ルックバック (ジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社
4.25
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本棚登録 : 3681
感想 : 205
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784088827827

作品紹介・あらすじ

自分の才能に絶対の自信を持つ藤野と、引きこもりの京本。田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れても、背中を支えてくれたのはいつだって――。唯一無二の筆致で放つ青春長編読切。

感想・レビュー・書評

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  • 「このマンガがすごい2022男性部門」第一位。
    たった一巻。セリフ最低必要最小限。

    コレを一位に推す若者たちに
    ついていけなくなっている自分に
    愕然とする。
    きわめて真っ当な「友情・努力・勝利」。
    石ノ森も50年前に試みた絵巻物語。
    でも、若者たちにとっては、初めて見る世界。
    それをイジる権利は、
    私にはおそらく髪の毛一本ぶんもない。

    だいたいのストーリー
    自分の才能に絶対の自信を持つ小学四年生の藤野と、引きこもりの京本。(←2人合わせれば藤本になる)田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。
    藤野には斬新なストーリーセンスがあり、京本には圧倒的な画力があった。それぞれが才能を認めて嫉妬し、そして2人で高め合う季節と、別れて道を進む季節。
    そんな時、現代世界の「あの事件」に似た悲劇が起きる。

  • チェンソーマンより好き。
    先に短編で作品に込めた想いを読んでいてよかった。
    読んでなくてもきっとよかった。
    こんな想いができる漫画が生まれてるのね、漫画も読まなければ…

  • レンタルで読了。
    普段、漫画を読まないからでしょうか。ブグログでの皆さんの評価のようにはなりませんでした。
    それでも、時間(季節)の経過(流れ)が【絵】だけで表現されているのを見るのは面白かったです。

  • 詳細な内容は伏せられた状態ながらも配信予告の段階から話題沸騰だった読み切り作品。
    蓋を開けてみると、漫画創作への情熱と地方都市に暮らす少女達の青春、そして京都アニメーション放火事件への悼みと訣別を描いたと思われる非常にメッセージ性の強い作品であった。また、藤本タツキ先生自身の体験をも織り込んだ自伝的側面も見受けられる。

    タイトルの『ルックバック』には複数の意味が込められており、その意味を読み解いていく程に作品の真価に驚かされる。

    ・「後ろを見ろ」…「過去を見ろ」と同義、主人公の〈藤野〉と〈京本〉の名前を組み合わせると「藤本」になる事から、二人の姿は先生自身の過去のエピソードを投影したものでは。特に藤野の小学生時代、クラスの中では自分が一番絵が上手いと思っていたらもっと上手いやつが現れた時の衝撃を受けた顔(p7)は必見。「中学で絵描いてたらさ…… オタクだと思われてキモがられちゃうよ…?」(p18)というクラスメイトのセリフのリアリティよ。それでも漫画を辞める事は出来なかったのだが。小学生時代の藤野は机に向かって漫画を描いている時に色んな人に声を掛けられても一コマも振り向いておらず、揺れ動きながらも漫画を離れられなかったという表現ではないか。だが、京本からの呼び掛けには振り向くのだが。
    ・「背中を見ろ」…p83にそのまんまセリフがあり。藤野が相方である京本にかけた言葉であり、世の漫画家を志す後進たちにも向けた言葉では。天才肌と評される事が多い藤本タツキも決して一日で成った訳ではなく、ひたすらに積み重ねた練習の結果であるという激励と自負を込めたメッセージかと。つまりは「とにかく描け!バカ!」(p11)という事を伝えたいのではないか。アニメ化が決まる程の人気になり一気に版が重なる様子と時間の経過をスマートに描いたp74〜p75の流れは素敵。
    ・「背中を見て(る)」…本作が奥深いのは途中に京本目線のパラレル軸が差し込まれる事にもよる。京本は対人関係が不得手で小学校より不登校であったが絵を描くのは好きで、一貫して藤野を「漫画の天才」(p39)と評すファンであり続けながら相方として二人で作品を描く間柄であり、けど最終的に「一人の力で生きてみたいの…」(p70)とそれぞれの道を進み出すのだが、その後…。藤野の背中を見続け、背中に藤野のサインが入ったドテラを宝物にしていた京本。そして最後には藤野の背中をそっと押し出す存在に。
    ・「変わらない過去より未来に目を向けよう」…これは自力では気付けず。知人と喋っていて教えてもらった隠しメッセージ。一コマ目と最後のコマに書かれたワードを使うとある熟語が出来上がり、これこそが本作を本作たらしめる核。配信日の2021年7月19日は京アニ放火事件より丸2年を迎えた日であり、出来上がる熟語はマンチェスターで発生したISによるテロ事件へのアンセムとして歌われた曲「Don't Look Back In Anger」を指すという事。追悼の意を表すと共に、感情的にならず、落ち着こうぜ。という意味合いにも取れるという。ジャンプ+での配信当初はこの事件を示したコマにすぐさま修正が入り、単行本版で再修正が入った事も話題に。


    映画ネタは残念ながらほとんどわかりません…
    が、難しい事を知らずとも、青春譚としても完成されているように感じた作品。


    1刷
    2023.7.1

  •  評判のマンガだそうですね。例えば、絵柄というか、人物の表情の描写とかに、苦手な印象で読み始めました。おおむね、新しいマンガ家についていいけない老人です。
     しかし、この作品に繰り返し描かれる後ろ姿、一生懸命漫画を描く二人の少女の、表情ではなくて、後ろ姿に込められたマンガ家の「おもい」には胸を衝かれました。 若い人たちの素直でナイーブな感性に触れた気がしました。
     もっとも、読み終ええ、すっきりというわけにはいかなかったわけで、まあ、年のせいかなとか、いろいろ考えこまされました。
     ブログにもうだうだ書いてます。覗いてみてください。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202112300000/
     

  •  チェンソーマンの第一部連載を終えられた藤本タツキさんが繰り出した、ジャンプ+で史上最多閲覧を叩き出した名作青春物語作品の書籍版である。
     ジャンプ+で見つけた読者は(特に同業の漫画家の皆さんは)まず「140ページもあるの⁉」という点で驚愕し、読後に絶賛したまさに名作だ。
     ほとんど即時、出版化が決まったのもうなずける。

     まず、なんと言ってもストレートな物語は胸を打つものがある。
     二人の絵の道に進む少女の歩む道が絡まり、別れながら展開する物語像は圧倒的に青春劇である。
     その中核には「創作の意義」を問う物があり、並行世界的に描かれた二つの歴史はこの部分を鋭く抉っている。
     二人の物語は、どちらの世界でも交わり、そのどちらにおいてもあまりに尊い。
     説明し過ぎない物語が見せる尊さは、漫画読者に鋭く突き刺さるものだろう。
     物語自体はシンプルなのに、その物語構造(バック)の稠密さが物語としての面白さを広げている。

     また、この作品タイトルである「ルックバック」の持つテーマ性もまた先鋭的なものがある。
     この作品の多層構造は、ネット上でもよく考察されていて、参考になるところだ。
     一つは、この作品の発表日が京都アニメーションの火災事件の同日であった点。
     起承転結における転として重要な役割を持つ、個人がもたらしたテロリズムに対して、創作が何の力もないことは物語で示されたとおりだ。
     その上で、物語作者が何をできるのか。それは最後のページで示された背中(バック)が示した通り、そこには強烈なメッセージが秘められている。
     そしてその鎮魂のメッセージは、冒頭と巻末に隠されたメッセージから、oasis の「don't look back in anger 」という洋楽の一曲によって暗示されているのだ。

    (聞きかじりの話で恐縮だが、Wikipedia を参照するとこの楽曲が英国で2017年、自爆テロに対する追悼式典で合唱された事実が確認できる)

     物語を見ると、苦しい時には過去を振り返ってみて(ルックバック)というテーマも感じられる。
     振り返ったとき、主人公の藤野がどうしてまったく好きじゃない漫画制作をしているのかが瞭然と描かれている。
     そして、振り返った先には原点と言うべき吊るされた友人の半纏があるのだ。
     彼女はだから、友人の部屋で読んだ自作の読み返しによって復活を果たしたのである。

     そして、この物語を強烈に彩るのが、言葉に頼らない背景(バック)の緻密さである。
     例えば、幼少期に心を挫いた藤野を救った言葉に対する反応は何も語られない。
     ただ、靴を揃えることはおろか、雨に濡れた体を拭くことを忘れて熱中する彼女の姿が描かれるだけだ。
     また彼女を傷つけた言葉の数々は、前半に描かれ、中間以降は描かれない。
     それらは背景となっていき、ずっしりと腰を据えて創作に向き合い、結果を出した彼女の前ではきっと何の価値もない雑音となっていったからだろう。

     藤野の部屋にあるシャークキングと、京本の部屋にあるシャークキングは、複数ある巻が違っている。
     そこにある意味は明瞭だが、そうしたディテールで言葉を使わないのがこの作品の大いなる特徴だろう。
     つまるところ、背景を見ろ、それで分かる(ルックバック)という、恐るべき自負心から来るメッセージなのだ。
     そしてその自負心に相応しい緻密な作画とメッセージ性豊かなコマの数々は、読者をして唸らせる他ない。

     色々な側面から見て、この作品は名作としか言えない。
     この一巻だけで恐ろしく胸を抉るし、考えさせられることは多く、情報量は多い。
     少なくとも、一度は創作にハマった方ならぜひともとお勧めしたい作品だ。必ずあなたは、この作品に魅了されるはずだから。

     非の打ちどころのない星五つ。できれば星十個くらいで評価したい一冊である。
     すでに定評を得た作者の作品であるとはいえ、この名作が見逃されず自分の元までシェアされてきた幸運をただただ噛みしめたい。

  • 中途半端に目覚めてしまった明け方に、Twitterから目に飛び込んできた「ルックバック」。
    あっという間に、いろんな人が、いろんな想いを呟いて、それが嬉しかったり、もどかしかったり、とにかく色んな波を社会にもたらした。

    コミックスになると聞いて、今度は紙の本で読んでみたいなって、すごく思えた。

    冒頭の、小学生の描いた四コマ漫画を中心にした構成が、めちゃくちゃ好きで。
    そこから、四年生の藤野ちゃんの、絵にのめり込んだり、冷めたりする過程が、自分のことのように感じて、いつの間にか話にハマっていた。

    そして、運命の日。
    扉一枚を隔てた世界から、京本が慌てて藤野ちゃんを追いかけるシーンも。
    勝てないと思っていた京本から熱い声援を送られて、藤野ちゃんが思わずステップを踏むシーンも。

    それが、運命の日で、良いのだと思う。

    この後の話は、ネタバレにもなるので、以下略。
    想いを表現することは、それまでに、すでに作者自身が闘ったことでもあるんだと思う。
    私は、自分のために、最後まで読めて、最後まで描いてくれて、良かったなと思ってる。

    忘れられない作品になった。お疲れ様でした。

  • もっと若い頃に読みたかった。そしたらもっと感動したし共感できたんだろうな。学生時代に人生を変える出会いが有るって素晴らしい。夢中になれる物がハッキリしていて真っ直ぐ進んで行けるって眩しい!後半は後悔、絶望、の後の希望みたいな感じで一冊完結にぎゅっと内容が詰まった作品でした。

  • 漫画が売れていく流れで挫折があるかと思いきや
    そのまま上手く行ってしまうのかと…
    自分の予想通りにならなくて不満なのかな。

  • 経験をしたことがある人はわかると思うが、マンガでも小説でも音楽でも創作作品を生み出すということは、比喩ではなく我が子を産みだす感覚にかなり近い。自分の身と心を削り捧げる、つまり自分という人間をかなり根こそぎ差し出す行為だからだ。その証拠に作り上げた直後、達成感が強すぎてすぐに気づかないが、消耗感がもの凄い。(余談だが、マンガ原作者の気持ちを軽んじたテレビ局や出版社界隈の人間がそのことをあまりにわかっていないことには絶望したし、その作者が生み出すものが自分たちの生きる糧なのにも関わらずその敬意のあまりの無さを心底軽蔑する。そんなことをやっている猟師がいたとしたら間違いなく自然に殺されるだろう、それと同じ行為だ。)もとい、描くことがつなぐ2人の友情は、ともに自分の人生を内面から差し出す行為とともにあったわけで、それは相当に深い絆だったろう。お互いの才能に惹かれ惹かれあった人と出会えた喜びを爆発させる雨の帰り道、マンガ賞を受賞したことを2人で確かめた雪の降る日のコンビニ、そして同じ部屋で黙々と作品を描くことに没頭している間2人はお互いに背中を向けていて、ふと振り返った時にその自分の人生を支えてくれる存在がいることの喜びを奇跡を何度も何度も噛み締めただろう。部屋に掛けられていた半纏の背中の筆跡に、実際は2人で描いたものではない連載マンガの単行本の描線に、確かに2人でやってきた痕跡を見つけ、自分たちの人生はお互いが振り返った時の友の姿で支えられ導かれていた、それはこれからも続いていく、いや、続けていくのだ。卓越した表現力でかけがえのない友情の姿を描いた素晴らしい作品だった。

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著者プロフィール

1992年秋田県出身。秋田県立仁賀保高等学校情報メディア科CGデザインコース卒、東北芸術工科大学美術科洋画コース卒業。2016年から18年にかけ「少年ジャンプ+」で『ファイアパンチ』を連載。その後、「週刊少年ジャンプ」で『チェンソーマン』の連載を開始し、20年に第66回「小学館漫画賞」少年向け部門を受賞。翌年には、同作品でハーベイ賞BestManga部門を受賞した。22年にアニメ化された。

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