- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087816280
作品紹介・あらすじ
「働け、産め、輝け!」安倍政権の下、女性が輝ける社会をと叫ばれながらも、日本の男女平等度ランキングは世界101位(2015年)。その根に潜む、女性自身の男女差別意識をあぶりだすエッセイ20章。
感想・レビュー・書評
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「男尊女子」とは言い得て妙なタイトル、さすが酒井さん!相変わらず鋭いところを突いてくる。面白いのに突きどころがなかなか痛くて、読み進めるのに時間がかかった。わかっちゃいるけど気付かない振り、見えない振りをしてきたんだなと嫌でも気付かされるから。
昭和に比べれば女性差別がだいぶ減り、生き易い社会…に思ったほどなっていないのはどういうわけか。男女平等を謳ってみても、どうしたって歪みは出てきてしまう。己の「男尊女子」成分は低い方とは思うけど、決してゼロではないのだな…ということにも気付かされ、愕然としましたわ。
いつもの酒井節に「ぷぷぷ」と笑う一方で、ちょっと怖くなってしまうところもアリ。これからの世の中はどう変わっていくんだろう…男女の深い溝を感じさせる、あちこちバランスを欠いた出来事が話題になるたび暗澹たる気分になるが、互いの違いを認めつつ、うまく価値観をすり合わせながら歩んで行けたらな…と願ってやまない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近読んだフェミニズム関連書籍ではダントツでおもしろかったです。各トピックに分かれていてわかりやすい。「男尊女子」という造語で女性たちの中にも根付く男女差別意識をじわじわとユーモアを交えながら語る様は正に酒井さんの真骨頂。九州女子の私には九州男女の項目が興味深かったです。フェミニズムには興味あるけれども、ゴリゴリな理論武装書籍はちょっと…という方にもオススメできます。若い人にも読まれてほしいな。
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久々に酒井順子さんの作品を読みましたが、相変わらずタイトルが秀逸で、辛辣な中にも愛のあるエッセイだなと思いました。
私は、曲がりなりにも男女平等教育を受けた世代ですし、なにより女子校出身ゆえ若い頃は男女差を感じたことなどなかったように思いますが、そんな私でさえ、アラフォーになり、自分の中の『男尊女子』度が年々上がっているのを感じます。
社会の中で、男尊女子プレイなるものをした方が自分にとってお得なことがあるという経験則が積まれてきたことや、三つ子の魂なのか、家庭環境・教育の影響が今になって出てきているのかもしれません。
平成も終わりに近づいていますが、昭和の価値観から脱却できていない日本。世に男尊女子がいなくならない限り、男女平等やワークライフバランスはなかなか進まないように思いました。 -
あるある〜わかる〜とあちこちで頷いたり笑ったり。
今の若い世代は男性側の意識も変わってきた。女性はこうするべきなどと考える男性も減っただろう。それはとてもいいこと。対して女性は今でも「男性はこうするべき」といろいろ考える人は多いと思う。男は稼いでなんぼ、デートの食事代は当然男性が出すべき、運転しない男は論外...みたいな。男はこうあるべき、女はこうあるべき的な発言は自分を小さい人間に見せるだけかもしれませんね。 -
大学時代、友人が受講していたゼミの教授は、夫のことを話すとき必ず「配偶者」と呼んでいたそうだ。
友人は、「ナンカヘン」といっていたし、私も変わっているなと思っていたが、もしかしたらその感覚の方が、「ナンカヘン」なのかもしれない。
様々な男尊女子成分を語った本書の中から特に面白いものは以下の3点。
6 主人
私も夫も対外的に相手を呼ぶときは、夫、妻ということが多い。
しかし、「主人」「嫁」という人も少なくないだろう。
私はそれが本当に嫌だが(ヨメ、と言われるのならカミさんの方がずっといい)他人の配偶者を呼ぶときは、ご主人、旦那様、奥様、といってしまう。
疑問を感じるけれど、他に呼び方を知らないし、ここで自己主張してしまってはかえって面倒なことになりかねないからだ。
この問題、思想が透けるという著者の指摘は侮れない。
7 夫婦別姓
これだけ趣味もファッションも多様化しているのに、こと家族の問題に関しては途端に凝り固まってしまう人が多いのはなぜだろう。
「結婚して姓が変わることが、女の幸せ」と思う人はどうぞご勝手に。
しかし、なぜそう思わない人の家庭のことまで心配されなければならないのだ?
同姓にしたって、仮面夫婦もあれば、離婚だって21万7千組(28年度厚労省)もあるというのに。
13 気が強い
気の強さをそのまま出すとよろしくない、とはわかっている。
下町気質、火事と喧嘩は江戸の華!な私もそれは痛い目を見たので知っている。
気が強い、は女性に対して使われるけれど、はて、男性は??
女性の場合、気が強い、けど小動物が好き(爬虫類はダメ?)、とか、料理がうまい、とか、泣き虫、とか、可愛いところをいれなければいけない。
不良が雨の中捨てられた子猫に話しかけていた、的なポイントが必要なようだ。
あー!めんどくせーなー!!
本書の面白さは、自分に置き換えられるからこそ。
フェミニスト気取りの私だって男尊女子成分の混ざり物なしではいられない。
でも…上野先生や田嶋先生ならどうだろう。
悪意ではなく、ぜひともお尋ねしてみたいものだ。 -
読みながら思わず声を上げて笑ってしまう箇所や神妙になる箇所がありました。
男女平等やフェミニズムに対して感じていたモヤモヤを言語化して頂いた感じです。
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日本の女の人のうち、小説ではないものを書く人の文章を一通り読み直そうとしている。その人の文体はどうなのか、語り口はどうなのか、何から引用しているのだろうか、何にアンテナを貼って、何を語っているのだろうか、そういうことを読みながら、自分がどこにいるのかを知り、自分の位置を調整しようとしている。この本は非常にウェブ記事系統で、ぽやーんとした日常に少しの気づきを与えてくれるような本。文体はですます調で雑誌のような文章。丁寧で口当たりの良い読み味。でも書いてある内容は私個人の興味からすると既に嫌というほど把握済みの内容で、そこから真の高みへは到達しない印象。最近考えているのは、ベタな世界のことを語りの入り口にしながら、真の高みのような次元へ到達する方法について。これができている本は、読んだ直後にはすぐに影響がなくとも、じんわりとじんわりと私の思考形成の肥やしとなっていくイメージ。
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我々が意識的や無意識的に感じたり用いたりしている男女のジェンダーの差についてのエッセイ
女性はいつも男尊女卑を嫌悪しているわけではなく、あえて一歩下がることを心地よく感じている場合もある
そのように戦略的にまたは無意識的に男性を立てることで自らの地位を維持する女子を著者は男尊女子と呼んでいる
男女の関係が地理的な違いや(例えば九州男子は男尊女卑の意識が強い等)、時代による違いでどう変わるかなど
自分では考えたことのなかった男女の意識の違いが数多く指摘されていてとても興味深かった -
男性の男尊女卑意識より、女性自身の男尊女卑意識をえぐったエッセイ集。
見たくないけれど、私の中にもある。
残念ながらたくさんある。
自分に落胆するしんどい作業だが、それを暴いていくのも大事なことだ。
それを助けてくれる作品だった。
同意出来かねるところもあったが、それは人の数だけフェミニズムがあるのだから当然のこと。
よくここまで我が身を晒して書いてくれたな、と思う。
著者と同じで、未来の人々がこんな時代もあったの?!と思ってくれることを願う。
そしてそれがなるたけ近い未来であることを。