アルテミスの涙

著者 :
  • 小学館
3.58
  • (34)
  • (72)
  • (90)
  • (10)
  • (4)
本棚登録 : 684
感想 : 84
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866224

作品紹介・あらすじ

まばたきの会話で女医は真相をつかめるのか

『江花病院』に長期入院している閉じ込め症候群(ロックドインシンドローム)の女性患者・岸部愛華が深夜に体調を崩した。当直中の産婦人科医・水瀬真理亜が診察すると、愛華は妊娠していることが判明する。寝たきりの愛華は誰に妊娠させられたのか? 病院は騒然となり、政治家である愛華の父は激怒するが、前代未聞の事件はマスコミに報道されて世間の知るところとなる。真理亜は真相を探るべく、話すことができない愛華のまばたきを通して彼女の”声”を聞くが――
社会派ミステリーの旗手が人間の尊厳と命の倫理に迫る、新たなる傑作。

【編集担当からのおすすめ情報】
「わたしのこころはしにました」
「たすけてください」
「きんしされています しゃべるなって」
寝たきりで話すことができない女性患者と、文字盤を使った”まばたき”によって交わす緊張感あふれる会話。
かつてない設定のスリリングなミステリーです。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 交通事故により七カ月間「閉じ込め症候群」(ロックドインシンドローム)になっていた岸部愛華22歳が入院している江花病院で、嘔吐と出血により妊娠十週目であることに産婦人科医師の水瀬真理亜は気づきます。

    愛華の病気は体をどこも動かせない症状があり、病院内でレイプがあったということになり、警察も介入してきます。

    精神科医による催眠療法で愛華にまばたきの数で、はい、いいえを教えさせる方法が強行され、愛華を妊娠させたのは担当脳外科医の高森医師だったという驚くべき事実が確認されてしまいます。
    高森医師は「これは愛です」と言って自分のやったことを否定しませんでした。

    愛華の父親の岸部大吾は政治家であり、愛華の転院させての中絶を申し入れてきます。
    真理亜は愛華にまばたきの数で51音を指定する方法をみつけ、愛華とコミュニケーションをとります。
    すると愛華はお腹の子を産んで祖父母に育てて欲しいと言い出します。
    なぜ、愛華はそこまで、自分の子どもにこだわるのか…。真理亜は愛華に更なるコミュニケーションをとり、真実に寄り添おうとします。


    二三時間で読める中編小説です。
    よくできたミステリーだと思いました。
    きわどい話では全くなく、夢みたいないいお話でした。
    こんな不思議な話もあるのだなあと、感心しました。

    • くるたんさん
      まことさん♪
      こちら、ミステリとして一捻りあったのが良かったです。
      でも毒親、命、けっこう重いテーマが練り込まれていましたね。

      子供が幸せ...
      まことさん♪
      こちら、ミステリとして一捻りあったのが良かったです。
      でも毒親、命、けっこう重いテーマが練り込まれていましたね。

      子供が幸せになれることをただ願います〜。
      2021/12/10
    • まことさん
      くるたんさん。
      毒親、命。
      そうですね。かなり重いテーマの作品だったんですね。
      私は、ミステリーとしての、あまりの、不思議さに気をとられたレ...
      くるたんさん。
      毒親、命。
      そうですね。かなり重いテーマの作品だったんですね。
      私は、ミステリーとしての、あまりの、不思議さに気をとられたレビューに、なったかな?
      子ども、本当に幸せになれると、信じるしかないですね。
      これだけ、奇跡的なことをやってのけた、両親の子どもだし。
      2021/12/10
  • 閉じ込め症候群(ロックドインシンドローム)により長らく寝たきりの入院患者が妊娠
    彼女は誰に妊娠させられたのか
    このおぞましい事件の真相が
    文字盤とまばたきで明らかになる

    久々の一気読みでした
    何が正解なのか
    その正解は誰にとっての正解なのか
    医師の葛藤や迷いが丁寧に描かれる

    愛なのかなぁ
    うん、やはり愛なんだろうな

    思い込みを捨てて
    振り返った時
    真実が浮かび上がる感じ
    好きです
    図書館本

  • これはまた難しいテーマの作品だった。
    凄い発想というか…ん〜感想が難しい…

    「閉じ込め症候群」という言葉は初めて知りました。
    寝たきり、指一本動かせない、動くのは眼だけ…
    周りの言葉は聞こえ、自分の感情もしっかりとある
    ”誰も知ろうとしない“だけだった。

    そんな彼女が妊娠した。
    なぜ?どのように?レイプ?犯人は?
    ここだけ見ればサスペンス?ミステリー?
    犯人探しはまぁ問題ではないです。
    すぐわかるんで。

    命とは、倫理とは、常識とは、正論とは…
    そのあたりの考えで評価は分かれるかな?


    昨日土瓶某さんのレビューで思った事なんですが
    男性作家が女性の一人称での作品は何だかしっくりこない…という内容。
    なるほどあるあるな気がしました。

    妊娠した女性、その真実を解明する産婦人科の女性医師、作家下村先生はどれくらい女性心理を理解しているのだろう?と思い過ぎての読書になりました。

    ラストがちょっと駆け足で終わってちょっと残念
    なので珍しく☆3でございます_φ(・_・




    • 土瓶さん
      う~ん。よけいなことを書いちゃったかな?
      m(__)mフカブカ

      「閉じ込め症候群」
      名前は初めて聞きました。
      少し違いますが、...
      う~ん。よけいなことを書いちゃったかな?
      m(__)mフカブカ

      「閉じ込め症候群」
      名前は初めて聞きました。
      少し違いますが、乙一さんの「失はれる物語」を思い出した。
      あれは事故だったか。
      2023/01/09
    • みんみんさん
      余計じゃないよ笑
      それを超えた作家さんはいるし!
      わたしの☆はそこに繋がる気がする_φ(・_・

      だから翡翠ちゃんはどうも手が出ない笑
      レビ...
      余計じゃないよ笑
      それを超えた作家さんはいるし!
      わたしの☆はそこに繋がる気がする_φ(・_・

      だから翡翠ちゃんはどうも手が出ない笑
      レビューするのが怖いわ( ̄▽ ̄)
      2023/01/09
    • 土瓶さん
      「medium」は……そうか~。
      でも、あれはそれも逆手に取ってか~ら~の~って。
      なんだかわからないね(笑)

      まあ、合いそうもな...
      「medium」は……そうか~。
      でも、あれはそれも逆手に取ってか~ら~の~って。
      なんだかわからないね(笑)

      まあ、合いそうもないなら無理することもないでしょうが。
      でももし、あれを読み始めたなら最後まで読まねばなりませんよ。
      途中で「ウゲッ」ってなっても放棄してはなりません。
      言えるのはこのぐらいかな……。
      2023/01/09
  • どういう展開になるのかが、気になり一気読み。

    両親に支配されて生きてきた女性が、自らくだした判断に驚愕した。
    だが、生きていくうえでの希望なのか…
    いや、愛なのだろう。

    しかし、予想を上回る展開に圧倒されたとしか言いようがなかった。

  • ほんタメのあかりんのおすすめで拝読。 
    テーマとしては興味があったのだが、登場人物の心の動きや状況描写など、個人的にはあまり好みのリズム感ではなかったかな…。
    ストーリー設定も、真里亜や警察があまりに鈍感すぎたり、高森先生がいい人すぎたり、
    愛華と恋人も、親の言いなりになるか心中かの2択ではなく、親との絶縁も選択肢として選ぶことはできたわけで…。
    いまいち世界観に深く入り込めなかったので★2つ。

  • どっしりの一冊。

    閉じ込め症候群の女性患者に起きた卑劣な行為の真相に迫るミステリ。

    まばたきしかできないこの患者と意思疎通を図ろうとする医師の熱意、そして切実な願いに一人の人間としてどう手を差し伸べるべきか逡巡し葛藤する姿に胸打たれた。

    医師は患者の意思にも真摯に向き合うことも治療に必要不可欠なことを痛感した。

    終盤は一捻りある真相というミステリの面白さに相反するかのように沈殿していくせつなさと負の疑問。

    果たしてこれが誰もの未来への幸せに繋がるのか、持続するのか。後悔は許されない。

    下村さんの問いは今回もどっしり。

    • まことさん
      くるたんさん。
      確かにどっしり、かもしれないですね。
      三人の未来を想像すると、幸せになれるかわからないですよね。
      おじいちゃんとおばあちゃん...
      くるたんさん。
      確かにどっしり、かもしれないですね。
      三人の未来を想像すると、幸せになれるかわからないですよね。
      おじいちゃんとおばあちゃんが元気で長生きして、子どもも幸せになって欲しいですね。
      2021/12/10
    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪

      これは愛にじぃんとくるけれど、先を考えてしまう私にはちょっと怖い真相でした。
      ほんと、長生きしてくれないと…。>...
      まことさん♪こんばんは♪

      これは愛にじぃんとくるけれど、先を考えてしまう私にはちょっと怖い真相でした。
      ほんと、長生きしてくれないと…。>_<。
      2021/12/10
  • 事故で閉じ込め症候群になった女性が妊娠した。
    寝たきりで意思表示のできない彼女がなぜ?そしてどうする?

    閉じ込め症候群という病気を初めて知った。
    これは想像を絶する辛さがあると思う。
    愛華が言っていたように、自分でできることがすごく少ない。
    体は指一本動かず、動くのは目だけ。
    音は聞こえるので話は聞こえるが、返事はできない。
    毎日病室の天井を見つめるばかり。

    そんな彼女が妊娠したということは...
    そして出産を決意して...

    テーマは重くてすごく良かったが、その反面テンポが早く、あっという間にエピローグ。
    決意するまでの葛藤や、両親とのやりとり、医師の逡巡、エピローグにたどり着くまでもっと深く掘り下げて欲しかった。
    そしてその後、子供はどうなったのか。
    ハッピーエンドのようだけど、子供と、それを育てる祖父母を想像すると、ハッピーなのかわからなくなった。

  • 病院で起きた事件の犯人探しというスタンスで読み始めたが、全く予想外の結末。中盤、やけに早く犯人が判明したと思ったんだよな。そこから後半にかけて新事実が続々と出てきて、あれよあれよと言う間に真実が明らかになる。ちょっと重い内容で、命について考えさせられた。最終的にはハッピーエンドだけど、これでよかったのか?と将来を考えたら不安が残る。しかし答えは出ないままだ。

  • 色々と考えさせられる話しで、結末に驚いた。それにしても、冒頭の描写がいかにも過ぎて、騙された。結末に驚き。


  • 読みました。

    事故に遭い、閉じ込め症候群で
    寝たきりの患者の妊娠が判明する。

    騒然となる病院。
    そして担当医師が犯人として逮捕されてしまうが、
    患者から中絶の同意を得るため産婦人科医が
    意思を確認する術を模索して悪戦苦闘する中、
    次々に驚くべき事実が明らかになる。

    なぜ患者は妊娠したのか。
    この妊娠を望んだの誰なのか。
    担当医師は本当に犯罪を犯したのか。

    あなたのため、という正論は人を追い詰める。
    正論を述べた人は、相手の気持ちを考えないので、
    それに気づくことはない。

    幸せや不幸を決めるのは、何で誰なのか。
    命の倫理を追求した物語。

全84件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

下村敦史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×