立つ東京タワーの光り輝き、深夜の踏切で立ち止まり見つめる線路の鉄の表面を照らす蛍光の青白い光の筋、それはいずれ闇に消えようとも束の間の光の中で生命の粒子がざわざわ蠢き出す。この研ぎ澄む硬質の空気に身を晒す為に私は日野啓三を読み続ける。

  •  内臓の悪性腫瘍を摘出した作家の「私」。死と隣り合う生の根源的な輝きを鋭利に描く短篇集。
     
    「黒よりも黒く」
    ゴーストと男の対話から成るピュリッツァー賞受賞写真を撮影したカメラマンの苦悩をモチーフにした
    「先住者たちへの敬意」
    先住者である虫と家を巡る物語
    「闇の白鳥」
    学生時代の旧友とクラスメートの女生徒について語らう
    「梯(きざはし)の立つ都市(まち)」
    黒いレインコートの人物と自身の癌について綴った
    「踏切」
    自宅前の踏切を巡っての物語
    「永遠と冥府の花」
    最近よくでる鼻血に老いていく身体を痛感する
    「ここは地の果て、ここで踊れ」
    シベリアで一人観測員をする男の話
    「大塩湖(グレートソルトレーク)から来た女性」
    自然を描く女性小説家と対談する

     エッセイと小説が入り交じった感じでどこから本当でどこまでフィクションなのかわからない。しかも短編集なのに、踏切、癌、小説家、駅といった共通した単語がでてくるので連作?といった感じで区切りがわからないので結構読みづらい。でもその中でも「黒よりも黒く」と「ここは地の果て、ここで踊れ」は結構よかった。これはどっちも他の人の人生を参考にしているからかもしれない。この作者の癌経験は正直語られすぎて途中で飽きた。

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著者プロフィール

1929年東京生まれ。幼少期を朝鮮で過ごす。新聞記者ののち作家活動に入る。主な著書に、『抱擁』『夢を走る』『夢の島』『砂丘が動くように』『Living Zero』『台風の眼』など。2002年逝去。

「2015年 『日野啓三/開高健』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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