喫茶おじさん

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 2007
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866965

作品紹介・あらすじ

人生もコーヒーも、苦いけれどうまい。 松尾純一郎、バツイチ、57歳。大手ゼネコンを早期退職し、現在無職。妻子はあるが、大学二年生の娘・亜里砂が暮らすアパートへ妻の亜希子が移り住んで約半年、現在は別居中だ。再就職のあてはないし、これといった趣味もない。ふらりと入った喫茶店で、コーヒーとタマゴサンドを味わい、せっかくだからもう一軒と歩きながら思いついた。趣味は「喫茶店、それも純喫茶巡り」にしよう。東銀座、新橋、学芸大学、アメ横、渋谷、池袋、京都──「おいしいなあ」「この味、この味」コーヒーとその店の看板の味を楽しみながら各地を巡る純一郎だが、苦い過去を抱えていた。妻の反対を押し切り、退職金を使って始めた喫茶店を半年で潰していたのだ。仕事、老後、家族関係……。たくさんの問題を抱えながら、今日も純一郎は純喫茶を訪ねる。『三千円の使いかた』で大ブレイクの著者が描く、グルメ×老後×働き方!

感想・レビュー・書評

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  • 『あなたって本当に何もわかってないのね』

    あなたは、そんな風に言われたことはないでしょうか?

    この世を生きていく中では、他人の人生と自分の人生を比べてしまうことはよくあると思います。自分だって一生懸命に頑張っているはずがどうも上手くいかない、自分はついていない、そんな風に思うことも多々あると思います。

    また、思いやりの気持ちから色々と言ってあげたことが却って反発を招き裏目に出る…そういったこともあると思います。他人の心の中が見えない以上これもなかなか難しいものだと思います。

    そうです。他者との関わりなしには生きていけない毎日を送る私たちだからこそ、そこにはその関係性を維持する中に悩みが生じてしまう。それが私たちの人生なのだと思います。

    さてここに、身近な人から『あなたって本当に何もわかってないのね』という言葉を投げかけられた主人公を描く物語があります。そんな言葉に戸惑いを覚える主人公が描かれるこの作品。そんな戸惑いの中に『喫茶店』で過ごす時間に安らぎを見出す主人公を見るこの作品。そしてそれは、”人生はままならないが、コーヒーは今日もうまい”とコーヒーカップを手にする主人公を描く物語です。
    
    『このブレンドに使われているのはアラビカ種の豆ですか』、『豆の状態はニュークロップ』、『焙煎は浅煎り…いや、中煎りかな』と矢継ぎ早に『初老のマスター』に話しかけるのは『カウンターでブレンドコーヒーをすす』る松尾純一郎。『コーヒー、大好きなんですよね。自分でもよく淹れるんですよ…』と続ける松尾を『「店長、ちょっと」と店の女の子が呼』びます。やむなく話を止め、勘定を払って外に出た松尾ですが、トイレを借りたくなって再び店のドアを少し開けたところ、店内から女性店員の声が聞こえます。『…店長、よく、あんな知ったかぶり客の相手してられますよね』、『店長が優しいからつけ上がるんですよ』。それを聞いて『純一郎はそっとドアを閉め』ました。『男の人生というのは、理想的な喫茶店を探す旅ではないか』と思う五十七歳の松尾は『有楽町線にするか。銀座方面にも月島にも行けるし』と『勢いで電車に乗』ります。そして、『自分の顔が真っ暗な窓に映っている』のを見て、『車内のどんな人よりも、よりどころのない顔をしていると思』います。『お父さんって、本当に何もわかってない』と『昨夜、数ヶ月ぶりに一緒にコーヒーを飲んだ娘の亜里砂に言われた』松尾。『大学二年生、あと、二ヶ月とちょっとで三年生になる』という娘との会話を思い出す松尾は、就職活動の話を穏やかにしていた中に、『いつの間にか、雲行きがあやしくな』り、『お父さんって、本当に何もわかってない』と言われ、『まるで意味がわからな』いという思いの中にいます。そして、銀座一丁目の駅で降りた松尾は『さあ、どこに行くかな』と、『あてどもなく歩き出』した時、『前からテレビや雑誌で取り上げられている』『緑地に白で「SANDWICH」と抜かれているひさし』の店にたどり着きます。『初めての店は少しドキドキする』という中、店に入り、『壁際の一人がけの席に案内され』た松尾は、『ブレンド、アメリカン、カフェ・オ・レ、ミルクティーなど』のドリンクと、『タマゴサンド、ハムサンド…』という『名物のサンドイッチ』がメニューに並んでいるのを見ます。そして、『ブレンドとタマゴサンドを』と注文した松尾の元に『お待たせしました』と『サンドイッチとコーヒーが運ばれてき』ました。『食パン一斤をまるまる使ったサンドイッチ。一つが一斤を半分に切った大きさで、たっぷりタマゴのペーストが挟まり、それが二つ皿に並んでいる』という目の前の品を見てその大きさに『うわ』と『小さな声』を漏らした松尾。『パンの端をちぎって、ペーストをのせ、オープンサンド形式で食べ』はじめた松尾は、『うまいなあ』とその味に素直に感動します。そして、『カップはブルーアンドホワイトの大きめの磁器』という『ブレンドコーヒーを一口すする』と、『さっぱりめの少し酸味のある味が口に広がる』感覚に『さすがだなあ、とまた心の中でつぶや』きます。『喫茶店巡りというのはいい趣味ではないか、とふと思』う松尾は、『これから、趣味は「喫茶店、それも純喫茶巡り」にしよう。決めた。今決めた』と考えます。そんな中に『お父さんって、本当に何もわかってない』と娘に言われたことを再び思い出す松尾。そんな松尾が都内各所の喫茶店を巡る中に自身の生き方を見直すきっかけを見つけていく物語が描かれていきます。

    “2023年10月12日に刊行された原田ひ香さんの最新作であるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2023年7月に瀬尾まいこさん「私たちの世代は」、8月に寺地はるなさん「私たちに翼はいらない」、そして先月にも青山美智子さん「リカバリー・カバヒコ」…と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを積極的に行ってきました。そんな中に、絶品の”食”の描写で読者の食欲を刺激してくださる原田ひ香さんの新作が出ることを知り、食べたい気持ちが抑えられなくなった私は発売日早々にこの作品を手にしました。

    そんなこの作品は、”松尾純一郎、バツイチ、57歳。大手ゼネコンを早期退職し、現在無職。妻子はあるが、大学二年生の娘・亜里砂が暮らすアパートへ妻の亜希子が移り住んで約半年、現在は別居中…仕事、老後、家族関係…。たくさんの問題を抱えながら、今日も純一郎は純喫茶を訪ねる”と内容紹介にうたわれています。原田ひ香さんというと代表作でシリーズ化もされている「ランチ酒」の他、前作の「古本食堂」でも”食”を全編にわたって取り上げられるなど、”食”を小説に織り込んでいく手腕に定評のある方です。そんな原田さんがこの作品で描かれるのは、お店を『喫茶店』に絞った上で、そんなお店で提供されている飲み物と食事の風景です。この作品では恐らくモデルとなる店はそれぞれある一方で、店名は記さないという「ランチ酒」シリーズと同じ方法をとっているのも特徴のひとつです。

    では、そんな”食”の描写をご紹介しましょう。この作品では都内の駅の名前が各章に記されます。そんな中から〈四月 午後五時の東京駅〉で『百貨店の中に』ある『京都が本店の老舗喫茶店』を訪れる場面をご紹介しましょう。『窓際のカウンター席に案内された』松尾はメニューを開きふとこんなことを思い出します。

    『確か、この店は池波正太郎のエッセイの中にも出てくるんだよな。サンドウィッチを抱えて列車に乗り込む、と』。

    これで、このお店があの有名店のことを指していることがわかります。(ご存知でない方は、”東京駅 喫茶店 池波正太郎”で検索してみましょう!) 松尾はメニューの中から『「ビーフカツサンド」に目をひかれ』ます。

    『少し高いけれど、これも池波先生が食べた味だ。やってみるか』、『ビーフカツサンドと…ブレンドコーヒーで』

    オーダーした松尾の前に注文した品が運ばれてきます。そして、コーヒーを一口飲む松尾。

    『いそいそと、コーヒーを一口。香ばしいコーヒーにまったりとしたクリーム、そして、ほのかな甘み』、『なるほど。京都の旦那衆が好むのはこの味なのか。確かに、飲みやすくておいしいし、癖になるのがわかる』。

    納得感を得ながらコーヒーを飲む松尾は、『とはいえ、主役はやっぱり、ビーフカツサンドだ』と”食”に向かいます。

    『厚みがあるビーフカツは中心が赤い。四切れのサンドウィッチが並ぶ上に、厚みのある、一口大のベーコンがのっている。まずはそれを口に入れる』。

    写真があるわけでもイラストが添えられているわけでもない中に、文字の表現だけで読者の食欲を刺激する原田さん。

    『うわっ。何これ、おいしい。すごくちゃんと燻製されている。これだけでビールも飲めそうだ』。

    …といった松尾の心の声でその美味しさを視覚を通じて読者の味覚に直接訴えます。これはたまりません。

    『肉が柔らかく、意外とソースがあっさりめ。これがまた、ちょうどよい。濃かったら、ビールにはよくても、コーヒーとは喧嘩したかもしれないし、これなら肉の旨味が感じられる』という中

    『ああ、おいしいなあ』。

    そんな風にしみじみ思う松尾の心の声には読者もメロメロになってしまいます。これは東京駅に行くしかない。某百貨店のあの喫茶店に行くしかない!そんな風に思わせる素晴らしい”食”の場面だと思いました。この作品では、『新橋』、『学芸大学』、そして『谷中』と章ごとに都内のさまざまな場所へ赴く松尾の姿が描かれていきます。そんな松尾の足取りは原田さんご自身が取材されたはずの行程でもあり、”食”で魅せる物語を生み出される原田さんの地道な”食”を巡られる日々を感じました。「ランチ酒」と同じ形式で、リアル世界に実在する店を店名を出さないで描写していくというこの作品。”食”のガイドブックとしても利用したくなるそんな作品だと思いました。

    さて、そんなこの作品は松尾純一郎という五十七歳の男性が一貫して主人公を務めます。彼の心の内がさまざまに吐露されていくこの作品。松尾という人物についてまとめておきましょう。

    ● 松尾純一郎について
    ・五十七歳
    ・社内不倫のすえ、三十の時に離婚、前妻・登美子
    ・妻・亜希子は、一人暮らしをしている大学生の娘・亜里砂の元へ、別居中
    ・大手ゼネコンを希望退職し、五千万円の退職金を元手に、妻と娘の反対を押し切って喫茶店を始めるも半年で閉店に追い込まれる
    ・周囲の人たちから『何もわかってないのね』と言われるが、その意味をはかりかねている

    おおよそのイメージがお分かりいただけたでしょうか?『社内不倫のすえ、三十の時に離婚』という経験が一般的とは思いませんが、他はそれなりに似たような人生を送られている方はいらっしゃりそうです。この作品にはそんな松尾が、”仕事、老後、家族関係…。たくさんの問題を抱えながら、今日も純一郎は純喫茶を訪ねる”という様子が描かれていきます。

    主人公となる五十七歳の松尾は『退職したい、そして、喫茶店を始めたい』という『突拍子もない願い』を妻に伝えるも『絶対に許さない』と反対されます。それを押し切るように大手ゼネコンを早期退職し、退職金を元手に喫茶店を開くも半年をもたずに店じまいに追い込まれてしまった松尾。退職金の多くを失い、妻や娘の信頼も失ってしまい困惑の日々を送る松尾。しかし、そんな松尾は親しくする人たちからこんな風につぶやかれます。

    ・『お父さんって、本当に何もわかってない』

    ・『あなたは相変わらず、何もわかっていない人なんですねえ』

    ・『お前は本当に、何もわかってないんだなあ』

    松尾のことをマイナス感情で見る人たちではなく、あくまで松尾に寄り添い、支えてくれる側、松尾の味方とも言える人たちからの言葉に松尾は困惑していきます。人間というものは何年生きてもなかなか自分自身を冷静に見ることができない生き物だと思います。他人のアラは見えてもまさか自分が他人から何かを指摘されるようには考えないのだと思います。この作品の主人公である松尾も自ら良かれと思ってとった行動が、良かれと思ってあれこれ考える事ごとがことごとく裏目に出てばかりという日々を送っています。そんな中に、『何もわかっていない』という言葉はある意味一番辛辣だとさえ言えます。しかもそんな言葉を発した面々はその言葉の真意を語ってくれるわけでもありません。この作品では、そんな困惑の先に松尾がそれでも歩いていく他ない人生が描かれていきます。

    『これだ、ここから始まるのだ』。

    『これでいいのだ』。

    そんな言葉へ向かって、行きつ戻りつ、自身の人生の解を探して彷徨う松尾。見ようによってはコミカルにさえ感じる松尾の姿は、おそらく何のことはない、私たちの誰もが、そう、”老い”という誰もが避けられないゴールへ向かって試行錯誤の日々を送る私たちの自身の姿なのかもしれません。

    『俺、そんなに悪い父親でも、夫でもないと思うんだけどなあ』。

    大手ゼネコンを早期退職したものの、退職金のほとんどを注ぎ込んだ喫茶店事業に失敗した主人公の松尾。この作品では、そんな松尾が『何もわかっていない』と周囲から言われる中に困惑の日々を送る姿が描かれていました。原田さんらしい”食”の描写に魅せられるこの作品。『喫茶店』にこだわる”食”の描写にも魅せられるこの作品。

    ままならない人生の中で、それでも前に向かって生きていく他ない、そんな人の思いをそこに見た、そんな作品でした。

    • さてさてさん
      Manideさん、コメントありがとうございます。
      「本当になにもわかってないのね」
      私も言われます。トホホです(笑)
      この作品間違いな...
      Manideさん、コメントありがとうございます。
      「本当になにもわかってないのね」
      私も言われます。トホホです(笑)
      この作品間違いなく面白いと思います。評価が上がらないのは『おじさん』が主人公だからではないかと…。なんだか『おじさん』って、この国では極端なくらい肩身が狭い存在ですよね。実態としては、一部威張り飛ばしている方がいて、その結果として対極にいる無実の人間までマイナス感情で見られるという悪循環ではないかと…。この作品の主人公の松尾は前者っぽい人物なので読んでいて”やな奴”という印象で読者にマイナス感情が沸いて、結果として評価にまで及んでいるのではないか…そんな風に思います。食の表現自体は原田さんの他の作品に引けをとりませんし、ストーリー展開も悪くない、結局は『おじさん』が主人公だから、良い評価に繋がらない…それ以上でもそれ以下でもないかなあと。
      なんだか不幸な出自の作品ですね(笑)
      2023/10/15
    • Manideさん
      さてさてさん、こんにちは。

      そうなんですね、なるほど(笑)
      おじさん主人公は人気うすというのは、厳しい世界ですね(^^)

      瀬尾まいこさん...
      さてさてさん、こんにちは。

      そうなんですね、なるほど(笑)
      おじさん主人公は人気うすというのは、厳しい世界ですね(^^)

      瀬尾まいこさんの「傑作はまだ」は面白かったですが、そこまで評価は高くなく、これも冴えない感じのおじさんが主人公だからかと思うと、納得です。

      おじさん主人公で人気になるのは、仕事ができて、キレキレのおじさんか、メチャクチャ心温かいおじさんですもんね。私もおじさんですが、冴えないおじさん作品には頑張ってほしいですね。

      勉強になりましたφ(・ω・`)
      2023/10/15
    • さてさてさん
      Manideさん、
      瀬尾まいこさんの「傑作はまだ」、私も読みましたがとても良くできた良作だと思いました。ただ今見ると、やはり★四つをつけて...
      Manideさん、
      瀬尾まいこさんの「傑作はまだ」、私も読みましたがとても良くできた良作だと思いました。ただ今見ると、やはり★四つをつけていますね、私(笑)。
      小説を読むという行為は主人公にどれだけ感情移入ができるかということが問われると思います。そんな対象がおじさんだと、気持ちの上でそれに抵抗しようという思いが湧き上がり、結果として良い作品だったけれど…となるのかも知れませんね。私が小説家だったら、安易にそんな視点から主人公を選んで、結果として似たような作品ばかりになりそうです(笑)。さすが、原田ひ香さんですね!
      Manideさんも、旬なうちに是非お召し上がりください!
      2023/10/15
  • /_/ 感想 _/_/_/_/_/_/ 
     
    冒頭で東銀座出てくるんですが、そういえば一昨年まで東銀座で働いていて、1000円のコーヒー飲んだな〜と思い出してました。辞める最後の方で、同僚にご馳走してもらってんですよね。「高いな〜」と、いうのと、「美味しいな〜」と、いうのと、流石に1杯1000円なら、「もう来ないな〜」という感想を覚えています。

    喫茶おじさんは、会社を早期退職して、自分で開いた喫茶店を早々に廃業してしまった、できない男ですが、1人で喫茶店めぐりをして、美味しいコーヒーや、ケーキを食べて喜んでいられる天然キャラでした。そんなおじさんの生活に寄り添っている感じになって、毎度のことながら、人生はどうあるべきか…を考えさせられました。

    このおじさん、「何もわかってないんだなあ」と、奥さん、娘、友人、バイトで雇った若者、いろんな人に言われます。もうね、そんなこと言われたら、辛いですよね。それでも、淡々と喫茶店めぐりをつづけるおじさんは、天然いい人キャラでした。コーヒー飲んだり、ケーキ食べて喜んでる描写が多くて、⭐︎3にしてる人たちは、絶対にツッコミ入れてますね。「のんびりくつろいでるんじゃ〜ね〜よ」と…

    共感する点はないですが、終盤に出てくる一言、「どんなふうにも生けていけるんだなあ」というセリフが、心に残りました。

    何ができるか、ではなく、何をやりたいのか、、、
    そして、そのやりたいことをして、喜んでもらえる人がいる、、、
    人生は最後にそこにたどり着くことができれば、よき人生だろうな〜と、この作品を最後まで読んで、とても強く感じました。


    /_/ あらすじ _/_/_/_/_/_/

    50歳すぎて、会社を早期退職して、その退職金で純喫茶を開くが、すぐに潰して無職になってしまったおじさんが主人公。
    奥さんからは離婚を打診され、会う人、会う人から、「あなたはわかっていないな〜」と言われてしまいます。
    まじめで、優しいけど、鋭さがまったくないおじさんの歩みを追いかけていきます。


    /_/ 主な登場人物 _/_/_/_/_/_/

    松尾純一郎 57歳、コーヒー好き、社内不倫で30の時に離婚
    登美子 前妻
    松尾亜希子 妻
    松尾亜里砂 ありさ、娘

    • かなさん
      わ…アイコン3きょうだい!!見つけました(*^^)v
      そして、どんぐりさんも!!
      改めまして、こんばんは!
      皆さんの節分バージョンのア...
      わ…アイコン3きょうだい!!見つけました(*^^)v
      そして、どんぐりさんも!!
      改めまして、こんばんは!
      皆さんの節分バージョンのアイコン、楽しみましたよ♪
      なんとも、芸が細かくて可愛らしいっ♡

      喫茶おじさん…私的にはどうしても、
      許せないおじさんなんですよね(^-^;
      こんなに、上手くいっていいのかぁ~??とか、
      ずるいおじさん…
      ちょっと羨ましくも感じてしまったりもしますが…。
      2024/02/04
    • aoi-soraさん
      皆さん、おはようございます^⁠_⁠^
      なおなおさんは、バレンタインバージョンに変わりましたね♡
      私はずっとバレンタインですがwww

      おじさ...
      皆さん、おはようございます^⁠_⁠^
      なおなおさんは、バレンタインバージョンに変わりましたね♡
      私はずっとバレンタインですがwww

      おじさん…
      皆さんのレビューが面白いですね。
      気になるので読みたいのですが、予約数がスゴイのでいつ回ってくるやら。
      やっぱりみんな「おじさん」が気になるのかな(笑)
      2024/02/05
    • Manideさん
      かなさん、おはようございます。

      おじさんは、不人気ですね〜
      おじさんでなければ許されるのか…
      どうなんでしょ(笑)

      今日は東京でも雪と...
      かなさん、おはようございます。

      おじさんは、不人気ですね〜
      おじさんでなければ許されるのか…
      どうなんでしょ(笑)

      今日は東京でも雪ということで、1日家にこもって仕事をすることに…
      いや〜、寒いです((´д`)) ブルブル…
      きっと、一歩も外に出ない
      2024/02/05
  • 原田ひ香さんの新作ということで手に取りました


    早期退職した喫茶店好きなおじさんの話


    喫茶店が好きで
    いろんな店を回るんですが
    どのお店も美味しそう!
    あー喫茶店でゆっくりしたいなあ…(遠い目)



    「あなたはなにもわかってない」と
    いろんな人に言われるおじさん

    なのに喫茶店の描写ばかりで
    なかなかおじさんの話は進まなくて。
    まぁそういうおじさんなんですが
    ヤキモキしてしまいました。


    1ヶ月ごとに区切られているのも
    なんとなく勢いがなくなってしまうというか。
    でもまぁそういうおじさんなんですよね。笑



    とても読みやすい作品ですが
    そういうおじさんが主人公だからか
    ちょっと物足りなかったかも。
    あんまり主人公のこと好きになれないし。。


    好きな作家さんだから
    求め過ぎてしまったかもしれません


    でももっと目覚めて欲しかったー
    まっと変わった姿を見たかったです



    老後に必要なお金の話が出てくるあたりは
    さすが原田さんという感じ

    自分も老後は不安だけど
    何に、いくらいるのか、
    きちんと把握して
    無理なくほどほどに
    楽しく老後を過ごしたいです(^^)

  • 松尾純一郎、57歳。
    彼は、妻の反対を押し切り、早期退職後にその退職金を使い喫茶店を始めたものの半年後で潰してしまった。
    現在、無職の彼・松尾は、純喫茶を巡っては「人生」を考えているのだが…
    妻からは呆れられ、娘のところへ移り住んでからは連絡もこない。
    別居状態で、再就職をと考えてはいる松尾だが、あてはなく今日もひたすら喫茶巡りをしている。


    なかなか気づかない男である。
    いろんなことに気づかないでいる。
    まぁまぁ、楽に生きていて先のことを考えないようである。
    女からしてみれば、イライラするのかもしれない。
    偏見かもしれないが、この年代こういう男性がほとんどじゃないかと思うのだが…。

    喫茶店巡りで美味しいものや甘いものが登場してくる場面は、とても楽しくて行きたいなぁと思わせてくれる。
    「ランチ酒」での美味しそうな文面も思い出したりした。やはり原田さん、流石に表現力が上手である。

    最後は、本人も納得できるかたちにおさまったのではないかと思う。


  • 人生はままならないが、コーヒーは今日もうまい。

    「あなたは何も分かってない」と各章で言われ続ける、松尾純一郎57歳。
    大手会社を早期退職、現在無職。退職金の残りはほぼ無し。趣味は純喫茶巡りである。

    待ってました、原田ひ香先生。
    前作から急ピッチの新作で感激です。

    早期退職をして喫茶店巡り、そして退職金で開いた喫茶店を半年で潰してしまっている。。
    私は未婚女性なので家庭のことなど分かりませんが、
    家族のために57歳まで仕事を頑張ったのだから、そんな第二の人生を望んでもいいじゃないかと思ってしまうのです。

    大学2年生の娘から雑に扱われている始末。
    仕事柄、男性達の接待に交わることが多々ありますが男性社会も本当に大変なんだよ、お父さん頑張ってるんだから優しくしてあげて〜〜と言いたくなる。。涙
    知らない人がいる飲み会、眠気関係なく続く誰かの力説。早く帰ろうの一言に尽きる。余談ですが、男性社会の謎です。笑

    1月から12月までの各章で物語が進んでいくのですが、原田ひ香さんの毎度の闇な感じが好きです。
    外では頑張ってても、一人で居る時の思考回路とか、誰にも見せれない陰な部分とかの描写がリアル。

    松尾純一郎さん、私は応援していますよ。。


    年内の新作は本書が最後なのかな。
    ランチ酒の新作を期待していましたがまた来年。涙

    • 土瓶さん
      男性社会の謎(笑)

      家に帰ってもおもしろいことが何もない、という奴らが周りを巻き込むんですよ。
      正直迷惑ですがそういうヤツに限って立...
      男性社会の謎(笑)

      家に帰ってもおもしろいことが何もない、という奴らが周りを巻き込むんですよ。
      正直迷惑ですがそういうヤツに限って立場が上だったりする。
      俺? 呑まないのでさっさと帰ります^^
      2023/11/28
    • SHIORIさん
      土瓶さん、こんばんわ⭐︎

      分かります、そんな人に限ってだいたい立場は上。。
      女性はニーズの合う人間関係を作るので、男性社会は謎現象なのです...
      土瓶さん、こんばんわ⭐︎

      分かります、そんな人に限ってだいたい立場は上。。
      女性はニーズの合う人間関係を作るので、男性社会は謎現象なのです。笑

      そして、時期的に忘年会という更なる謎現象が始まり出します。。怖

      寒いのでさっさと帰りたい( ・∇・)

      2023/11/28
  • 55 歳で脱サラして始めたカフェをあっという間に潰した男、松尾純一郎。

    現在57歳で年金受給まで8年もある。再就職のあてはなく、誇れるような特技もない。2度目の妻は愛想をつかし、貯金を浚って出ていった。
     八方塞がりの松尾だが、唯一の趣味が喫茶店巡り。今日も気になる喫茶店をはしごしつつ、ほんの少し人生についても考えてみたりする。

    そんな松尾の1年間を描くカフェグルメ人生小説。 全 12 話およびエピローグからなる。
             ◇
     その日、松尾は自宅近くの喫茶店のカウンターでブレンドコーヒーを飲んでいた。馥郁たる香り、芳醇な味わいに心も軽くなった松尾はついマスターに話しかける。
     使用している豆について、その種類、状態、焙煎具合を確認するぐらいのつもりだったのだが、店を出たあと学生バイトらしい女性店員が松尾を、知ったかぶりの暇じいさんのようにこきおろすのを聞いてしまった。

     もうあの店にはいけないなとため息をついたものの、松尾の興味はもう次なる喫茶店に向いていた。
     懲りない。引きずらない。それが松尾純一郎という男である。

     男の人生というものは、理想的な喫茶店を探す旅ではないか。

     そう信じる松尾は、銀座を目指して有楽町線に飛び乗ったのだった。
       (第1話「1月 正午の東銀座」)

         * * * * *

     バブル世代と呼ばれる人間は基本、楽観的でお気楽だと言われます。そのあとに来る経済氷河期のような不景気でも、すぐに回復すると希望的観測を持つ人が少なくなかったそうです。
     バブル期に青春時代を過ごし、大手ゼネコンに就職。可も不可もないサラリーマン人生を歩んできた男、松尾純一郎がまさしくそんな人間でした。

    55歳で早期退職し、唯一の趣味である喫茶店めぐりが高じて開いたカフェはあえなく廃業。退職金の半分をふいにしてしまいました。
     松尾なりに落ち込んだし、反省もしました。再就職は取締役に昇進した友人に頼んでいます。人生をきちんと考えているつもりなのです。

     なのに1人娘を始め、別れた妻、別居中の妻、無二の友人、はては(後に判明する)娘の彼氏やカフェスクールの元同級生にまで言われてしまいます。
    「何もわかってない人だ」と。


     読み終えたあと、希望に満ちたエピローグにほっこりしたし、松尾さんにエールを贈りたくなった。それは確かです。

     けれど、こんな人、本当にいる?と思ってしまいました。

     松尾さんは人に怒りをぶつけません。
     たとえ1人娘や妻に悪しざまに言われようとカフェの客に軽く扱われようとです。また、かつて松尾さんがカフェのバイトとして雇っていた男子学生 (娘の彼氏です)にも控えめにですがマウントを取られもします。それでも怒らない。
     自分にも至らないところがあるのかもと思って受け流すのです。この包容力。聖人の域に達しているのではないかと思うほどです。

     松尾さんは実際すごくいい人です。好人物と言っていいでしょう。なのに、ある種の人を苛つかせる名人であるようです。
     ある種の人とは、人生に真正面から取り組み荒波に立ち向かう覚悟を持った人たちです。そう、松尾さんには覚悟がたりないのでした。


     1年間を通して、松尾さんは様々な親しい人から覚悟のたりなさや考えの甘さを手厳しく指摘されていきます。その過程は実におもしろく読んでいて納得できるものです。
     「分相応」ということに気づき、人生の再構築に取り組む松尾さんを見せてくれるエピローグ。ステキでした。集大成は必ず実現できると思います。

  •  喫茶おじさん…ちょっと、かわいいかも♪と思って手にした作品。でも、あんまりかわいくはなかったかも(^-^;)

     純喫茶巡りを趣味にする松尾純一郎57歳が主人公。あちこちの喫茶店をたずね、そして原田ひ香さんらしくおいしい描写が満載!!この純一郎、何とバツイチで子供がいて、しかも無職?なぜ無職になったのかってのも、なんともねぇ…。純一郎に関わる人が口をそろえて「あなたは何もわかってない」と言いますが、私もそう思います。

     読みやすく、さらりと読める作品だけれど…ちょっと好きになれないかな、この主人公のことが…。こんなに自分本位に生きられるのが、逆にスゴイと感じてしまいます。だけど、喫茶店のはしご、私もしてみたくなりました( ^^) _旦~~

    • Manideさん
      たしかに、この反応は、おじさん可哀想(笑)
      たしかに、この反応は、おじさん可哀想(笑)
      2023/11/25
    • かなさん
      1Q84O1さん、
      あははっ(*^▽^*)
      本音をレビューしたら笑ってもらえちゃった♪
      ちょっと、嬉しいかもっ!!
      1Q84O1さん、
      あははっ(*^▽^*)
      本音をレビューしたら笑ってもらえちゃった♪
      ちょっと、嬉しいかもっ!!
      2023/11/25
    • かなさん
      Manideさん、おはようございます!
      この表紙は可愛い感じなのに
      中身はねぇ…私の苦手な身勝手な主人公で(^-^;
      ついつい…
      で...
      Manideさん、おはようございます!
      この表紙は可愛い感じなのに
      中身はねぇ…私の苦手な身勝手な主人公で(^-^;
      ついつい…
      でも、このおじさんが可愛くないわけは
      この作品を読んでもらえればわかると思います。
      2023/11/25
  • 喫茶おじさん。
    松尾純一郎 57歳
    「あなたはなにも、わかっていない」
    周りの人は口を揃える。
    早期退職して喫茶店を開店するも二年で閉店。ついに妻に離婚を言い渡されて。
    今は喫茶店巡りをすることだけが楽しみ。
    人生を挽回できるか…
    原田ひ香さんの真骨頂、どたばたパワフルに、人生を切り開く感はない。
    静かに喫茶店で美味しそうなコーヒーやサイドメニューを食す。
    趣味の喫茶店巡りや周囲のみんなとの関わりが、本当にやりたいことに、気づかせてくれる。
    本当に恵まれてる。
    好きなものを極める。
    松尾純一郎 57歳
    あと十年もしないうちに、年金がもらえるようにる。
    これでいいのだ。こうしているうちに自分は老いる。いつか別のことをしたくなる日が来るかもしれない、
    だけど。
    今はこれでいい。
    今、私の気分はすっきり爽快。
    青空がみたい気分

  • 全てを肯定してくれる、そんな本でした。
    若さも、今の自分も、老いることも、怖くない、むしろちょっとワクワクできる。
    ホッと心を和ましてくれる喫茶店のような一冊でした。
    素敵な喫茶店がたくさん出てきます‼️

  • 原田ひ香さんの新刊。喫茶店が大好きな50代後半のおじさんの話。月毎に1章が構成されており、1年間の12章から成る。(京都なども出てきたが)主に都内各所の純喫茶(『ランチ酒』同様、実在のお店、または少なくともモデルとなっている実在のお店があるような気がするのだが、どうだろうか)を主人公と共に堪能できて楽しかった。喫茶店の内装やメニューだけでなく、主人公がどのような人生を歩んできたかも、回想や現在進行形の出来ごとと共に知らされる。前向きな終わり方もとても良かった。このおじさんのすごいところは、複数の喫茶店を1日のうちにはしごし、がっつりご飯を食べているところ。自分はそれは無理だな…と思いつつ、本当に色々なお店を開拓した気分になる。人生色々あるが、必要以上にお金に囚われてやりたくないことをいやいややるよりは、自由に好きなことをした方が生き生き前向きな姿勢になるのだ、ということを主人公を通じて教えられた気がした。「喫茶店」が出てくる小説はたくさんあるが、こうした切り口は初めてで楽しめた。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2005年『リトルプリンセス2号』で、第34回「NHK創作ラジオドラマ大賞」を受賞。07年『はじまらないティータイム』で、第31回「すばる文学賞」受賞。他の著書に、『母親ウエスタン』『復讐屋成海慶介の事件簿』『ラジオ・ガガガ』『幸福レシピ』『一橋桐子(76)の犯罪日記』『ランチ酒』「三人屋」シリーズ等がある。

原田ひ香の作品

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