- Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093865975
作品紹介・あらすじ
メモ魔の窓際刑事vs多国籍IT企業
秋田県能代市で、老人施設入居者85歳の死体が近隣の水路から発見された。雪荒ぶ現場に浮上したのは、施設で働くベトナム人アインである。
技能実習生として来日したアインは、神戸の縫製工場で働きながら、僅かな収入を母国の家族へ送金する日々を送っていた。劣悪な労働条件に耐えかね、列島を転々として東北にたどり着いた。重篤なガンを煩っていた入居者に請われて、自殺を幇助したとの自供を始める。
これで解決か……。捜査官らは安堵したが、ひょんなことから捜査に加わった警視庁継続捜査班の田川信一は、死体の「手」に疑いを抱いた。捜査線上にあがったのは、流通業界の覇者として君臨する世界的IT企業サバンナだった――。
【編集担当からのおすすめ情報】
多国籍企業来襲、外国人闇労働、国民分断・・・。経済記者出身の著者が社会の最暗部を照らします。シリーズ40万部を超える『震える牛』シリーズ第三弾です!
感想・レビュー・書評
-
内容(「BOOK」データベースより)
秋田県能代市で、老人施設入居者85歳の死体が近隣の水路から発見された。雪荒ぶ現場に、容疑者として浮上したのは、施設で働くベトナム人アインである。外国人技能実習生のアインは、神戸の縫製工場で働きながら、僅かな収入を母国の家族へ送金する日々を送っていた。劣悪な労働条件に耐えかね、列島を転々として東北にたどり着いた。重篤なガンを患っていた入居者に請われて、自殺を幇助したとの自供を始める。これで解決か…。捜査官らは安堵したが、ひょんなことから捜査に加わった警視庁継続捜査班の田川信一は、死体の「手」に疑いを抱いた。捜査線上にあがったのは、流通業界の覇者として君臨する世界的IT企業サバンナだった―。
『震える牛』『ガラパゴス』に続く第3弾!
これを読んでいる時に 建築業社で同じような外国人労働者に対する扱いのニュースをSNSでちょうど観ていたので 確かに実際にある内容なんだなぁと思った。
アンダークラスがどんどん増えていくんかな?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Amazonオーディブルで聴いた。
それなりに面白く聴いたけど、以下、ダラダラと文句をつけてます。
主人公は捜査一課のベテラン捜査官で50歳くらいなのに、派遣労働者や外国人技能実習生の過酷さを知らないのが、かまとと?みたいに思って、ちょっとしらける。
話の都合で、そうせざるを得ないんだろうけどさー。
前2作で主人公と一緒に動くのは男性警察官だったけど、今回は年下の若い女性キャリア警察官。
主人公と組むのは若い女性キャリア警察官じゃなく、若い男性キャリア警察官にしてほしかった。
年上の男性が若い女性に捜査について説くのはマンスプレイニングに見えちゃうし(普通の指導なんだけど…)、若い女性が男性を「さすが敏腕捜査官」とか褒めるのがキモく見えるし、途中でその女性キャラが泣いて取調べができないと弱音を吐いて主人公が叱咤するところでゲェってなる。
主人公が組むのが若い女性でなく若い男性なら、そういう雑味を感じなくて済むはず(マンスプレイニングは相手が女性でなくても成り立つだろうけど)。
私の偏見のせいかもしれないし、著者の書き振りのせいかもしれないけど、読書で余計なストレスを感じたくないんだよねぇ。
いくら若くても10年以上やってたら、キャリアとはいえそれなりに分かってるもんでしょ〜??
そんなに弱っちくないでしょ〜?
あと「震える牛」でもそうだったけど、著者が、古き良き下町の商店街アゲ、均質的な量販店アンチで、分からなくはないけど、今更そんなこと言ったって、と思う。
私は「古き良き下町の商店街」なるものの経験がないし、そういう人情社会には面倒臭さもあるし、無個性の量販店の良さもあるよねぇ。
そしていつも便利な解説キャラが出てくる。
今回は外国人技能実習生の劣悪な労働実態の解説キャラとしてNPO法人の職員が出てきた。
さらに「ガラパゴス」のスーパー解説キャラのファンドマネージャーが再登場してウケた(「ガラパゴス」で2回出てきたのも驚いたのにさらに出てきて、常連キャラか)。
途中で犯人も動機もだいたい分かって、最後に取調べで落とすんだけど、その主人公アゲパートで主人公側に感情移入してないとイライラする(^_^;)
被疑者が反発して喋り出すとドツボで、何も話さず黙秘せぇよと思う。
話すほどに捜査官に取っ掛かりを与えるし、墓穴を掘ることになるんだよねぇ。
「ガラパゴス」といい「アンダークラス」といい、証拠を処分したとしつこく言ってた人間が実は確保していてそれを後で使うの、ワンパターンじゃないか。
「アンダークラス」はあんまりテーマと内容が噛み合ってなかった気がする。
必然性がないというか、舞台設定の必要性が分からないというか。
あと被害者が偶然、加害者の情報を持ちすぎダヨネ。
この著者は描きたい社会問題が先に立っているんだろうと思う。
スピンオフの「覇王の轍」を聴いて、相場英雄はとりあえず終わりにしよー。 -
田川信一シリーズの第3弾。タイトル通りの格差社会をテーマに、巨大企業、技能実習制度などを複雑に絡めた社会派ミステリー。巧妙なプロットを最終盤で見事に回収し、スッキリした! 慎ましやかに生きようよ。メモ魔田川の次回作、お待ちしております。
-
普通の警察小説として読んでも十分楽しめるのに、そこに社会問題を織り交ぜてリアリティを出す技巧が見事。次はどのテーマに切り込んでくるのか次が待ち遠しい。
-
This is Aiba style ‼︎ 最後までとても興味深く読めた。登場人物の繊細な心理描写と外国人技能実習生やメガ企業及びそれに伴う社会の問題点を鮮明に炙り出しており、それをミステリーとし昇華させていることが読者をより考えさせていると思う。バブル崩壊後の非正規社員の劇的な増加や絶対評価主義が人を人とも思わない企業の増加や社会にしてしまった原因なのではないだろうか。終身雇用などの日本式経営を失敗として一刀両断するのではなく、いま一度光を当てても良いのではないかと考えさせられた。
-
頑張って仕事してりゃなんとかなるんだよ、という総括が腑に落ちない。
巨大プラットフォーマーの上級幹部と、警察のおっさんの意識の落差が印象的だった。
そしてどちらかというと俺は、いやいや頑張って仕事しててもどうにもならない世の中になりつつあるでしょ、と思っている側なので、なんとも投げやりな昭和的な楽観視か、もしくはあとは野となれ山となれの無責任さを感じとってしまうのだ。
震える牛は狂牛病、ガラパゴスはエコカー詐欺、常に時代を追いかけるシリーズと言える今作は、海外実習生労働問題に切り込む。
秋田県、県北の能代市で嘱託殺人事件が起きた。
末期ガンだった女性は、ヘルパーのベトナム人女性に、自分を殺してくれるように依頼した。
そして、車椅子のまま凍てつく川に落ちた高齢女性が死亡した。
そのベトナム人女性は、海外交流で日本に来ていたこともあり、今回の逮捕が外交問題に発展するとの懸念から、キャリア官僚が現地に向かうことになった。
そのお供で警視庁捜査一課の継続捜査担当の田川も能代へ向かったのだが、犯行後の写真から、これはコロシだと確信を抱く。
被害者の女性は、殺人事件に特徴的な手の握り方をしていたのだった。
海外実習生を法外な低賃金で使い倒すブラック企業。
そのブラック企業の生殺与奪を握るプラットフォーマー。
この社会の歪んだ企業構造が、人の心をも簡単に捻じ曲げる。 -
今の日本の、これからの日本のいく末が描かれている。外国人労働者を切り口にしながらも、少子高齢化に伴う、仕事のあり方(AIが役割も担う職種が増える)それに伴う貧富の差等が生まれる。
労働のあり方を真剣に考えていかなければならないと思った1冊 -
詩子以外で詩子という名前の人をはつめて見た。
藤井詩子85歳。正義感の強いがんこおばあさん。 -
経済絡みのミステリー。来日したアジア人の就業の実態と戦後の捨て駒にされた日本人。今でも変わらない時代を映していて、日本は沈んで行くんだな〜と実感してしまう。憤りと哀しさの作品。
-
「震える牛」「ガラパゴス」に続く刑事・田川信一シリーズの久々3作目。今回もタイトル通り、過半数の国民が下層化しつつある日本の現状と、外国人技能実習生問題やGAFAを中心としたワールドワイドの富を食い散らかす巨大多国籍IT企業の富の寡占の問題等々を散りばめた極上のセミノンフィクションミステリー作品。最後のエピローグに至るまで考え抜かれたプロットとその回収、長編にも関わらず上記時事問題を解説しながらも無駄や贅肉のないタイトな作りと展開。非常に面白くかつ興味深く一気読みさせてもらった。