慰安婦問題をこれで終わらせる。: 理想と、妥協する責任、その隘路から。

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093884235

作品紹介・あらすじ

良識と国益の「具体案」、この一冊。

「戦時下の公娼」か「性奴隷」か…右派と左派が叫びあうも、一般市民はもはやウンザリ…? “超左翼”を名乗る著者が右派に学び、矛盾にも見える現象からその本質を抉り出す。「動かすカギは“左翼の妥協”である」と。

一章:朝日新聞の本当の「罪」とは
・朝日の検証と他メディアによる批判をめぐって
・本質を朝日は見誤っていたのではないか
・慰安婦問題の本質はどこにあるのか

二章:政府声明「河野談話」とは何だったのか
・談話の評価は逆転されてきた
・問題の本質としての矛盾
・アジア女性基金の「失敗」から何を学ぶか

三章:植民地支配と和解について国際標準から
・日本の植民地支配をどう考えるか
・被害者の癒やしと加害者との和解の多様なかたち
・法的でも道義的でもなく…

補論:妥協と原理の政治について
1・理論編
(1)対立軸の双方にいる良識派
(2)対立軸は固定的でも絶対的でもない
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【編集担当からのおすすめ情報】
正直、私を含め多くの方にとって、ウンザリの思いも禁じえないのがこの問題かもしれません。先の大戦での日本のふるまいに反省すべきではと感じつつ、でもやはり日本国内の左派と右派それぞれの、また韓国側からの、叫びのような各主張に、ウンザリ……穏健な議論はどこにあるのだろうかと。
しかし、いまなお日韓の棘となっており、また2015年で戦後70年、また日韓基本条約50年でもある節目であり、いやおうなく外交問題ともなるでしょう。
そこで「左翼内保守派」や「左翼内右翼」とも呼ばれる著者が、この問題の本質を考えぬいた上で、良識と国益を兼ねた具体案を提示します。穏健な右派と左派そして中道の方々の、冷静な議論の叩き台になっていると思います。
「現実に鍛えられた理想」についての一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 終わらせるという観点からならいいと思う
    世界ではすでに奴隷であると認識されてるし
    総理大臣が人身売買と認めちゃったし

  • この本、どこで知ったのか思い出せないんだけど、読みたいと思った時点で図書館に予約したら借りるまでにだいぶ時間が掛かって、手に取ったときは、自分自身、「"記憶"と生きる」という元慰安婦の人のドキュメンタリー映画を観て、日本軍「慰安婦」に関する勉強会やあと戦後70年企画で戦後補償に関するイベント2つ行った後だった。

    「こういうイベントに行ってから読んでみよう」と意図してたわけじゃないけど、それらを経験してこの本を読むと「なんだ、全然読む価値ないじゃん」って思った。わたしもこの問題は全然部外者だけど、部外者が何言ってんの?って思った。「日本 VS 日本が謝ろうとしてもまだまだそれを受け入れない韓国の市民団体(挺体協のこと)」という図式に当てはめてしまってるのが最大の問題で、日本軍「慰安婦」の問題ってイコール韓国との問題ではないんだよね。オランダだって今でも月に1回、日本大使館の前でサイレントデモが行われているそうです。でも、日本のマスコミはそれを全く報道しないって言ってた。だから慰安婦の問題=韓国との関係、になってしまうんだと。それとアジア女性基金の話もごねてるのは挺体協で、挺体協が元慰安婦のおばあさんたちを煽動してごねさせてる、挺体協が諸悪の根源だみたいに言われてるけど、そこには日本の市民団体も一貫して関わっており、アジア女性基金については当初から日本の市民団体も反対しているのに、そちらの方も全く無視されていると言っていた。

    そして何より許せないのはこの本が「慰安婦問題というのは、他にも極めて複雑な要素を抱えている。いま紹介したのは、強制連行されたと名のり出て、日本を裁判で訴えた方の話であるが、そういう人は被害者のごく一部であって、多くの人は何も語っていない。他方、慰安婦の証言を否定するような日本の兵士や軍医などの証言もある。たとえば、いやがっていた慰安婦は朝鮮半島に戻して上げたという話もあるし、慰安婦と兵士の間には心の交流があり、必ずしもいやがっていたわけではないという話すら存在する。これらは強制連行されたのだとか、慰安所の生活は悲惨なものだったとか、運動団体などから出てくる情報と違うものである。ここから生じやすいのは、自分の立場と違う情報はウソだとしてしまうことである。運動団体にとっては、慰安婦が日本の兵士と仲が良かったという話は、受け入れることが出来ない。(後略)」という誤った事実を平然と垂れ流していることだ。

    わたし、最初に「"記憶"と生きる」という慰安婦の人のドキュメンタリー映画を観たけど、兵士と親しくなった、慕っていたという話はこの映画の中にも出てくる。だからまずわたしはこの部分を読んで「あれ?そのことはもう知ってるけど?」ってなったのだ。何よりこの「運動団体が受け入れることが出来ない話」は実はその運動団体が出している日本軍「慰安婦」の手記に全部載ってるそうだ。この本の元ネタになってるのはおそらく韓国で出版された「帝国の慰安婦」という本なのだが(この本は韓国国内で物議を醸した本で、しかも翻訳されて日本語で読める。そしてこれを読んだ日本のリベラル層が絶賛したそうで、この「慰安婦問題をこれで終わらせる」を書いた人もあとがきでこの本について触れている)この「帝国の慰安婦」の中の慰安婦の人が語ったという部分はすべて、挺体協が出した6冊の元慰安婦の人の話の聴き取りの本に載ってて、しかも前半4冊からの部分がほとんどだと。これはわたし、8月14日にやった「戦後70年東アジアフォーラム」の課題別シンポ「加害者が『和解』を語れるのか」でこの「帝国の慰安婦」の慰安婦の部分のみについて大反論した人がいて、その人から聞いた。その人はホント、「帝国の慰安婦」についてものすごく怒っていた。「当時の日本兵と親しかった」という話は元慰安婦の人から聞いているし、本にもしているくらいだから全然隠していない、と。自分の都合のいいところを抜き出して書いているのは「帝国の慰安婦」の方だと。話をしてくれた人は、日本でやった裁判に10年関わってた人だと言ってたが、その人は「あれだけ過酷な生活を送っていた人たちの心情がそういう生活を送ったこともない自分たちには理解することはできない。元慰安婦の人たちの証言を聞き取ってもつじつまが合わない感情や話が非常に多く、それをどうやって理解していけばいいのか、日々悩んでいる状況だ、と。だからPTSDとか、心理学関係のことも勉強しつつ、どういう心情なのかを分析している、と言っていた。そして「裁判で10年関わったけど、まだ自分に話してくれないことがある。慰安婦生活は7年間だったそうだが、語ってくれるのは最後の4年のみで、最初の3年のことは何があったか今でも分からない」と言っていた。これは「"記憶"と生きる」の監督の土井さんも話してたけど、話してくれるまでの関係性をどうやって作るか、まずはそれからで、でも話すようになったからと言ってすべてがおおっぴらに語られるわけじゃない、慰安婦の人だってこれを言ったら自分の都合が悪くなると思って言わないことだってあるだろうと言ってたし、何より一番過酷な経験はおそらくいくら時間が経とうと口にはできないのではないか。これは別の慰安婦の人に関わった人が言ってたけど、裁判のために元慰安婦の人が日本に来たので、その人は慣れない日本のホテルだからというので案内して、お茶の沸かし方とかシャワーの使い方だとかを説明したそうだ。元慰安婦のおばあさんはその後、疲れたから昼寝をするといって、昼寝をしたそうだがその人は部屋にいたら、突然おばあさんが苦しみだして、びっくりしたと。戦後何十年も経ってるのに、未だにうなされるんだと。わたしはそういう直接関わった人の話を間接的にしか聞いてないけど、そういうのを聞くと安易に「元慰安婦の人がこう言った、これは言ってない」とだけ書くものじゃないよねと思う。「言った、言わない」の裏にどういうことがあるのか、そこまで考えてからでないと。で、そうしてるのが直接元慰安婦の人たちに寄り添っている人たちだ。だから、わたしはこの話に関してはどう解決するかを考えるのはこういう人ごとな本じゃダメなんだなあ~と思う。

    また、この本、ドイツの慰安婦のことについて、こちらでは慰安婦の問題は何も問題になってないことに対して「(資料もないので推測するしかないが、という前書きはあるが)朝鮮半島の慰安婦との違いがあるすれば、少女を慰安婦にしたかどうかであろう。(中略)一方、ドイツは第一次世界大戦における敗北の結果、すべての植民地を放棄させられていたので、年齢条項の保留は何も問題にもならなかったのである。」と書いてあるが、これも先日の東アジアフォーラムでドイツの「記憶・責任・未来」財団の人が来てて「この分野に関しては、ドイツはこれからです」と語ってたのを直接聞いた。だから決して「(これからも)問題なし」という認識ではないのだ。というか、問題を認識し始めたのならば、今の日本の対応状況なんてすぐに越してしまうだろうな-。あのときは「日本の方が進んでます」って言ってたけど。

    あと、よく出される1965年の「日韓基本条約」。日本はこれによって「個人保障はしない」となっているらしいが、近年、韓国からこの条約締結に際しての話し合いの議事録が公開されたらしい(日本はまだ出してない。出てきても黒塗りだらけで何が書いてあるか分からないだろうと言っていたが)。それによると韓国側からまず先に「個人保障はどうするのか」という話があったという。それに対して日本は「そのことは、今ではなく別のときに話しましょう」と言ったまま、そのままずっと放置されているそうだ。なので、個人保障に対しては両国の間では本当に何も話されていない、というのが現実らしい。で、これを話してくれた人は「その後に韓国は折に触れて『あの件はどうなった、いつ話し合うのだ』と日本に話すべきだったのだ」と言っていた。ところが本当に近年になるまで韓国はこの件については何も言ってこなかった。それは日本と韓国の要人たちが戦前、戦後に渡ってある意味「緊密な関係」だったからで、個人としては到底言えなかったんだろう。それは国の立場として考えるとどうかと思うが。そして、在外被爆者の裁判が今、各地で起こっていることなども考えると、戦後70年経って、やっと今、訴えられる環境が整ったと言えるのではないか。というわけで、慰安婦問題を含む戦後補償というのは、これからな気がしている(だけど、当事者のほとんどが亡くなられているという事実も重い)。わたしは今さらながらこのようなことを知り、初めて「日本と韓国の戦後の歴史と関係」を学ぶ必要性を感じた。「なんであのときすぐに言わなかったんだ」じゃないんだよね、全然。

    まぁわたし、各イベントに行ってこないままこの本を読んだらどんな感想を持っただろう?って思う。けど、イベントに行ったあとで読むと、本当に薄っぺらい本なんだよね、これ。第一、第一章が「朝日新聞の本当の『罪』とは」なんだけど、別に慰安婦問題に対して朝日にそんなに強大な影響力があるとは思えないし!それに戦後の個人保障と国の謝罪の問題をごっちゃにしてる(第三章「植民地支配と和解について 国際標準から」)。だから、はっきり言ってしまえばこの本、一章から三章までは読む必要がない。

    が、この本、実は「補論」は面白かった。というのは、この著者が直接関わってきた問題がこれだからだ。ここでは憲法9条と安全保障、自衛隊、これらに関することが書いてあって、これはまさに今、日本中で問題になっていることなのだが、これは読んでて面白かった。実際に起こったことを元にしているし、現実的な路線だし、極めて真っ当なことを言ってると思う。きっとこの人はここの部分が書きたいがために一章から三章を無理矢理書いたんじゃなかろうかとさえ思った(「補論」だけで本全体の約20%を占める)。「慰安婦」の部分が真っ当に思えないのは、現実的な認識が誤っていて、どこか「頭の中でしか考えてないこと」と思えてしまうからだろうか。

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著者プロフィール

松竹伸幸(まつたけ・のぶゆき)
1955年長崎県生まれ。 ジャーナリスト・編集者、日本平和学会会員(専門は外交・安全保障)、自衛隊を活かす会(代表・柳澤協二)事務局長。一橋大学社会学部卒業。『改憲的護憲論』『〈全条項分析〉日米地位協定の真実』(共に集英社新書)、『9条が世界を変える』『「日本会議」史観の乗り越え方』(共にかもがわ出版)、『反戦の世界史』『「基地国家・日本」の形成と展開』(共に新日本出版社)、『憲法九条の軍事戦略』『集団的自衛権の深層』『対米従属の謎』(いずれも平凡社新書)、『慰安婦問題をこれで終わらせる。』(小学館)など著作多数。

「2021年 『「異論の共存」戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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