負けくらべ

著者 :
  • 小学館
3.32
  • (4)
  • (8)
  • (17)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 122
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866958

作品紹介・あらすじ

伝説のハードボイルド作家、渾身の現代長編 初老の介護士・三谷孝は、対人関係能力、調整力、空間認識力、記憶力に極めて秀でており、誰もが匙を投げた認知症患者の心を次々と開いてきた。ギフテッドであり、、内閣情報調査室に協力する顔を持つ三谷に惹かれたのが、ハーバード大卒のIT起業家・大河内牟禮で、二人の交流が始まる。大河内が経営するベンチャー企業は、牟禮の母・尾上鈴子がオーナーを務める東輝グループの傘下にある。尾上一族との軛を断ち切り、グローバル企業を立ち上げたい牟禮の前に、莫大な富を持ち90歳をこえてなお采配をふるう鈴子が立ちはだかる。牟禮をサポートする三谷も、金と欲に塗れた人間たちの抗争に巻き込まれてゆく。それぞれの戦いの結末は!?ギフテッドの介護士は、徹頭徹尾、人の心に寄り添える。 【編集担当からのおすすめ情報】 伝説のハードボイルド作家86歳、19年ぶりの現代長編!「さりげなさが、なぜこれほど心に食いこんでくるのだろう。人生の逆説が行間に浮かびあがり、私はその衝撃にしばしば足を停めた」――北方謙三氏「主人公はどこまでもごくつましく、声もひそかに生きる、われらが隣人である。その彼の『平凡さ』を特異な資質とみなす『時代』との摩擦、相剋が、この作品でもあらためて語られるのだ、とまでは明かしてしまってもいいだろうか。志水辰夫待望の新作、待った読者を裏切らない現代小説である」――佐々木譲氏「作家には、円熟という果実を産み落とすことのできる豊穣な場所、境地が存在するのだということを、本書によって知ることができた。後からゆく同業者として、なんともありがたい本に出会えたことを、深く感謝したい」――夢枕獏氏「老いることの哀しみ、恐怖、そして救い。志水辰夫(シミタツ)シルバーハードボイルドを堪能した」――大沢在昌氏「シミタツ節健在なり! 志水辰夫の現代を舞台にした小説をもう一度読めるとは、これ以上の至福はない。舐めるように読んで堪能した」――馳星周氏

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 北方謙三、大沢在昌、馳星周らが絶賛!
    80オーバーの高齢でこの迫力!素晴らしい!!
    ヨカッタですよ~

  • 志水辰夫氏は86歳か。
    そんなお歳なのに頑張って書いたんだな、と思いながら読んだ。
    氏の公式HP「きのうの話」はずいぶん前から読んでいる。年齢を重ねて体力的き苦労されている様子がうかがわれていたが、こんな長編をよくぞ書き上げたなと。
    一気に読み終えてしまったが機会があればもう一度じっくり読んでみたいと思った。

    作品紹介・あらすじ
    伝説のハードボイルド作家、渾身の現代長編 初老の介護士・三谷孝は、対人関係能力、調整力、空間認識力、記憶力に極めて秀でており、誰もが匙を投げた認知症患者の心を次々と開いてきた。ギフテッドであり、、内閣情報調査室に協力する顔を持つ三谷に惹かれたのが、ハーバード大卒のIT起業家・大河内牟禮で、二人の交流が始まる。大河内が経営するベンチャー企業は、牟禮の母・尾上鈴子がオーナーを務める東輝グループの傘下にある。尾上一族との軛を断ち切り、グローバル企業を立ち上げたい牟禮の前に、莫大な富を持ち90歳をこえてなお采配をふるう鈴子が立ちはだかる。牟禮をサポートする三谷も、金と欲に塗れた人間たちの抗争に巻き込まれてゆく。それぞれの戦いの結末は!?ギフテッドの介護士は、徹頭徹尾、人の心に寄り添える。 【編集担当からのおすすめ情報】 伝説のハードボイルド作家86歳、19年ぶりの現代長編!「さりげなさが、なぜこれほど心に食いこんでくるのだろう。人生の逆説が行間に浮かびあがり、私はその衝撃にしばしば足を停めた」――北方謙三氏「主人公はどこまでもごくつましく、声もひそかに生きる、われらが隣人である。その彼の『平凡さ』を特異な資質とみなす『時代』との摩擦、相剋が、この作品でもあらためて語られるのだ、とまでは明かしてしまってもいいだろうか。志水辰夫待望の新作、待った読者を裏切らない現代小説である」――佐々木譲氏「作家には、円熟という果実を産み落とすことのできる豊穣な場所、境地が存在するのだということを、本書によって知ることができた。後からゆく同業者として、なんともありがたい本に出会えたことを、深く感謝したい」――夢枕獏氏「老いることの哀しみ、恐怖、そして救い。志水辰夫(シミタツ)シルバーハードボイルドを堪能した」――大沢在昌氏「シミタツ節健在なり! 志水辰夫の現代を舞台にした小説をもう一度読めるとは、これ以上の至福はない。舐めるように読んで堪能した」――馳星周氏

  •  読み終わった後もいつまでも残る作品だ。熾火のようなものが心に残り、その後しばらくしても存在を示してゆく。もしかしたら、こちら読者側の思い入れかもしれない。志水辰夫の現代小説にかつて夢中になり、作品を貪り、全作を熱い想いで読んできた自分史ということから来る極めて個人的なほとぼりのようなものなのかもしれない。

     ぼくは1990年代を軸にインターネットの前身でもあるパソコン通信Nifty-Serveで冒険小説&ハードボイルドフォーラムを主宰していた。国産小説では、特に冒険小説が多く書かれ、読まれた時代で、船戸与一、佐々木譲などとともに、志水辰夫は代表的な冒険小説作家でもあった。とにかく途轍もない人気を誇る作家で、名うての読書子たちからの尊敬を勝ち得て止まなかった。一つには確かな文章力と日本語による国産ハードボイルドという文学性でも勝負できる作家であった。数ある賞をいくつももぎ取った作家である。

     21世紀に入ってからは時代小説に活躍の場を移したが、およそ20年ぶりに我らのジャンルにこの作家が還ってきてくれた。記録によれば1936年生まれだから今現在、88歳の年齢のはずである。それなのに本書を読むと、古びたところなどいささかもなく、現代ならではの状況をこれでもかとばかりに用意し、現代のスマホ、ネット、また株式、会社経営などのバックボーンを取り揃えて驚くほどリアルに作品を展開させている。志水辰夫がいささかも錆びることなく現在に輝き続けていることをこの作品で確認してどれほど驚かされたことだろうか。

     しかもスケール感も一層膨れ上がっている。作品から類推される志水辰夫の過ごした時間の濃密さは、驚愕に値する。序章で、主人公三谷の表と裏の職業が驚くべき事件とともに記述される。一気に読者を引き寄せる小手調べのようなトラップ。継いで、舞台は自然の豊かな里山に移る。ここで偶然、ある会社の敷地に迷い来み、財団のトップである大河内と出会うことになる。本作のストーリーは、この出会いからスタートすると言って良い。

     大きな企業グループの中での権力闘争に巻き込まれた主人公三谷は、多くの心理的特殊性を持ち、企業側からその特殊能力を買われ、
    本業である介護職に従事しながら危険な都市での国際的企業戦争に巻き込まれることになる。スケールも大きいが一介の介護職員である初老の主人公というところが、シミタツらしく今も変わらない。

     シミタツの主人公は大抵、大変な闘争や暴力に巻き込まれては、追いつめられる状況を、気力の強さとなけなしの体力とで覆してゆく。そして意志の強さとぼろぼろの肉体で最後に独り戦場に残る。その構図が、今も変わらないだろうかと冷や冷やさせられながら手に汗握りページを繰る時間。ああ、これがシミタツ節なんだよ。わかっていながらページを繰る手に力が入る。

     あの幸せな時間がまた戻ってきたのだ。信じ難いが御年88歳にならんとする作家の手で、こんな作品がしっかりと現代の読者たちのもとに戻って来たのだ。耐えて耐えて、また耐えて、最後に爆発するこの構図にかつていくたび心を揺すられただろうか。そして今も、この作家は凡百の推理作家などではなく、ヒューマンな冒険小説のタフな書き手であるのだ。シミタツよ、未だ行ける。もう一作。そして可能ならばさらにもう一作を!

  • もう読めないだろうと勝手に高を括っていたシミタツの新作。
    そして題名や装丁からしみじみとした過去を振り返るような作品なんだろうと思いましたが、しっかりハードボイルド小説になっていたのでびっくりしました。
    登場人物の登場人物の年齢層が高くなっていましたが、しっかりとギラっとした所が有る小説に仕上がっています。

  • 志水辰夫待ちに待った19年ぶりの新作、読んで作品『行きずりの街』以来かもしれない。介護士三谷の意外性のある活躍にヒーロー的存在を感じた。ラストのハードボイルド感はすごかったです。ハードボイルド健在の作品に乾杯。久々の新作にぜひあなたも堪能して下さい。

  • <奇>

    これまた本の雑誌社の杉江営業部長のつぶやき(どこで,何とつぶやいたかを詳らかに覚えているわけではないが。すまぬ。)をたまたま読んだことから始まってこの本を読むに至った次第である。なんでも レジェント級であるこの作者20年近くぶりの渾身作らしい・・・と杉江君はたしか言ってた,と朧げに思うw。

    

 という動機で読み始めた本書であるが,なんとも 変わった作風と雰囲気を持った小説である。おくづけを読むと第7節までは割と最近どこかの月刊小説誌に載ったものらしい。で第8節以降は速攻で書下ろし。7節のラストページでは特に掲載の終わりとしてなにがしの締めくくりをした様にはなっていない。なぜここで終わったのかちょっと気になる。
    
 まあ雑誌やネットの連載なんて それこそいろんな事情で突然打ち切りになる事は枚挙にいとまがないのでこれ以上追及するのはやめる。が,気になるのはその第8章以降で物語の雰囲気がガラリと変わった印象を受けること。

    

 作者は ”〇〇冒険小説大賞” という類の賞を何度か獲った事があるみたいだけれど,この物語は最後半の部分を除くと断じて冒険小説などではない。じゃあ何なのだ と云われると僕も困る。経済小説の様な親族相続争いストーリーの様な・・・なんだかホントによく分からない小説なのであった。

    

 更に凄く特徴的な事が本作にはある。出てくる人々がことごとく70歳代なのだ。これは作者が既に86歳だと云う事が大きく影響しているとは思うが,70歳だからってその人物の言動が年寄りじみている事は一切なく,普通に行動してしゃべって なんなら少しハードな事も物語の中でこなしている・・・しかしこの人達の年齢設定は70歳代なのだ。今時の70歳はそんなモノかも知れないなぁ,と僕は無理やり自分を納得させようとはする。物語上新たな登場人物が現れるたびに作者はその人物の年齢を詳らかにする。そしてことごとくこれでもか!とみんな70歳代なのだ。

    

 言い方を変えると,作者は70歳代の登場人物ばかりで構成されるこの物語に何の違和感も持ってはいないのだろう。でも現在64歳の僕に言わせると「え!?この人70歳超えてるのに,こんな生活と行動してんの!?」である。【ネタバレ注意】ラストで主人公が捕らわれの身になった時の行動。主人公男性の正確な年齢は記されていないと思うが,前半にある生い立ちの説明などから推すると若くとも60歳代中盤だと思しい。でもまるで30~40歳代の様な体力/行動力である。普通ないよ じいさんがこんなにハードボイルドする物語。

    根が天邪鬼な僕はいつもこんな感想ばかり書いている。で,本作とてもへんてこな小説ではありますがかなり面白く読み応えがあって,一旦ストーリーに入り込むと凄く良いテンポで読み進められる本です。是非皆様も読んでみてくださいませ。しかし 本の雑誌の杉江部長は一体にこの本のどこを具体的に気に入って面白い!と思ったのだろう。とてもそこが気になる。あ,高言すまなかった。

  • 確かに凄い作家さんだった記憶がある。久々の新刊に飛び付いた。
    60半ばの介護士が主人公。ギフテッドつ呼ばれる特殊能力を持ってたから仕事には困らないが、それを利用した政治中枢からの依頼もうけている。と始まるが、うーん、期待してただけに少し残念。

  • 御年86歳の著者の、なんと19年振りの現代長篇小説である。最近の時代小説はあまり読んでいないけれど、デビュー作からほぼリアルタイムで追ってきた身として“読まずに死ねるか!”(笑)
    期待しながらページを捲るが、うーん、乗れない……。主人公の三谷は65歳の介護士で、特殊な能力をもつ“ギフテッド”だ。あるきっかけで知り合った起業家と関わりを深める中、様々な思惑をもつきな臭い連中が現れ……。三谷は狂言回しで、彼が動かなければ話は進まないが、特殊能力はいらなくない?と思ってしまう。話自体も何が主題なのか曖昧な印象だった。

  • 主人公となる初老の介護士・三谷孝はギフテッドと見做され、高い知能や特定の分野で優れた才能を発揮していた。
    対人関係、調整力、記憶力などが秀でていて、介護士としての能力にも大いに貢献していた。
    その能力を評価され、内閣情報調査室に協力する顔をも擁する三谷は、ハーバード大卒のIT起業家・大河内牟禮から声を掛けられ、後に二人の親密な交流が始まる。
    大河内が経営するベンチャー企業は、母親の尾上玲子が率いる巨大企業・東輝グループの傘下にあった。
    大河内は自らの意志でグローバル企業を立ち上げたいのだが、玲子は大河内の勝手な行動の前に立ち塞がり、暴力を含めての妨害に出る。
    大河内をサポートする三谷も、金杯主義に塗れた輩からのトラブルに巻き込まれてゆく。
    そして三谷は妨害者から誘拐・監禁され、大河内に協力した恨みつらみを一身に背負って命を狙われるのだが、そこからの脱出劇が、まさにシミタツ節で綴られるのだ。
    危機迫る様子が美しい散文詩で謳うように描かれ、リアルに三谷の脱出の光景が浮かんでくる。
    この緊迫感が、志水辰夫氏が綴るハードボイルドの真骨頂となる。
    現代版のシミタツ節を19年待っていた甲斐があったというものだ。

  • タイトルと主人公の職業から、人生の終焉を迎えようとする人たちの、その長い年月への回顧と後悔を人情にまぶして語るシブい小説なのか、なんて思っていたら、なんとなんとなんとなんと!!
    いや、まさかこんな極め付きのハードボイルド小説だったとは!!

    特異な才能を持つ初老の介護士の男と、ITベンチャー企業の社長。ひょんなことで知り合った二人の、出会いから始まる怒涛の展開。
    後半は先が気になり一気読み。心臓に悪いわ。
    いやぁ、人生って一筋縄ではいかないものですな。

全19件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1936年、高知県生まれ。雑誌のライターなどを経て、81年『飢えて狼』で小説家デビュー。86年『背いて故郷』で日本推理作家協会賞、91年『行きずりの街』で日本冒険小説協会大賞、2001年『きのうの空』で柴田錬三郎賞を受賞。2007年、初の時代小説『青に候』刊行、以降、『みのたけの春』(2008年 集英社)『つばくろ越え』(2009年 新潮社)『引かれ者でござい蓬莱屋帳外控』(2010年 新潮社)『夜去り川』(2011年 文藝春秋)『待ち伏せ街道 蓬莱屋帳外控』(2011年新潮社)と時代小説の刊行が続く。

「2019年 『疾れ、新蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

志水辰夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×