- Amazon.co.jp ・マンガ (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784088705965
作品紹介・あらすじ
第三次世界大戦がどのような兵器で行われるかは分からない。しかし、第四次世界大戦は、触手で戦う事になるだろう。
感想・レビュー・書評
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『魔人探偵脳噛ネウロ』の作者の新連載。しかも表紙が鬼頭莫宏『ぼくらの』のコエムシを思わせる感じで気になっていました。
購入の引き金になったのはkindle paperwhiteを落手したこと。
「電子インクのkindleでマンガを読んでみるとどういう感じになるんだろう?」
という実験的要素もあってポチッたわけですが、読みたい時にノータイムで買って読めることの心地よさ、そしてマンガで本棚を圧迫しないという安心感という二つの悪魔的な魅力に気づかされました。(特に後者については、平野啓一郎さんがエッセイ集『文明の憂鬱』の中で「ネット書店で本を買うときは物理的な重さの制約がないため、買いすぎてしまう」ということを書かれていました。電子書籍だと保管スペースの制約も取っ払われるので、この傾向はますます加速しそうです。実際、私も現在購読中のマンガで電子書籍で十分なものは切り替えて行こうと思っていますので。ちなみに、現時点で電子書籍で十分だと判断する基準は「人に貸したくなるかどうか」だったりします)
電子インクでの"読み味"は、見開きこそ分断されてしまいますが、問題ないレベルです(ただ、見開きでコマ構成をしている福本伸行さんの作品はちょっとキツイかも。そういうのについてはタブレットで読むことになりそうです)。
kindleの方に話が流れてしまいました。作品の感想を。
『魔人探偵脳噛ネウロ』のときもそうでしたが、まずこの作者は、根底のところで我々人間(人類)と価値観を共有できないキャラを主人公に据えるのが非常に上手いです。本作では、月の7割を破壊して三日月型に変えてしまい、「来年3月までに自分を殺せなければ地球を破壊する」と言っている超危険な謎の生物が主人公。その危険な生物が、なぜか椚ヶ丘中学校3年E組の担任教師になることを希望し、E組の生徒達は地球・人類の存亡を賭けてその生物=殺せんせーを暗殺することに…。
ここだけ説明すると、ものすごくぶっ飛んだ設定で殺伐とした話っぽく聞こえます。
が、殺せんせーのキャラクターは基本的にほのぼのとしていて、自分を攻撃してきた戦闘機の攻撃を避けつつワックス掛けをするなど、自分を殺しに来た敵に対して「お手入れ」で返すユーモラスでとぼけたキャラです。
しかも、E組の生徒達はいつしか殺せんせーとの「殺す・殺される」関係性での学校生活を生き生きと楽しむようになっていて、むしろE組を落ちこぼれとして徹底的に差別する学校の在り方の方がよっぽど救いがない醜いものとして描かれます。
大枠のぶっ飛んだ設定、そして暗殺方法についての緻密なプロット、殺せんせーのボケの妙な細かさ、学園モノとしてのポジティブさと地球人類防衛のための「暗殺」というテーマ、ほんわかムードや勧善懲悪話の裏に潜むゾッとする怖さ…など、いくつものレベルで緩急や矛盾する要素が絶妙に合わさることで、読み手の予想や想定は外されまくりです。時に作者の頭の良さに打ちのめされるように感じられることすらありますが、そんな作者と読者の関係性は、そのまんま暗殺しようと躍起になる生徒達が殺せんせーに良いようにあしらわれている姿と相似形になっていたりします。「本当に良く出来てるよなぁ」とつくづく思わされました。
冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』や荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』といった、トリックや構造がしっかりしている「ジャンプの"頭良い系"作品」の系譜に連なる良作です。オススメ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最初の1コマ目から最後のシーンまで全て完成された作品だと思います。何度も読み返しました。
そのうちに伏線を過去のシーンから無理やり持ってくるのではなく、意図的に仕込んでいる松井先生の凄さに気づけました。 -
読了
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奇想天外の設定からの正統派学園物。
面白い。 -
椚ヶ丘中学校3年E組は暗殺教室。標的は先生。月を吹き飛ばすほどの能力を持ちながら、教師としてやってきた謎のタコ型生命体・殺せんせーと、彼の暗殺を狙いながら勉強に励む生徒たちの物語。
暗殺とか殺すとかいう物騒な言葉が並びながらも、教師として真っ当に生徒たちと向き合うドラマの二面性が面白い。どんなに全力で殺そうとしても殺せない、殺意すら受け止めてくれる先生というのはある意味では理想の存在なのかも?殺しに来た相手の道具や心を逆に手入れして返すところもお茶目でいいよね。
「皆から狙われるのは…力を持つ者の証ですから」
という言葉からは王者の風格すら漂うのもカッコいい。
後半のカルマとのやり取りもいいよね。殺せんせーの命か先生としての命のどちらかを断とうとした策略ですら受け止めてしまう懐の深さ。
「見捨てるという選択肢は先生には無い いつでも信じて飛び降りて下さい」
こんなこと言われたら、もう認めざるを得ないよね。
連載当時ぶりに読み直してみたけど、やはり完成度の高さが素晴らしい。 -
買う予定はなかったんだけど、行く先々の本屋で売り切れ続出だったために、なぜかムキになって探して買ってしまった。
ムフフフフ。
『ネウロ』のようであり、『ネウロ』のようでなく。
描写とか設定はいちいち読者を驚かせてくれるけど、実はけっこう、いいお話。
生徒同士で殺し合うのが、『バトルロワイヤル』。
先生が生徒を殺すのが、『悪の教典』。
生徒たちが先生を殺すのが、『暗殺教室』。
先生同士で殺し合う話ってあったかな? なかったかな?(いや、自分で作るつもりはないですけど。殺し合うのはちょっとどうも)
それらの殺し合いの作品の中で、群を抜いて、この作品は、「ちゃんと学生が読んで面白いもの」のような気がする。もう学生じゃないから知らんけど。
書店に販促で飾ってあった、殺せんせーのぬいぐるみが、かわいくてかわいくて。あれ、ほしいなあ。
ほしいなあ。 -
さらっと読めてめちゃくちゃ面白い!
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漫画大賞の上位に選ばれていたので、見てみた。
設定が今までにないものだった。
(概要)
ある日突然、月が爆発して七割方蒸発した。その犯人と称し、しかも来年三月には地球をも爆破するという超生物がやってきたのは、何故か中学校の教室。なんとここで教師をすると言うのだ。人知を超えた能力を持ち、軍隊でも殺せないその怪物の暗殺を、各国首脳はやむをえずそのクラス…椚ヶ丘中学校三年E組の生徒に委ねる事になる。成功報酬は百億円! 落ちこぼれクラス「エンドのE組」の生徒達は、卒業までにこの暗殺対象の教師「殺せんせー」を殺せるのか…!?
ジャンプコミックスには、表紙の裏側に作者からのメッセージがつく。そこには
「殺す」というのは、とても不思議な言葉です。頻繁に口にされる事がありながら、最も実行に移されない意思表示。
そんな奇妙な単語ひとつを軸に、物語をひとつ作ってみました。
最後まで楽しんでいただけたら、殺されてもいいほど嬉しいです。
私の世代では、この前書きそのものに違和感があるのではないか。私の世代で「殺す」という言葉を「頻繁に口に」するということがあるだろうか。私は無い。「殺したいほど」「憎んでいる」「愛してる」というのは、一生のうち使うか使わないかの言葉だし、あと他に思いつかない。ところが、である。3年ほど前に、中学生卒業したばかりのヤンチャな男子の会話を聞いていると、「殺す」という言葉がホントに頻繁に出てくるのである。「お前今度そんなことをやったら、マジ殺す」ひどい目にあわすぞ、という言葉の「軽い意味」として使われているのである。
私の世代では、既に戦争は遠く、殺すという実感は遠くにあったが、ともかく怖いものとしてこの言葉は位置づけられていた。しかし、ゲーム世代の子供たちにその感覚はなく、「ステージクリア」の手段としての言葉になっているのだろう。
集団的自衛権の解釈改憲が具体化されようとする今日、この言葉の意味の再検討が求められている。この漫画がどのように展開して、結末に至るのか、少し注目したい。(物語は単行本で10巻も出ていて、未だ二学期の途中らしい。三学期中に結末がつくのだろうけど、まだまだだなあ)(14.7.12記録) -
先生が人間じゃない、生徒が全員暗殺者とか、一見突飛な設定のようでいて「学園モノ」としてちゃんと読めるバランス感覚がすごい。ここで言う「学園モノ」とは、社会的には規格外の先生が、落ちこぼれ生徒たちを成長させていく形の物語のことです。
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ネウロの時から好きだったけど、この理不尽さ、シュールさの中にあるミステリアスな魅力が堪らない!開けてはならない箱を開けてしまうようについつい引き込まれていく。誰にも殺せないほどに強すぎる世界の敵たる生物が教師として一年間教鞭を取る。その後の終焉を予告しているのに、先生は生徒に対し非常に真正面から向き合っていく。生徒の最終目的は先生の暗殺を行うこと。なんとも独特で、納得できない設定なのに引き込まれてしまう。次巻も読もう。