- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087747232
作品紹介・あらすじ
これが上方のお笑いや、謎解きや!上方落語の世界を舞台に描く、青春落語ミステリ。
感想・レビュー・書評
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※本書は『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』として集英社文庫に入っています。
上方落語の世界を舞台にしたライトな読み口のミステリ。
上方落語の大看板である笑酔亭梅寿のもとに無理矢理弟子入りさせられた不良少年・竜二。金髪トサカ頭の竜二が、大酒飲みで無茶する師匠の元でどつかれ蹴られ、兄弟子にはいびられ、と我慢に辛抱を重ねる内弟子生活を開始する。当初は逃げ出すことばかり考えていた竜二も、師匠・梅寿の芸と古典落語の魅力に取りつかれるようになり…
本作は、各章が古典落語の題になっており、それに因んだ話が展開する。その上、毎回奇妙な事件が発生し、それを竜二が解決するというミステリも織り込まれている。毎回メインのお話に加えて古典落語とミステリを上手く絡め、三つを見事にまとめてしまう手腕に脱帽した。
落語の名人にして、酒飲みで豪放磊落な性格である笑酔亭梅寿は、六代目笑福亭松鶴を思わせるキャラである。梅寿と竜二の関係性が、笑福亭鶴瓶が語る六代目の話とかぶって見えるのだが、読み進めていくとだんだん「六代目-鶴瓶」の"イメージの補助線"が消えてきて、「梅寿-竜二」の生き生きとした師弟関係が立ちがあってきた。私と同じく上方落語のお好きな方は、既存の上方落語に関する知識・イメージを下敷きにして読んでいくと思うが、気づいたら竜二目線で内弟子生活を体験している自分に気づかされるだろう。作者のさじ加減の絶妙さに、改めて脱帽させられた。
もちろん、上方落語の知識が全くない人でも十分に楽しめるようになっている。
ただ、上方落語の世界を描いているため、どうしても台詞が大阪弁主体になってしまう(しかも、金髪トサカ頭でロックにかぶれている竜二や同年代のチカコまでが、今日日の若もんがまぁ使えんやろう大阪弁の言い回しを流暢に使っていたりもする。が、これはご愛敬)。私は大阪弁ネイティブで落語も好きで聴くから違和感なく読めたが、大阪弁非ネイティブな方は意味を取りにくいところがあるかもしれない。
そこで、本作を大阪弁の言い回しで堪能したいという方は、YouTubeで上方落語を一本視聴してみることをオススメする(個人的には桂枝雀がオススメ)。
ちなみに、本作の章題となっている古典落語は以下の通り。
・たちきり線香
・らくだ
・時うどん
・平林(たいらばやし)
・住吉駕籠
・子は鎹
・千両みかん詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
良い。
楽しく読めた。
謎も推理もちょうど良い塩梅だった。
ただ、竜二の落語の良さの表現が薄く、どんな落語をしているのか、そしてどこが評価されているのか分からなかったのは少し残念だった。 -
2017.10.11 読了
図書館の「読んでみれば?」の
コーナーにあった。
落語の噺 ひとつが短編になっていて、
読みやすい。
親もいなくて、高校も退学寸前の竜二が
笑酔亭梅寿(しょうすいていばいじゅ)師匠のところへ
弟子に入る。
ちゃんと 話も進むけど、
落語の噺とも掛けてあるし、
謎解きの部分もあって
なかなか 面白かった!
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それぞれが際立ったキャラで、特に梅寿は相当強烈。暴力的な所が多く少しその描写に疲れました。落語の知識や楽しみ方が勉強できるし、そこに絡められた謎や事件はハードで根が深い。軽く、というよりはしっかり読み込む感じがしました。暴力的と言いつつ弟子思いで懐の深い師匠の一面もあり、落語の実力は折り紙付き。ヤンキーの竜二も何とか更正してくれるといいなぁ。謎解きに至る過程は突然すぎて違和感と性急感を感じますが、続編もたくさん出ているので、少しずつ読んでいきたいです♪
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いやー見事っす。素直におもしろく、素直にいい話。まじコレが『蹴りたい田中』と同じ作者かと。
笑福亭松鶴を思わせる理不尽大王な師匠に、ひょんなことで入門しちゃった鶏冠アタマの元ヤンあんちゃんが主人公。上方落語のディープな世界で一歩一歩成長していく彼をとりまく個性的なキャラクターもじつにいい感じ。短編連作でいっこいっこミステリ風味を効かせ、オチをつけつつ、主人公を成長させていく。「人を食ったような」話をさせたらそれこそ天下一品の著者ですが、この作品では日頃の無茶苦茶さがうまーく背景にとけ込んで、ええ噺に仕上がってるっす。この人、こんなのも書けたんだーと、あらためて畏れ入りました。
そしてなにより、著者の上方落語に対するふかーい愛がうかがえるところが、またニクイ。お気軽な1冊ではありますが、落語小説の傑作と言えると思います。 -
初田中さん。面白くて大満足。カバーイラストとタイトルにぴったりのお話。いいね、本を選ぶときタイトルや装幀を見て、期待した内容と違うとがっかりする時もあるけれど、本書は期待通りというか期待以上。見た目で選んで間違いないっていうのは、嬉しいぞ。そして面白いんだから!
あらすじ:
高校中退したばかりの金髪登坂ヘアーの竜二が元担任に連れられてやってきたのは、落語家の家だった。しかも不良顔負けのド迫力の大声と、暴力三昧の老人を前にして、落語なんて知らない竜二は逃げ出そうとするが、さんざん追い掛け回された刑事が何と彼の息子! 逃げられずかといって行くところもない竜二は、渋々弟子入りするのだが――。何だ落語って面白いじゃん。
落語を通して直面する事件を、「師匠、ちょっと」と耳打ちしながら解決する。
落語のお題がそれぞれの短編のタイトルになっていて、実在する落語家の簡単な紹介付き。解説自体は数行で、その後のひねりもあって面白い。
本文も言わずもがな! 竜二を通して落語の楽しさが伝わるんだよね。こう落語のオチのつけ方の面白さが、伝わるんだよね。大阪が舞台で、セリフは大阪弁だけれど、リズムがイイからスイスイ読めてしまう。馬鹿らしさ・くだらなさの按配もちょうどよくて、ひたすら楽しい。
それなのに、基本的には一応本格ミステリ路線。しっかり落語のお題にのっとっていて、上手い!
竜二の成長も、読んでいて楽しい要素だ。不良少年の彼が、落語の世界に目覚め、燃えていく様は読んでいてなんだか親目線になってくるもの(笑)。彼の友達や仲間もいいじゃない。そして何より師匠。ただの酔っぱらいの汚いじーちゃんかと思いきや…! 彼に弟子入りして竜二よかったねよかったね!
何やらシリーズものということで、続きも読もう。 -
夜中、一気に読んでしまった。
落語聴きに行きたいね。 -
先日読んだ「落語ミステリー」がなかなかにおもしろかったので、今度は「上方落語」を舞台にしたお話。
無理やり落語家に弟子入りさせられた、不良少年の竜二。師匠にどつかれ、兄弟子には嫌がらせを受ける毎日。逃げる機会をうかがっていた竜二だったが、そんな中、事件が…。
一編一編は短めで軽く読める形態。落語自体の中身は軽く触れられる程度で話の内容まではあんまりでてこない。落語好きにはちょっともの足りないくらいかもしれない。
ただまあ関西独特のノリみたいなものが笑いを誘い、楽しく読めることは読めるんじゃないかと思う。それぞれの謎自体はさほどでもないにせよ。 -
落語好きにはたまらないかもしれません。くせになりました。
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kitanoの好きな落語とミステリィの合体!
唐突に推理の才能を見せる主人公に脱帽
あの~
見た目と知性がつりあってないんですが(笑)