十二月の辞書

著者 :
  • 小学館
3.49
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本棚登録 : 235
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866576

作品紹介・あらすじ

恋の記憶と本が織りなす傑作恋愛ミステリー AI研究者の南雲薫は、15年ぶりに、元恋人からの電話を受ける。彼女は“リセ”の名で活躍する人気イラストレータになっていた。銀行の頭取だった父親が亡くなり、私生児の彼女に遺されたのは、函館にある一軒の家。その家にあるはずの、父が描いた彼女のポートレイトを見つけてほしいと南雲は依頼される。現地に赴くと、そこはアトリエではなく“書庫”だった。南雲は学生の佐伯とともに絵を探し始める。綺麗に終われなかった恋の記憶と幾千の本が織りなす、切なくも驚きに満ちた恋愛ミステリー。『未必のマクベス』著者による傑作長編!他人の込み入った人生や恋愛についての小説を一心不乱に読むくらいには、僕の人生もまた込み入っているのだなと安心しました。――ASIAN KUNG-FU GENERATION 後藤正文(ミュージシャン)早瀬さんにしか書けない美しさ、透徹さを、わたしは愛している。――池澤春菜(声優) 【編集担当からのおすすめ情報】 新刊が待望される著者、8年ぶりの長編小説です。

感想・レビュー・書評

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  • Amazonの紹介より
    恋の記憶と本が織りなす傑作恋愛ミステリー
    AI研究者の南雲薫は、15年ぶりに、元恋人からの電話を受ける。彼女は“リセ”の名で活躍する人気イラストレータになっていた。銀行の頭取だった父親が亡くなり、私生児の彼女に遺されたのは、函館にある一軒の家。その家にあるはずの、父が描いた彼女のポートレイトを見つけてほしいと南雲は依頼される。現地に赴くと、そこはアトリエではなく“書庫”だった。南雲は学生の佐伯とともに絵を探し始める。
    綺麗に終われなかった恋の記憶と幾千の本が織りなす、切なくも驚きに満ちた恋愛ミステリー。
    『未必のマクベス』著者による傑作長編!



    大学内で聞くような難しい言葉の連続でしたが、表現が美しく、しっとりとした世界観にいるかのようでした。
    個人的には、表現がわかりづらく、なかなか頭の中で想像しにくかったのですが、独特だなという印象はありました。
    もう少し言葉を噛み砕いてもよかったのかなとも思いました。

    これはミステリー⁉︎といった疑問はあったのですが、大きな括りとしてはミステリーかと思います。
    良い意味で派手さというものはなく、むしろモノクロな風景を見ているかのような切なく静かで、言葉では表現できない色んな要素があって、不思議な感覚でした。

    絵はどこにあるのか?この作品での1番のテーマでしたが、正直複雑すぎる印象でした。もっとシンプルにズバッと表現してほしかったのですが、早瀬だからこそ表現できる描写・アイデアとも解釈できるので、より「大人」な小説を読みたい方には読んでいただきたいです。

  • 一応ミステリなのかな?
    理工系出身の作者によるこの手の蘊蓄ものは多くて、森博嗣とか伊予原新など十分に面白いんだけど、この作品の本筋の展開をぶった斬って語られる蘊蓄のくどさは本を投げ出したくなるレベル。これを楽しめるかどうかが評価の分かれ目だと思う。

    謎の答えが知りたくて最後まで読んだのに、肝心の謎もおじいさんにそんなことができるのか?という非現実的な結末でなんだかな〜な展開。
    ナガトだかナガサワだかいう農学部の教授の国家機密とかいう秘密も結局何だったん?だし、主人公のこじれた恋愛感情や研究者としての鬱屈もなんだか暗い印象で読後もスッキリしない。シリーズものらしいから前作を読めばその辺がスッキリするのかもしれないけど。

    「未必のマクベス」は良かったのにな〜

  • 良い恋愛小説を読んだなぁと思う、しみじみとした読後感。
    肖像画を探している。無い。どこ?難しい。
    深島桜との圧迫面談で一気にわかる事が増え面白くなる。会話が研ぎ澄まされていた。
    「学校には運命の人が待っている。」伏線がすごい。不登校のアドバイス。1人好きな人を見つけてその人だけを見ているというこのエピソード好き。
    どうして人は合理的に行動しないのだろう?なぜ心にもない言葉が口から出てしまったのか?を考えるのが南雲さんの仕事。
    調べたくなる語彙がたくさん出てきて、
    ゆっくりゆっくり文字を辿るように読んだ。
    良かった。
    登場人物がみんな印象的。
    映画化されそう。
    素敵な話だった。

  • 北海道の大学の研究者南雲は、昔の彼女栗山(現在は売れっ子イラストレーター)から15年ぶりに電話を受ける。彼女の実の父親が死んだ、彼が残した彼女の絵を、彼が残した家の中から探して欲しいとの依頼をされる。

    面白い箇所も多いけれど、ひっかかる表現が多く、読むのに時間がかかってしまった。様々な蘊蓄がありそれは良いのだけれど、絵を隠す動機や、その絵を本人に見せようとしない動機など、人間の心理にあまりリアリティを感じられなかった。

  • 読売新聞12月20日書評掲載
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50306834

  • 理系なSF。SFの推理物。

    南雲さんが登場してて、あ…これは以前の作品にも出たあの方だ、と。淡々としているけれどその味わいは個人的に好みです。文系なのでWiki引きまくりでしたが、それはそれで好き。カッコ書きの南雲の独白も。遺産相続を絡めていて厄介なんだけれど、婚外子やら藤野や長澤が引っ掻き回すけれど、何だかんだ南雲は愛されているなぁ。上司にも教え子にも揶揄われてるけれど憎めなくて。まったり進むのに最後との畳み掛けが勢いがあって素敵。終雪との切なさ、静かに終わる。年始にすてきで穏やかな本を読めて良かったです。

  • 読みはじめてすぐに既視感。それを抱いたまま読み終え、最終ページに、S-Fマガジンに以前掲載の「十二月の辞書」が原案とあり、納得。村上春樹の「蛍」と「ノルウェイの森」の関係のように、短編を題材に長編でよりくわしく書かれた一作。「グリフォンズ・ガーデン」「プラネタリウムの外側」をつなぐミッシング・リンクがより鮮やかに浮かび上がる。やたらと南雲の悪態的な言い出したいけどいえないカッコ書きのモノローグが多いのと、佐伯の不安定で無礼と親しみとそっけなさとわがままをはげしく行き来する様、そんなふたりの関係性の振幅に興味をひかれた。短編のときにも思ったけど、頭のなかの画像をこんな面倒な方法で辞書にこめられるなんて、いったいどんな精緻な計算能力と美的感覚なのだろうかということに思いを馳せた。影響されて、ウィトゲンシュタイン「反哲学的断章」を手に取りたくなった。◆◆藤野には、頼んでもいないことを「してあげる」癖がある。p.19◆「南雲君、いま、ディシジョンツリーを全部計算しなかったでしょ」p.31◆三人とも自分の名前で仕事をしている。必要経費とMan×Monthでしか測れない作業の報酬に、自分の署名を入れることで付加価値を上乗せしている。p.65◆「秘密っていのうは、秘密が存在することを漏らした時点で、その半分は明かされたようなものなんだよ」p.238◆南雲は、ユーミンを聴きながら、神様の隠した定理を見つけることや、神様と同じものを作ろうとする行為の愚かしさに対して、ため息をついた。p.267◆君のお父さんは光を閉じ込める箱を作っていたんだ。p.304◆

  • 登場人物たちの“ジャマくさい”会話と作者の“ジャマくさい”表現を、ニコニコしながら読み進めました。
    描かれるのは、“悪い人”が一人もいない、それぞれがそれぞれの立ち位置でそれぞれの愛の形を探すラブストーリー…。
    各章内の♯と♭の人称と時制の使い分けも丁寧でした。

  • ぶっ通しで深夜に読了しました。15年前の「約束」から新し「約束」に昇華する物語に感動しました。私のこれまでの人生で果たせなかった約束の数々を思い浮かべてしまいました。佐伯さん可愛い!

  • 相変わらずの複雑な構成ながら、ストーリーが柔らかいぶん、焦らずゆったりと読める。
    登場人物たちも、みな思慮深い。
    とても心休まる書でした。
    『グリフォンズ・ガーデン』『プラネタリウムの外側』を近いうちに再読しよう。

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