- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087901153
作品紹介・あらすじ
つい最近まで、動物には複雑な思考はないとされ、研究もほとんどされてこなかった。ところが近年、動物の認知やコミュニケーションに関する研究が進むと、驚くべきことが分かってきた。例えば、小鳥のシジュウカラは仲間にウソをついてエサを得るそうだ。ほかにも、サバンナモンキーは、見つけた天敵によって異なる鳴き声を発して警告を促すという。動物たちは何を考え、どんなおしゃべりをしているのか? シジュウカラの言葉を解明した気鋭の研究者・鈴木俊貴と、ゴリラになりたくて群れの中で過ごした霊長類学者にして京大前総長の山極寿一が、最新の知見をこれでもかと語り合う。話はヒトの言葉の起源、ヒトという生物の特徴、そして現代社会批評へと及ぶ。そして、その果てに見えた、ヒトの言語にしかない特徴は?■内容紹介■Part1 おしゃべりな動物たち動物たちも会話する/ミツバチの「言葉」/動物の言葉の研究は難しい/言葉は環境への適応によって生まれた/シジュウカラの言葉の起源とは?/文法も適応によって生まれたetc.Part2 動物たちの心音楽、ダンス、言葉/シジュウカラの言葉にも文法があった/ルー大柴がヒントになった/とどめの一押し「マージ」/言葉の進化と文化/共感するイヌ/動物の意識/シジュウカラになりたい/人と話すミツオシエetc.Part3 言葉から見える、ヒトという動物アイコン、インデックス、シンボル/言葉を話すための条件/動物も数が分かる?/動物たちの文化/多産化と言葉の進化/人間の言葉も育児からはじまった?/音楽と踊りの同時進化/俳句と音楽的な言葉/意味の発生/霊長類のケンカの流儀/文脈を読むということetc.Part4 暴走する言葉、置いてきぼりの身体鳥とヒトとの共通点/鳥とたもとを分かったヒト/文字からこぼれ落ちるもの/ヒトの脳は縮んでいる/動物はストーリーを持たない/Twitterが炎上する理由/言葉では表現できないこと/バーチャルがリアルを侵す/新たな社交/人間とはどういう動物なのか?etc.■著者略歴■山極寿一(やまぎわじゅいち)1952年生まれ。霊長類学者。総合地球環境学研究所所長。京大前総長。ゴリラ研究の世界的権威。著書に『家族進化論』(東京大学出版会)、『暴力はどこからきたか(NHKブックス)、『ゴリラからの警告』(毎日新聞出版)、『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』(朝日選書)など。鈴木俊貴(すずきとしたか)1983年生まれ。動物言語学者。東京大学先端科学技術研究センター准教授。シジュウカラ科に属する鳥類の行動研究を専門とし、特に鳴き声の意味や文法構造の解明を目指している。2022年8月、国際学会で「動物言語学」の創設を提唱した。本書が初の著書となる。
感想・レビュー・書評
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ゴリラの集団と一緒に暮らし、ゴリラの社会や言葉と仕草でのコミュニケーションの取り方に詳しい山際寿一さんと、
小鳥・特にシジュウカラが群衆する山の中に寝泊まりして、シジュウカラの多彩な鳴き声の意味を解明してきた鈴木俊貴さん。
知能が高い霊長類と鳥類に詳しいお二人が、"言葉"という聴覚によるコミュニケーションについて対談したもの。
鳴いたり、叫んだり、囁いたり、歌ったり、声を発するには意味がある。
どのような時に声を発するかは、その生物が生きている環境によって大きく異なる。
どんな声を発することができるかという生物自身の体の構造も、どんな言葉の種類が使えるかに関係している。
犬とか猫はあまりおしゃべりをしないが、スズメなど小鳥はしょっちゅう鳴いているように思う。
集団で生活してるか否かの違いが大きいのだろう。
上手く生きていくのに仲間に何かを伝えるのは意味がある。
動物たちが鳴くのは、心があるからだと思う。
本書には「動物たちの心」という章があり、共感したり、嘘をついたりする話は面白かった。
本書の後半は、ヒトと言葉の話題になり、音楽や踊りや俳句にまで話題が広がる。
美徳と道徳、形式知と暗黙知、分ける言葉とつなぐ言葉、などの考察もためになった。
最近は文章を生成するAIまで出てきて、もはや理解が追い付かないほど"言葉"で溢れかえっている。
映画なんかも2倍速で観る人が増えていると聞くし、SNSなどでも文章を素早く読むことが要求されているのだろう。
その積み重ねで、全体が見通せず細部しか見れなくなって、文脈を読む力や行間を読む力が低下している。
人類がせっかく発明した言葉と文字なのに、全体の理解力が下がって正しく伝わらなくなってきている?
「じっくりと時間をかけて小説を読む」ことの重要性が増している時代になっているのかも知れない。
ヒトはこれから言葉とどのようにつき合っていくべきか、というテーマになってました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者、山極寿一さん、鈴木俊貴さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。
---引用開始
山極 壽一(やまぎわ じゅいち、1952年〈昭和27年〉2月21日 - )は、日本の人類学者(人類学・生態環境生物学)、霊長類学者。学位は、理学博士(京都大学・1987年)。京都大学名誉教授、総合地球環境学研究所所長。
---引用終了
---引用開始
鈴木 俊貴(すずき としたか、1983年10月- )は、日本の生物学者。専門は動物言語学、動物行動学。東京大学先端科学技術研究センター准教授。世界で初めて動物が言葉を話すことを突き止め、動物言語学を開拓した第一人者。
---引用終了
で、本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
動物たちは何を考え、どんなおしゃべりをしているのか?
シジュウカラになりたくてシジュウカラの言葉を解明した気鋭の研究者・鈴木俊貴と、ゴリラになりたくて群れの中で過ごした霊長類学者にして京大前総長の山極寿一が、最新の知見をこれでもかと語り合う。
---引用終了
私が興味をもっているのは、シジュウカラの様々な鳴き声。
身近な野鳥ですからね。 -
面白かった!研究者同士が自分の研究を語り、相手の研究を聞き、相互理解を深めつつ新しい展望をひらいていく。
論文のような構成ながら、対談本としても説明が丁寧で読みやすい!
シジュウカラの研究は年の半分以上森に篭らないといけないし、ゴリラの研究では人から離れてたった1人ゴリラの集団と暮らさないと行けない。
これは生半可な覚悟ではできないし、それをさらっと述べた上で研究成果のみ聞いてると、華々しく見えてしまう。
言語を学ぶには人、動物、環境、文化など一つのカテゴリだけでなくお互いの干渉度合いなども理解しないといけない。奥が深いなぁ。
最後はAIまで話が進んで、新分野への示唆も含めて楽しく読めた。山極さんや、鈴木さんの今後の研究を応援したい。 -
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【書評】 『動物たちは何をしゃべっているのか?』 山極寿一、鈴木俊貴 - キリスト新聞社ホームページ(2023.01.19)
https:/...【書評】 『動物たちは何をしゃべっているのか?』 山極寿一、鈴木俊貴 - キリスト新聞社ホームページ(2023.01.19)
https://www.kirishin.com/book/64478/
2024/01/23
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「動物たちは何をしゃべっているのか?」読了。
いろいろな驚きと視点を与えてくれる本でした。本当にタメになった!
元京大総長であり霊長類研究、特にゴリラと共に暮らすという身体を張った研究をされている山極寿一さんと、シジュウカラの言語の研究者としてTVなどにも出演している鈴木俊貴さんの対談を書籍化したもの。
タイトルからは、動物はどれぐらい言語を操れるの?、ということが書かれているのかな?と思っていました。シジュウカラには文法がある、とか、ゴリラは人間とコミュニケーションできるとか、そんな感じの。
ところがどっこい、もっともっと深いテーマに発展し、動物の一種である人間についての考察にまで言及されていました。
人間vsそれ以外の生き物、という二項対立に落とし込んで物事を考えることの危険な一面。人間が「言語」を持ったことによる優位点と、その裏にある負の側面…。
そして、ここ数十年で一気に普及したテクノロジーによるコミュニケーションの落とし穴。
ゴリラ研究についてのエピソードや、シジュウカラの言語の話などの、動物たちのコミュニケーションの話もたくさん書かれているうえに、私たち人類がこれから考えていかなくてはならない「言語」との付き合い方まで、幅広い話題の本でした。
刺激になりました。
SNSを使ってのほほんとしている場合じゃないですよね。本当に。
人類、なんだか退化していませんか。本当に。
※この本は、いつも聞いているポッドキャスト「ゆる言語学ラジオ」のメインスピーカー水野大貴さんが編集した本。ポッドキャストを聞いて知った本だけれど、読んでよかった。ほんと。 -
ゆる言語学ラジオで紹介されていた本。
シジュウカラのコミュニケーションが特に面白かった。シジュウカラの「警戒、集まれ」という意味の発音を録音して、再生して実際に鳥が動いたときは感動しただろうなあ。逆順にしても動かないので、そこには明確な文法があるそうです。鳥のコミュニケーションに単語レベルならまだしも、文法があるとか本当にすごい。
無意識に人間は他の動物とは違う特別な存在と傲慢に考えがちですが、他の動物に出来て人間に出来ないことはたくさんあるよってことを教えてくれる本でした。 -
すごい。全ページ面白いし、人に言いたくなるような話が満載の、鳥類研究者と霊長類研究者の対談。
シジュウカラのさえずりには文法があって、相当複雑な状況を遠くの仲間に伝えることができる。ものの色や数などもかなり正しく認識し、伝え合っている。ゴリラは身体言語も含めてコミュニティのための親密な対話を行っている。ゴリラの喧嘩に勝敗はなく、弱い方に加勢が入り仲裁され、群れの和が保たれる。一方サルの喧嘩は強い方に加勢が入ることで明確な勝敗がつき、ときに群れのボスが交代する。とか!
とかくコミュニケーションは人間の得意分野と思いがちだけど、色々な動物がその身体的特徴に合わせた独自のコミュニケーションを行っており、ある部分では人間より遥かに高度な情報を、瞬時に伝える術を持っていたりする。
渡り鳥は地図もなく何万キロを正確に移動できるし、犬は人間の一万倍もの嗅覚で世界を認識しているわけで。彼らの間でどんなコミュニケーションが行われているか、考えるとワクワクする。僕らが伝えられないものも伝えている可能性があるし。少なくとも優劣で語るべきものではないんだな。
後半にはそんな人間の特性についても言及してくれていてありがたい。これがまためちゃくちゃ面白いんだけど。
恐竜が絶滅してから、恐竜の生き残りは鳥類となり木の上を住処とした。そして同じく木の上に住み始め、生活環境を共にした霊長類、サル。後者は人間となり、前者はならなかった。なぜか。
その仮説。鳥類は飛ぶことができるので、敵が近づいたときに大きな鳴き声で警告し、逃げることができる。だがサルは、大声を出してしまうと敵に見つかり、逃げるすべがない。だから小声とジェスチャーでコミュニケーションを取ったのではないか。これが今日の言語の起源かもしれなくて―・・・という。
いや、おもしろ!!
ぜんぜん違う種類の研究者同士の対談かと思っていたら、最後にこの対比がやってくる構成の妙もある。これまで読んできた内容の解像度が、人間を照らすことで最後にぐっと上がる感じがする。
さすが、いまをときめく「ゆる言語学ラジオ」出演編集者の仕事よ。 -
前半は二人の対談者それぞれの研究対象の言語・コミュニケーションについての紹介のようなお話。
文法の有無を探る実験手法のお話とゴリラの思い出の表出などが特におもしろかった。
後半では現代の人間社会の文字ベース・言語ベースのコミュニケーションの問題点というか、原始の人間や動物たちが生きていた世界との隔たりのようなものについてのお話になり、普段私も考えることのあるテーマだったので、より興味を持って読み進められた。 -
子どもに薦められて読んでみました。自分のようなゴリゴリの文系人間でもすんなり読めました。鈴木先生のシジュウカラのフィールドワークや山極先生のゴリラの手話の話などは夢中になって読みました。音楽、ダンスからの言語的な考察も興味深かった。そしてSNSや言葉だけによるコミュニケーションによる人類の退化の可能性は気になりました。
先日ちょっと話題になった化学を「ばけがく」と言うと通じない問題もそれとは無関係ではないのだろうな。
こういう自然科学も社会科学もまたがる学際的な研究はどんどん進めてほしいし研究資金を出してほしいと心から思いました。 -
動物たちがどんなコミュニケーションを取っているのか、というタイトル通りのコンテンツももちろん面白かったです。
でも、個人的には1番面白かったのは「人類がどのように進化を遂げ、現在の言葉によるコミュニケーションに至ったか」という部分。
人間のコミュニケーションの本質は、踊りやジェスチャーなどの視覚的なコミュニケーションや経験を共有することなどにある、という観点はとても面白かったです。
科学に近い分野なのに文系脳でもわかりやすく、言語学系の話も読み応えのある、ページ数のわりに骨太な本だったと思います。
この本を読むとなぜか「会社の人と飲みとか行ってみるか」となって、飲み会の予定をいくつか入れました(笑)
編集者をきっかけとして本を買うことはきっと最初で最後だと思いますが、とてもいい本、いい先生方にまた出会えてよかったなぁと思います。
水野さん本当にありがとうございます。