逃げる女

著者 :
  • 小学館
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866279

作品紹介・あらすじ

逃走劇の先にある衝撃の真実とは――。

人を殺しても、逮捕できないヤツがいる――。
2023年、秋。北海道・札幌の葬儀場で、道警捜査一課の生方吾郎は、久野麻美という女を張っていた。
8日前に起きた殺人事件の被疑者である彼女は、葬儀場を出た後、警察の追尾を受けながらもその姿を消してしまう。
札幌、旭川、釧路……張り巡らされた捜査の網をかわして、北海道を脱出しようとする麻美。生方は所轄の駆け出し刑事である溝口直子とコンビを組み、彼女をどこまでも追う。
手に汗握る逃走劇、その先に隠された思いもよらぬ真実とは――。
冤罪事件を迫真のリアリティが描き話題を攫った『潔白』の著者、4年ぶり待望の長編小説!
逃げる女と追う道警――白熱のノンストップミステリー!!

感想・レビュー・書評

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  • 2004年に起きた轢き逃げ事件、犯人がわからないまま捜査も中途半端に打ち切られた。

    2023年、元記者で翻訳家の名倉が殺害された。
    現場にいた久野麻美に逮捕状が出る寸前、逃げられる。
    そこから凄まじいほどの逃走劇が始まる。
    執拗に追う警察と必死で逃げる久野麻美。

    彼女は、逃げていたのではなく、絶対に捕まらない男を追いかけていた。
    冤罪からの逃避、父との再会を果たすべく…。

    スピード感もあり、ここまでの逃亡と追跡に圧倒され、隠された事件に驚愕した。

    緊迫感ある、一気読み必至のサスペンス。

  • 悔しい一冊。

    逃げる女と追う警察が繰り広げる一気読み社会派ミステリ。
    この逃亡劇はまるで掴もうとするとするりと手から逃れる尻尾のようで手に汗握る連続と共に本当に殺人犯なのか、被害者との因果関係は何なのか、ページと真相を追う気持ちが止まらない。

    点は見えてもなかなか線に繋がらないもどかしさの惹きつけ方も巧い。 

    そしてついに見えてきた、掴んだ全体像。

    まず沸き起こったのは悔しい、その一言。

    国の水面下でこういう圧力、下請け関係は常に渦巻いている気がしてならない。

    一人の女性の強い意志が、誰もの憤怒がきっと胸を打つ逃亡劇の終幕。

  • 初読みの作家さん。
    北海道内の逃避行である第一章までは、引き込まれて一気に読んだ。
    その後、この被疑者に対してここまで大がかりな捜査網、普通敷く?と思ってしまったので、自分としてはやや中だるみ。
    そして後半はまた盛り返す。
    怖い怖い。
    でもフィクションだしね、と思い込もうとするも、著者が巻末でジャーナリストの清水潔氏からもレクチャーを受けていたと書いてあるのを見て、一気にノンフィクション的恐怖心が増した。

  • 逮捕状を執行される直前に逃亡してしまった殺人事件の被疑者と、それを追う警察。捜査の網をかいくぐり逃げ続ける彼女は、いったい何をしようとしているのか。息もつかせぬサスペンス感が溢れるミステリ。
    現代の顔認証システムってそんなに凄いのか……ということにまず愕然。それなのにそのシステムすらを抜けて逃亡する彼女の姿が見事というほかありません。機知と機転に溢れたその姿、そして何かしら確固たる目的がありそうな彼女には、ぜひとも逃げ切ってほしいという気にもなりました。
    一方で追う警察の方も、現場はともかくとして上層部の動きが嫌だなあ。そしていかにも何か裏事情がありそうな雰囲気が見えてくるにつれ、これはただの殺人事件ではなかったのかも、と。冒頭に語られるとある事件の経緯とも関係がありそうなのは分かっていたけれど。終盤の展開は圧巻でした。

  • 逃亡者をあつかうサスペンスは、通常なら「逃げる側」か「追う側」のどちら側かに立つことでハラハラ感を味わうものだが、本作はどちらの側の視点からもそれを描いていて、あと一歩というところで逃げられ地団駄を踏む悔しさと薄氷の思いで間一髪窮地を脱出する、そのどちら側の立場からでも手に汗を握らせることに成功している稀有な作品と思う。なぜなら読者が強く感情移入するためには、主人公が「なんとか逃げ伸びたい」人なのか「なんとしても捕まえたい」人なのか、そのどちらか一方に肩入れするからであって、その双方のどちらの立場からも肩入れさせるということは、野球の試合の満塁の場面で「打って欲しい」と「抑えて欲しい」の両方の立場を、純粋に野球というスポーツを楽しむというような中立的な立場ではなく、あくまで贔屓チームの側にたって楽しませるのと同等に難しいと思えるからだ。そして、逃げる側と追う側双方の立場を立体的に描くことで逃亡劇そのものの全体的な構図を見せることこそが実は作品の「逃げる者は実は●●だ」というテーマそのものになっている。札幌、釧路、水戸、小山、横須賀、横浜、品川という街のロケーション、道路、鉄道、空港、港湾という移動手段、飲み屋街、駐車場、巨大病院、という舞台描写もどれも魅力的で楽しい。

  • 3ヶ月ぶりくらいに本を読んだ。
    やはり読書はいい。
    だけど最近、何が読みたいのか
    何を読んだらいいのか迷走してる。
    そんなことは置いといて...

    だいぶ前に予約していた本が順番回ってきた。
    それがこの「逃げる女」

    最初は素人の若い女を逮捕できないおマヌケな警察に苛立って読み進めたが
    どんどん
    「逃げろ」「よし!」と応援してた。
    が、話は面白くラストも良かったが
    なんとなくどの登場人物に感情移入できなかった。
    たぶんどの人もみんな強い人(精神的に)ばかりだったからだと思う。

  • 警察がマヌケなのか、逃亡犯が冴えすぎているのか。札幌でフリージャーナリスト殺人事件発生。現場にいたらしい麻美という女性が指名手配される。警察が総動員して麻美を追うも、麻美は必死で逃げて逃げ切る。麻美が逃亡する真の理由とは。麻美があっちこっち移動するせいか、ロードノベルの風情が漂うなかなかスリリングな物語だった。麻美サイドと警察サイドの両視点があるので飽きずに読めた。キャラとしては警官の直子が良かった。たどり着いた真相は歯ぎしりして壁を殴りたくなるようなやるせない思いで胸がいっぱい。

  • おもろい。初めから追われる側の立場も描くのは斬新。この作家はまった。

  • 一気に完読。

    逃げる女を追う警察、ここまで徹底して捜査するのかと驚いた。ただの殺人事件ではなく、大きな背景があった。殺された男性が以前に友人に何気に渡したお土産から、警察が主要人物の関係性を見つけるのも凄かった。最後の方の展開も凄くて、よくできている作品だなと感心した。

    日米合同委員会の存在は以前に聞いたことがあったが、改めて日本は独立国家に見えて、いまだにアメリカの属国のようなものなんだなと虚しく思った。生方や桐山のような矜持のある刑事も簡単に処理されてしまうのが恐ろしい。

  • とある殺人事件の容疑者として逮捕寸前だった女が逃げた。そこから始まる手に汗握る逃亡劇。
    ぎりぎりのところで追手をかわし続ける女。追い続ける刑事二人。
    一見、ただ罪から逃れようとしている女。だけど彼女には逃げ続けなければならなかった。とある目的のために。
    って、読みながらどんどん逃げる女に惹かれていく。彼女が抱える秘密にとらわれていく自分がいる。
    追う意味と追われる理由。最後に示される真実、それでも終わらない事件。
    もやもやとした苦みが残る。最後のページを読んだ後、やり場のない怒りに震えた。

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