ジュリエットの卵 (3) (小学館文庫 よE 3)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784091913937

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  • 吉野氏を偲んで。
    繊細で美しい世界。
    美しい双子、蛍と水(ミナト)。
    2人の関係は、不道徳ではあるのだけれど、なぜか、美しい。
    なんて不健康。
    でも、言いようもなく美しいのだ。
    終盤、水ばかりを偏愛する母親の原点が明らかになることが、2人の悲劇を一気に加速させる。
    こんなにも繊細な物語を紡ぐ人だから、若くして天に召されたのだろうか、なんて埒もないことを思ってみたりする。

  • 全3巻。正気と狂気の境目がわからなくなる。

  • 解釈というのは人それぞれで、これを双子の近親相姦ものとして
    読むのはひとつだと思う。

    ただ、17話目のタイトル「Juliet's children」を見たときに
    わたしはああ、この物語の主人公は実はお母さんだったのかと
    思い、はっとしてしまった。

    ここからは半分わたしの想像なのだけれど、
    こう考えたらわたしはなんだか納得してしまったのだ。

    ・・・自分も実の兄と関係を持ち、子を宿してしまった彼女。
    自らの過ちを悔い、心中を計るも愛する人に一人取り残されてしまった。
    やがて彼女は生まれてきた息子に愛する人と同じ名前をつけ、
    溺愛するようになる。しかし、反対に自らの名前をつけた娘は愛することができない。
    彼女には自己の分身である娘の存在がみえないのだ。
    娘を愛することのできない母と愛を知らずに育った娘。
    娘は双子の片割れ、父親の分身である水を愛することで内面の歪みと必死に釣り合いをとろうとする。
    水を中心にして保たれる危ういバランス。
    その均衡は母がこどもたちが同じ轍を踏んでしまったことに気づいた時
    崩壊する。そして彼女は自らの業の深さを知り愕然とするのだ。

    彼女の死顔は幸せそうだったらしい。
    きっと愛する人のところにいける喜びに満ちていたのだろう。

    だが、それでは残された娘はどうなるというのだ。
    彼女は、下田に出会い閉じられた世界の外側に道があることを
    知った。水も少しずつ歩みだそうとしていた。

    しかし、母親の死には一瞬で全てを拭いさる破壊力があった。

    ・・・これがtragic endingだとは思わない。
    蛍は自らの眼で自らの意思で、もう一度世界を見ようとしているからだ。
    ただ、読み終わった後にどうしようもないもやもやと、
    やりきれない感じが胸に残る。

    だが、わたしはこの物語を何度でも読み返すのだろう。
    運命ではなく、自らの意思で道を切り開くために。

  • 蛍と水。
    名前も好きなんだな、この人の作品は。

  • てっきり、2巻で終わっているんだと思って感想を書いたのが2年前(笑)
    完結編の3巻、ありました。

    うーん、この結論は……。

    なんてことを言おうとしていますが、あんまり、ストーリーが残っていないという。

    でも、作者の優しさと悪意の両方を感じます。

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