- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093103794
感想・レビュー・書評
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マナーは、その人が受けてきた教育を露にする。
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裏千家家元の家に生まれた著者は、多くのマナー本を出しています。
タイトルの通り、一通りの基本的なマナーを見につけた人向けの内容となっています。
マナーとは伝統にのっとった礼儀作法でありながらも、その時代時代に合わせて少しずつ変わっていくものだという著者の考えが斬新。
祖父母の時代から未来まで全く変わらないものかと思っていたので、目からうろこが落ちる思いで読みました。
病気見舞いなどには祝儀袋を使うのが習わしですが、それもケースバイケースで、重篤な病状の時には白封筒は郵便番号のケイの無いものを使うほうがよいとのアドバイスには、なるほどと思いました。
些細なことながら、相手の心象を傷つけかねない、意外に複雑でデリケートなアイテムです。
また、便せん一枚で終わる手紙は失礼だと言われているため、これまで手紙を書くときに、もう一枚白紙の便せんを添えていましたが、その慣例は、もはや意味のないことだとする著者の意見に、力強さを感じました。
確かに、よほど薄い便せんでない限りは、透けて見えることもありませんし、今では便せんもさまざまなバリエーションに富んでいます。
やはりこれも、時代の変遷による変化とみるべきなのでしょう。
「室礼(しつらい)」という言葉について知りました。
そのおもてなし精神で、和室の床の間が整えられていることに思い至ります。
しつらえるの語源となるのかもしれません。
おおよそのマナーはわかっていても、実際の場面でもたつくようなこともあるため、たまにマナー本を読み返して確認するのは大切だと思います。
著者は、慣例をそのままよしとせず、時代錯誤的なものに関しては、スッパリと「必要ない」と言い切っているため、わかりやすくクリアになります。
その柔軟さと勇気に背中を押されながら読んだ一冊でした。
どの章もためになりましたが、この手のマナー本には当たり前のように挿入される文中イラストが一つも無かったことには、少し物足りなさを感じました。