さんず

著者 :
  • 小学館
3.13
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本棚登録 : 317
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866507

作品紹介・あらすじ

さんずが死にきれない者の背中に忍び寄る 彼らは三途の川の渡し守ーーー自殺幇助業者<さんず>が死にきれない者たちの背中にそっと忍び寄る。第13回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作家・降田天が描く限界突破ミステリー。生きづらさを抱える人々の背景にある壮絶なドラマを抉り出す。(ストーリー)<さんず>の専用ホームページに出てくる二つのコース、「よりそいプラン」と「もろともプラン」。申し込みの際、いずれかのプランを選ぶと<さんず>に導かれ、思いがけない結末へと誘われる。●店長のパワハラ・セクハラに心を壊されたコンビニ店員の末路は●刑務所に収監されている男を思い続ける女の選んだ道は●ある富豪から蝶のコレクションの譲渡先を見つけて欲しいと依頼が入り・・・●さびれた居酒屋店主が借金を苦に・・・・●赴任先の学校で、上司の玩具にされた女性教師が追い詰められて・・・・連作短編全5篇。死を望む者の最後の砦<さんず>を通して、生きることの意味を問う。 【編集担当からのおすすめ情報】 「このミス」大賞受賞、推理作家協会賞受賞など数々の受賞歴で大注目の作家・降田天氏が満を持して世に送り出す限界突破ミステリー。数々のミステリー作品を発表してきた降田氏が、今回テーマに掲げたのは「自ら死を望む人」。冒頭からちりばめられた伏線と最終話で明かされる<さんず>の真実。読み出したら止まらないこと必至!是非ご覧ください。

感想・レビュー・書評

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  • フィクションだから面白く読めたが、随分とタブーに踏み込んだ作品だ。

  • 連作短編小説。死にたい人をピンポイントで選び、名刺を渡す有限会社さんず。自殺幇助会社だ。そこの社員若手のスガと、スーツのカトウが顧客対応をしていく。社長は老婦人。かつては大物フィクサーの愛人だったという彼女は、人が死ぬ瞬間が見たいらしい。

    第一話。コンビニ店長の野中。アルバイトの笹岡は売れない女優で、最近ミスが多く、怒ることもしばしばだった。ある日、笹岡は自殺未遂をし、その責任を問われそうな野中も精神を病み、自殺を考え、さんずにたどり着く。死ぬ前に学生時代、自分をいじめていた相手に復讐したいと望むが、それは笹岡の不倫相手でもあった。笹岡が自殺を図ったのは、自分のせいではないと喜ぶ野中だが、それは笹岡がさんずに依頼した復讐計画であった。

    第二話。施設で育った久川一香。目をかけてくれた女性政治家中貫紘子の政治資金を調達するため、不正献金引き受けた。全部の責任を被り、死体が見つからないように死にたい。さんずに依頼するが、追ってもやってくる。それは口封じを狙った中貫の指示。久川は身分を変えて生き抜くことに決め、中貫は疲れて?死を選んだ。

    第三話。車椅子の西沢。数年で病のため呼吸が難しくなるため、死にたい。蝶の標本コレクターで、ドルーリーオオアゲハという毒蝶を食べて死にたい。また、蝶のコレクションを個人に譲りたいが、細かい条件があった。さんずが探しだした、なるべく条件に当てはまる男性は3名。そのうちの一名は、かつて西沢がドルーリー標本ほしさに殺害した男性の息子であった。西沢は、息子が持っていた本物のドルーリーを食べたかったのだった。

    第4話。居酒屋経営の伸明。経営が傾いている上に、夫婦揃ってパチンコ依存症で、膨大な借金を抱えている。債権者は森田。伸明、奈々がお世話になった人物でもある。伸明は自分の保険金で借金を返済するつもり。その前に子供の頃に出ていった母親が作ったプリンを食べたい。さんずは母親を探しだしたが、実はプリンに毒を入れ、心中するつもりだった。吹っ切れた伸明は自殺する。

    第5話。高校教員、佳織。同僚から性的暴行を受け続けている。さらにそれが生徒にも知られていることでさんずに連絡する。心残りは同級生の円小姫まどかさき。優しかった彼女が自殺した理由を知りたい。小姫はスガの双子の姉。小姫は人の死に強い関心を持っていた。カトウは悩む佳織とスガに自殺を勧めるが、二人はいきる道を選ぶ。実はさんずの本当の社長はカトウだった。

    全部が後味悪い作品だった。これまで作者の作品は面白かったのに残念。合わなかった一番の理由は女性への扱い、特に性的な表現が不快だったこと。そういう場面や設定が、ストーリー的に特別必要ではないと思われたのも好きではなかった。ストーリー展開も無駄にこね繰り回しているような感じでもたもたしていた。読むのがつらくて長く感じたせいもあるかもしれないが。さんずという会社の設定は面白かったので★2つ。別の作品に期待します。

  • 結局人間って行き詰った時の視界は前の壁しか見えないけど、何かの要因で上を見上げたら空が広がってるかも知れないし、救助ヘリが居るかも知れない、様々なまだ見えてない要素があると示唆してくれてる。

    後日談も少し気になる感じの余韻の残し方は流石だな。

  • 久しぶりに小説を読んだ。
    自殺幇助会社の話。
    この話を読んで希望が持てる訳ではなく
    特別不思議で面白い訳でもなく
    読み終わってどう感じたらいいのか分からない本

    でも少しの希望を感じる事は出来るのか
    人が生死を選択するのはほんの少しのキッカケ
    次第で、未来を選ぶのは自分だ‥的な?

  • 自殺幇助業者、その名は「さんず」。

    死にきれない者達の元に届くQRコードのみが印刷された名刺大の白いカード。
    そこにアクセスし、必要事項を入力すれば彼らはやって来る。

    スガとカトウと名乗る謎の男性二人組。
    自殺志願者の願いを叶える彼らは神か、それとも悪魔なのか。

    5話の物語には、それぞれ事情は異なるが、死にたくても死にきれない人達が登場する。

    人生に心残りがある人。
    生き辛さに苦しむ人。

    死と真っ向から対峙する事で、浮き彫りにされるのは、それまで自身ですら気付く事が出来なかった本当の気持ちだ。

    心の中の闇を炙り出す死小説。

  • 設定も内容も、漫画か深夜帯のドラマみたいだな〜と思いながら読み進めた。
    そうしたら、最後の方でカトウが「〈さんず〉が漫画だろ」と言って、なんだ自覚あるのかと、可笑しかった。

    面白くなったのは4話の終わりから5話だった。
    一話完結もののようで、最後にスガの物語を通じていろいろ明かされてまとめられている。

    私だったら自殺する前の心残りは何を依頼するだろう。
    私の自殺を妨げている事は何だろう。
    カトウならそれを見抜いてくれるのだろうか。
    〈さんず〉が目を付けてくれるほどには「死にたい」と思っていないのかもしれないな。

  • 自殺幇助の会社、さんず。話の展開が読めず、読み進めたら1日で読み終えてしまった。死ぬ自由もあっていいのかもしれないけど、やっぱりどこか歪んでる。死ぬこと考えずに済むのが1番いいよね。

  • 社長それは…って思ってたらやっぱりそうか。
    漫画だね。

  • 面白かったです。
    いやーな空気感で
    人の汚くて冷たくて恐ろしくて怖い一面を
    これでもかと見せられる。
    心の奥底にある死にたいという
    深層心理をわざわざ呼び起こさせ
    死に追いやる。
    いい気分で読める物語ではないけれど
    人怖な小説で面白かった。

  • 死にたい、だけれど自殺する踏ん切りがつかなくて悩む人のもとへ届けられる謎めいたカード。そこからアクセスできるのは、自殺幇助業者である「さんず」のホームページ。自死の妨げとなるものを取り払い、後押しをして見届けてくれる「よりそいプラン」と、自死を物理的に手助けする「もろともプラン」から成り立つサービスで、死にたい人たちは無事(?)自殺することができるのか、それとも……?
    自殺幇助業者の物語だけれど、もちろん自殺を賛美したり推奨するものではありません。しかしだからといって頑なに「自殺は絶対にダメ!」という物語でもなく、奇妙な優しさのようなものを感じました。そりゃあどうしても自力では解決できない問題があって、思い詰めた人は無理でしょうが。そうでない人ならこのように未練を取り除いてもらうだけで、前向きになれることもあるかもしれない。弱った人に寄り添ってくれるという意味では、案外とこのような仕事は悪くないのでは、と思ってしまいました。ただ、「さんず」が作られた理由がちょっとアレではあるのですが。それでもそんなに嫌な気分はしないなあ。
    お気に入りは第三話。死を前にして自分の大切なコレクションを譲り渡したい相手の条件を厳しく指定する富豪の謎が魅力的でした。前代未聞の自殺方法もインパクト大です。

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著者プロフィール

(ふるた・てん)プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)と執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、「女王はかえらない」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、同名義でのデビューを果たす。「小説 野性時代」掲載の「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同作を収録した短編集『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』を2019年に刊行した。他の著書に『匿名交叉』(文庫化に際して『彼女は戻らない』に改題)『すみれ屋敷の罪人』がある。

「2021年 『朝と夕の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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