- Amazon.co.jp ・本
- / ISBN・EAN: 9784091919120
感想・レビュー・書評
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人類の生存の危機には「科学が勝利する」との考えに疑問が生じ「自然回帰が重要」と思い始めて、科学技術と自然回帰の融合する社会を描いたのが『マージナル』。
マージナルとは、限界ギリギリという意味。
妊娠・出産・種の存続をテーマにしており、男が妊娠したら世界が変わるかもしれないという希望を「キラ」に託している。
本作品の舞台は、奇妙なウイルスのせいで女性が生まれなくなった(つまり生殖能力を失った)地球。
男性ばかりのあわれな世界で、マザというただ一人子供を生める聖母をたよりに細々と命をつないでいる。
しかし、そのマザが死ぬところから物語は始まる。
女王蜂のように、この世界ではマザが死ぬと、男の中から新しいマザが選ばれ子供を生めるようになる。
だが実際は、胎児は人工子宮で育てられていた。
マザはこの世界を統治するのに必要な宗教がでっち上げた創造物なのだった。
遺伝子操作や、種の存続のための近親相姦、人身売買の問題など倫理観を問う場面も現れる。
だが読み進めていくうちに、これまで見てきた狭い世界だけの話ではなくなる。
"井の中の蛙"の世界から飛び出し、もっとスケールが大きい複雑な世界が現れる。
常に緊張感に満ちた場面と予想外の展開が続き、何を読まされているのか分からなくなる。
登場人物たちの関係や、誰が何を目的に行動していたのか理解しきれないままエンディングを迎えてしまった。
一度読んだだけでは気づけていないテーマがいくつもありそう。
おそらく読み返すたびに新しい発見がある作品だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人類の末期について、考えられる可能性の世界。
こんなスケールで描けるマンガ家が一体何人いるだろうか。
人の愛が向かう先は、ひかれる先は一体どこなのか。
萩尾望都ワールド全開の素晴らしい世界が、美しく開かれている作品だと思います -
これはもう殿堂入りの傑作。
メイヤードさんがやっぱり切ない。