着物の国のはてな

著者 :
  • 集英社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087861259

作品紹介・あらすじ

約束事だらけの「着物の国」。堅苦しいルール、いつ誰が決めたの?
特別なお出かけじゃなく、居酒屋や犬の散歩に着たっていいじゃない!
着物初心者のノンフィクション作家が、着物をとりまくモヤモヤを解き明かす。

◇もくじより抜粋
〈第1章 やっぱりキモノは遠かった!〉
★着物を着るとなぜ老けるのか?―鏡のなかに"親戚のおばちゃん"が/浴衣は似合うのに、なぜ着物はダメなのか
★似合う着物の見つけ方―着物の国は、粋VSはんなり/"極妻"に学ぶ、ハッとする着姿
★チャラい着物が大変身―アフリカ着物に呼ばれる/柄オン柄オン柄に脳がパニック
★手っ取り早く着慣れたい―知りたいのはモタモタしないコツ/愛犬と居酒屋へGO!
〈第2章 着物警察を撃退する方法〉
★着付けルールに王道はあるのか?―マウンティングが否定されない謎/正解はカッコイイ、カワイイでいい
★着物警察なんて、怖くない!―竹久夢二は最新モードの発信源/とうとう"女帝"登場!?
★あえて探した不動のルール今なら炎上?―飛鳥時代の美女たち/日本最古の着付けルール
〈第3章 なにかと不便で面倒なのだ〉
★半衿の真実―やる気を阻む針仕事/時短グッズの開発者を直撃
★補整なんてやりたくない―着物だって"寄せて""上げる"/裾よけは最強の骨盤矯正グッズ?
★なぜこんなに動きづらいのか―理想の着物は室町時代にあった!/町娘のカワイイ仕草に隠された秘密
★暑さ寒さも我慢の限界―汗だくで着物デビュー/冬は小物でほぼ解決
〈第4章 キモノ業界は謎ばかり〉
★無料着付け教室のナゾー人気女優のギャラはどこからくるのか
★着物の"格"は誰が決めたのか―フォーマルと距離を置け!/訪問着は三越百貨店の"発明品"だった
★着物の値段がわかりにくい―着物メーカーの中の人の話/未来型の着物購入スタイル
★リサイクル着物はお買い得なのかー広げた瞬間、塵になった着物/京都にお宝は、もはや幻想
〈第5章 このケッタイな衣服とのつきあい方〉
★恥ずかしくって着られない―ママ、時代劇の人がいる!
★なぜ額縁を背負うのか―お太鼓のデザインが理解不能
★着物マナーが謎すぎる―巨大よだれかけの正義/歌舞伎座のオンナ
★脱・仲居さんへの道―着物コーデ会をやってみた/「お姐さんビール!」に怯える
★センスアップはどこでする―日本史ガールズコレクションの舞台裏/歴史のなかにセンスあり
★自分で着るのがエライのかー覚えなくていい、忘れてもいい

◇著者・片野ゆか
1966年東京都生まれ。2005年『愛犬王 平岩米吉伝』で第12回小学館ノンフィクション大賞受賞。著書に『北里大学獣医学部 犬部!』『ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い』『旅はワン連れ』『動物翻訳家』『平成犬バカ編集部』『竜之介先生、走る!』等多数。

感想・レビュー・書評

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  • 「自分と着物」という視点で振り返ると、いつも保守派の人々が周りを固めていた。
    保守派というのは自分が命名したのだが、着物の選び方にいちいち厳しく、シワひとつ許さない着付けを強いる人のことである。
    特に厳しかったのが通っていた美容院の先生で、着物カタログの着付けに少しでも緩みがあるとこれでもかと糾弾していた。また街中で緩い着付けや斬新な着物ファッションを見かけると、虫唾が走るのだという。(本書で問題視されている着物警察のように、面と向かってダメ出しする人でなかったのがまだ救いと言うべきか)
    そういった話を聞かされ続けた結果、着付けへの興味は自然と消え失せていった。

    だが、着物自体は好きだ。「消え失せた」と前述したけど、出来不出来をツッコまれないのなら着付けだって頑張りたい。目の前の柄が自分と合わさればどうなるのか、自分の腕で確かめたい。
    保守派スタイルが身近だったものの、大胆な柄やファッションにも憧れている。洋風アレンジも加えていけば、もっと着物のことを好きになれそうだ。

    着物へのハードルを実感しているのは自分だけではないはず。ハードルは保守派が生み出したものに違いないが、保守派はいつどのようにして生み出されたのか?ハードルに保守派、その他着物にまつわるモヤモヤを本書は痛快に解明してくれる。
    対象はレディース着物、それもデイリー仕様のものになるが、それでも女性向けは選び方や着方が断然ややこしい…。それに比べ男性向けは、着方に関しては女性ほど難儀しなさそうなイメージがある。

    「ファッションは若者がつくるというのは、人類史上不動の事実だし、コンサバばかりがもてはやされる着物の国は、個人的にとても退屈なので、着物人口の若年化は大歓迎だ」

    ここに出てくる人々は穏健派と呼んで良いくらい、初心者に寛容だ。
    著者の初キモノ奮闘記だから、これから奮闘するであろう読者に向けてシンプルに解説してくれている。着付け教室のような目から鱗モノまで、メモもいっぱい取らせてもらった。(図解のイラストは個人的に分かり辛く、動画で見たいと思った。改訂の際はQRコードを添付していただけたら…)

    「”格”って言い方がいやらしい!」等、通常の着物本には書いていないようなことを物申しているのも、行き詰まっていた初心者としては気持ちが良い。
    そして何より参考書やYouTubeだけでなく、プロの着付け師や専門家、和装小物メーカーにも直接取材されているから信憑性が高い。そうしたプロの力も借りることで、保守派の意見が全てではないことが丸裸になっていく。

    着物への敷居が高くなった現代において、人々はより「ルール」や「正解」を着物に求めるようになった。それが着物をいっそう高嶺へと押し上げているとも気づかずに。
    いい加減お高くとまるのはやめにして、昔のように気軽にお付き合いしていきましょうや。最悪襟合わせを間違えたって「ドンマイ!今日は飛鳥美人だ」くらいの気概で本当はいきたいんですよ。(飛鳥時代の襟合わせは左右どちらでも良かったそうな)

  • 「着物の国」と聞けば、お~コワ、近寄るまい近寄るまいと後ずさるのは私だけではないと思う。やたらいろいろルールがあって、間違えると怒られそうだし、着物から帯から小物から、厳しく値踏みされて「フフン!」と鼻で笑われそうだし。ウン十年前結婚するとき親が無理してあれこれ持たせてくれたけど(お父さんお母さんありがとうね)、さて何回着たやら。普段に着ようなどと思ったこともなかった。

    著者は50代を迎えて、着物をワードローブに加えたら楽しいのではないかと思い立ち、果敢にその世界に飛び込んでいく。納得のいかないことは自分で調べたり、詳しい人に尋ねたりして、よくわからない謎ルールに縛られた着物の国を覆うモヤモヤをどんどん晴らしていく。さすがの行動力で、実に痛快。たかだかここ何十年かの間に「そういうこと」になったものを、「伝統」という美名でパッケージングして高く売りつけるギョーカイってどう考えてもおかしいよ。

    老けた感じに見えない似合う着物の選び方に始まり、半襟の付け方(あれ、めんどくさいよね!)、補整は必要か、着付け教室の仕組み、着物の「格」って何?「着物警察」の撃退法などなど、アンティーク着物とかリサイクル着物を自分でも着てみようかと思う人にとっては、実用的でとても役立つ内容にもなっていると思う。

    裏表紙の著者近影は、愛犬マドと共にビールジョッキを掲げる着物姿。黒い縦縞に巨大なアネモネ柄のこの着物、夫の高野秀行さんは「スゲー柄!そんな着物どこに売ってるんだ?カッコイイじゃん」とおっしゃったそうだが、いやほんと、実にカッコイイ。片野さん、ご自分に似合うものをよくわかってらっしゃる。

  • もっと気軽に着よう、といいつつ、それほど自由でも簡単でもない着物の世界の謎を
    一つ一つ丁寧に取材し、体験し、はっきりさせていく本。
    これを読んだことで、着物はもっと自由で良く、
    歴史を振り返ればルールなんてないようなもので、
    誰かの都合と誰かの経験が伝統という顔をして、
    ぼんやりごまかしているというのが良く分かる。
    着物の格に関しては、着物を売る側の都合と、
    すでに知識が受け継がれていないゆえ正解があった方が楽、
    という両面によってつくられているというのが分かって良かった。
    カジュアル着物はその範疇にはないし、
    場面への違和感を感じるとすれば布が発する声というのも嬉しい事だ・
    室町時代のゆったり着物が受け継がれていたら、
    もっと着やすく日常のものになっていたのかも。
    半襟すら縫わないでも大丈夫。時間が無ければ自分で着ないでも大丈夫。
    どんどんハードルなんて下げればいいと思う。
    着物初心者向けに、とても具体的で為になる本。
    表紙を開けて中のブルーの紙、中表紙の模様の入った紙が素敵だった。

  • 着物にまつわる様々な謎、なんで意味不明なルールが多いの?着物屋の商売の仕方が独特すぎるのはなぜ?0円の着付け教室って何?など、不思議すぎてとっつきにくい着物界について明快に語ってくださっているのがとても有難い。着物そのものには興味があるのに入りづらい、と感じている人にぜひ読んで欲しい。

  • こんなこと、子どもじゃあるまいし疑問に思うのは野暮かな、と思ってしまうことを、著者は純粋に疑問を持ち、その道のプロに聞いてくれています。

    きものの世界をややこしくしているのは、自分自身かもしれない。

    いわゆる着物についての本より為になるかもしれない。この本を読んで、着物着たいなと思いました。

  • 着物にハマって考えた、的な。
    着物界の常識やしくみなど、初心者が「?」と思いながらもなんとなくスルーしていることを追いかけている。

    本当は、もっと自由に着ていいものなんだ。
    でも、どうしても「しきたり」や「形」を気にしてしまうんだなー。

  • 着物仲間から勧められて。

    着物初心者の疑問や謎を一つ一つ専門家に訪ねてまわり、由来や本来の意味などを解いていき、また現在のニーズとは合致しない(場合によってはコンプラが疑問を呈しそうな)着物業界の習慣や仕組みを説明していく。
    堅苦しい着物世界の敷居を下げるという点で良書であり、ルールを知らない素人には「それでいいんだよ」と告げてくれる強い味方。

    それでも★3なのは何故かな。
    なんとなく後半、観劇のルールのあたりに言及する段になり、ちょっとお腹いっぱいになった感があったからかな。
    言いたいことはたくさんあるんだろうな、とは思うけど、自説を専門家に支持してもらって正当性を主張する姿が、徐々に素直に同意できなくなっていったというか。
    こういうのも、適量があるのかもしれない。

    私は中庸を好むタイプなので、真っ向から、みたいなものが苦手なのかもしれない。
    読者は勝手なものだ。

    ちなみに着物仲間は絶賛していました。

  • 片野さんは私の中では 犬の人だったんだけどなぁ。

  • 深くて謎めいた着物ワールド。その真実が今、白日の下に…‼
    著者自身が全くの着物素人から実際に体験し、調べて得た着物に対しての様々な疑問や不自由さを解消する方法など、とても興味深く面白く読めました。洋服の普及に伴い高級路線に舵を切った為に複雑な格付けやルールを設けたことや、無料着付け教室のからくり、着物の着付けの大変さを軽減するための便利グッズを探してみたり…この一冊、着物に興味のある人全てに一読の価値アリです。
    でも一番印象に残ったのは、右手右足を同時に出す「なんば歩き」について描かれた箇所(笑)

  • ノンフィクション作家さんならではの軽快な語り口で着物の「なぜ?!」が語られます。他の本にはない感じが私には読みやすくて面白かった!着物初心者さんにおすすめです。

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