マージナル 文庫版 コミック 全3巻完結セット (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784091919120

感想・レビュー・書評

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  • 人類の生存の危機には「科学が勝利する」との考えに疑問が生じ「自然回帰が重要」と思い始めて、科学技術と自然回帰の融合する社会を描いたのが『マージナル』。
    マージナルとは、限界ギリギリという意味。
    妊娠・出産・種の存続をテーマにしており、男が妊娠したら世界が変わるかもしれないという希望を「キラ」に託している。

    本作品の舞台は、奇妙なウイルスのせいで女性が生まれなくなった(つまり生殖能力を失った)地球。
    男性ばかりのあわれな世界で、マザというただ一人子供を生める聖母をたよりに細々と命をつないでいる。
    しかし、そのマザが死ぬところから物語は始まる。
    女王蜂のように、この世界ではマザが死ぬと、男の中から新しいマザが選ばれ子供を生めるようになる。
    だが実際は、胎児は人工子宮で育てられていた。
    マザはこの世界を統治するのに必要な宗教がでっち上げた創造物なのだった。

    遺伝子操作や、種の存続のための近親相姦、人身売買の問題など倫理観を問う場面も現れる。
    だが読み進めていくうちに、これまで見てきた狭い世界だけの話ではなくなる。
    "井の中の蛙"の世界から飛び出し、もっとスケールが大きい複雑な世界が現れる。

    常に緊張感に満ちた場面と予想外の展開が続き、何を読まされているのか分からなくなる。
    登場人物たちの関係や、誰が何を目的に行動していたのか理解しきれないままエンディングを迎えてしまった。

    一度読んだだけでは気づけていないテーマがいくつもありそう。
    おそらく読み返すたびに新しい発見がある作品だと思う。

  •  メイヤードーーー
     君を救いたかったです。

     進行性かつ不可逆的な病をいくつも
     抱えている彼は、子孫を残すことを
     禁じられている〈エゼキュラ因子〉の
     保有者。

     地球を道連れにしようと思った?
     男だけの世界。
     自由に子孫を残せない。
     自分と同じ。

     幼い頃から病による痛み、苦しみ
     不安、絶望にさらされてきたの
     だろうから、もう頑なになるしか
     なかったのかな。

     「生」は自ら選べない。
     彼の場合、遺伝や生殖、そういった
     自分の力ではどうしようもできなかった
     ことにこだわるしかなかったのかな。

     幼馴染のナースタースの愛も
     突っぱねちゃって。
     素直になりなさい。
     …なれないのか。

     「愛のほかは全部くれる」って、
     けっこう残酷な言葉ですよ。

     自分のことで手いっぱいで、
     誰かを愛する余裕なんてないってこと?

     それとも自分では幸せにできないので
     突き放すっていう孤独な彼の不器用な
     やり方なの?

     真意はわからない。

     けど、死ぬ間際に彼女の名前を口に
     したことが、何よりも彼の本音を
     物語っているような気がする。

     そういうことで、いいんだよね。

     ちょっと遅すぎたけど、ちゃんと
     彼女にも伝わったよ。

     この作品は他にメインがあるはず
     なのだけれど、この2人に全部
     持ってかれちゃった。

  • 人類の末期について、考えられる可能性の世界。
    こんなスケールで描けるマンガ家が一体何人いるだろうか。
    人の愛が向かう先は、ひかれる先は一体どこなのか。
    萩尾望都ワールド全開の素晴らしい世界が、美しく開かれている作品だと思います

  • 何度も何度も読み返してしまう漫画です。
    絵も綺麗だし、話の内容もさすが。

    この時代の萩尾作品の硬質な線が好きです。

  • これはもう殿堂入りの傑作。

    メイヤードさんがやっぱり切ない。

著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞歴多数。

「2022年 『百億の昼と千億の夜 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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