- Amazon.co.jp ・マンガ (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784091841032
感想・レビュー・書評
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全3巻読了。
演劇の世界から漫画家に転向した経歴を持つ
村上かつら(♀)は、
いつも関西を舞台にした
独特な空気感が持ち味で、
日常を描くのが上手い。
逆に言うと
どの作品もドラマチックではないんだけど、
読めば必ず心掴まれるんですよね〜♪
工業高校出身で
学生時代は
小さな工場で夏休みのバイトをしていた自分としては、
なんか懐かしくて
主人公のかよに
共感できるところが多々ありました。
16歳のかよは
進学はせずに
油あげの工場で働くことになるんやけど、
工場って
パートのおばちゃんばかりで
同世代の若い子が
ほとんど職場にはいないんですよね。
おばちゃんたちは
みんないい人ばかりだけど、
寮への帰り道に
同世代の学生たちが友達と
わいわいしてるのを見ると、
どうしても寂しさと孤独感を感じて
下を向き足早に通り過ぎてしまうかよ。
淀川河川敷の高架下で
上を走る電車と電車がすれ違う瞬間に
かよが大声で
「友達が欲しい」と
願い事を叫ぶシーンが
その切実さを物語っていて
本当に秀逸です。
そして願いが叶ったのか、
那子という美少女が
パートとして働くことになります。
なんとかして友達になれないかと
悩むかよ。
しかし那子には那子の事情があり、
最初はなんとも
そっけない態度なんスよね〜(笑)(^_^;)
しかし、那子との出会いによって
閉じたままだった
かよの小さな世界が、
外へ外へと開かれていく様が心地よくて、
家を離れ
知らない土地で暮らす自分の娘を、
オロオロしながら
影で見守っている父親のような気分で(笑)
いつも読んでしまいます(^_^;)
ホンマの人生って
実は劇的な出逢いや
ドラマみたいな
華々しい出来事だけじゃなくて、
日々の細々とした
「くだらない幸せ」の積み重ねなんですよね。
劇的な変化だけを気にして
大きな幸せだけを求め続ける生き方の中には
未来なんてない。
一晩眠ればすぐに忘れてしまいそうな
当たり前の日常の中にこそ、
大事なものが潜んでいるし、
華やかで贅沢なものではなく、
ささやかで小さな祈りを重ねつつ
人はみな歩いているんだと思います。
単なる心あたたまる漫画で終わらず、
雇用の問題や工場縮小、その後に待つ別れなど
リアルな現実を
しっかりと描いた点も
評価したいです☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最終巻です。
エリカの描き方に村上かつらさんのすごさを見ました。いや本当に驚いた。
エリカはここまでとても感じの悪い女の子として描かれてきました。人の内面に深く迫ろうとする人ほど本当の意味での「悪人」が出てこないような、「結局みんないい人」としてストーリーを描く、というのはよくあると思います。勧善懲悪を避けるということですね。実際私もそんな優しい物語をこよなく愛しています。ただ「淀川ベルトコンベア・ガール」は「結局いい人」と思わせる描き方をとらずに見事に読む方を納得させる形で人間関係を描いていると感じられました。
エリカはかよと那子へ意地悪をしようとして、逆におからの返り討ちに遭います。そこでのエリカの那子へのセリフもいいのですが、エリカの女友達の対応がとても印象的なのです。エリカを「姫」扱いして許してしまう少しほっこりするようなやりとり。那子もうまく言葉でまとめています「エリカの魅力を楽しめる度量の広い女友達だ…」と。同時にこれは著者の度量も示しているのだと思います。
そしてラストに近づくところでの、かよから那子に対する祈り「那子ちゃんが医大に合格しますように!」から「さみしいのは、他人との繋がりが弱くなってるときじゃなくて、ほんとは、自分とうまく繋がっていないときなんだ」というモノローグまで。今読んでいる自分から見て、この言葉が完全にしっくりくるかどうかはわからないけれど、日々生活したり仕事する中で繰り返し確認することになるだろうなとは思いました。
あとがきによると震災があった後で、ラストは当初の構想から大幅に書き換えられたといいます。それだけ常に今の自分と向き合いながら妥協することなく言葉や物語を絞り出す人なのでしょう。
万人向きの物語ではないかもしれません。少し癒されたい、といった時に読むものでもないかもしれません。ただ、例えば「何かをしようとしているけれど今ひとつ踏み出せない」というような自分の心をもてあまし気味の時に、寄り添ってくれるような物語ではあるかもしれないと思いました。 -
すばらしかった。
最後、ちょっと駆け足になった気もしたけれど
ちゃんとみんな成長しててよかった。 -
さみしいのは自分とうまく繋がっていないとき。名言ちょーだいしました。★5越え!
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連載時と少し変えてきたラスト。希望がこめられた、希望のある道を指し示すかのような。
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最終巻。最後は駆け足で終わってしまった。
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あとがきに書いてありますが、震災を通じて変わった雰囲気が反映されてる。
1〜2巻の時にはなかった希望で持って完結してくれました。 -
最終巻。
主人公やそれを取り囲む人たちの繊細な心理描写が切ない。
村上かつららしい描写が納得の一冊。 -
最終巻です。
ひとりぼっちの寂しさを持て余している17歳の女の子、かよ。
経済的事情から高校進学を諦め、淀川ベリの油揚げ工場で働いています。
“友だち”を渇望していた彼女は、同い年の那子やエリカたちとの関わりの中で様々な感情を味わい、時に翻弄されながら、やがて、自分の寂しさの理由にたどり着きます。
「さみしいのは、他人との繋がりが弱くなってるときじゃなくて、ほんとは、自分とうまく繋がっていないときなんだ」
そのことに気付いたかよは、自分の本当に好きなものや幸せを感じることに真っ直ぐ向き合い、新しい一歩を踏み出す決心をします。作者は、小さな希望を提示して物語の幕を下ろしますが、3.11の震災後、当初の構想を大幅に変更したとあとがきにありました。
終盤、未成熟で不定形で、それでも可能性に満ちていた(であろう)かつての自分を想い、すこし泣きました。