ピカレスク: 太宰治伝

著者 :
  • 小学館
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (479ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093941662

作品紹介・あらすじ

太宰治心中事件の謎は、死後、半世紀を経たいまも封印されている。「井伏(鱒二)さんは悪人です」が、太宰の自殺にどう関わっているのか。死ぬ直前に溢れ出た想いが遺書に込められたとすれば自殺の動機に含めぬわけにはいかない。太宰治の「遺書」の謎に迫る本格評伝ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 太宰はテクニシャンなんです、っていうのがよくわかる一冊。読者がそこでどこを触って欲しいかを知ってるというか、
    彼が読者をイかせるのは、彼自身でじゃなくて、手技なんだなーと思うとちょっと萎えちゃう訳で。
    もう今は太宰を読んでも昔みたくグッとしたりはしない。社会で仕事をして、ひとりの人間として責任を負って生き始めたからだと思う。
    高校生〜20歳前までっていうのが一番太宰に心酔しやすい時期なんじゃないですかね。
    私がこの本読んだのは20歳になった直後でしたが、純粋にこの本はおもしろいと思ったし
    読む手が止まらなかった。井伏も太宰も最低だな笑でも最低だから人が面白いと思うものを描けるんでしょうね。

  • 太宰治を知るのに最適な一冊かも知れない。

    これを読んだ上で もう一度 太宰治を読み返したくなった。

  • 「井伏さんは悪人です」という太宰の捨て書きを起点に語られる評伝。太宰にとって世間そのものだったとされる井伏だが、その太宰の生き方が常に女性を食い物にして生き残ろうとする醜悪さに満ちている。
    それより昔の作家がこれ程日常的に剽窃を行っていたのが衝撃的。

  • 2015/12/06 読了

  • 作家太宰治の生涯を描いたノンフィクション作品。

    膨大な参考文献を詳細に調べ上げ、人間くさい太宰治像を浮かび上がらせた。

    井伏鱒二や当時の文士たちとの交友や、第1回芥川賞にまつわる記述など興味深い。

    玉川上水での入水自殺にいたるまでのエピソードは、緊張感があってはらはらとした。

    日常に埋没するのを恐れ、「日常と非日常(自殺)のあわいを生きる快楽、自虐の快楽を知った。」という猪瀬氏の考察が言い得て妙だなあと思った。

    太宰の作品を引用しながら実生活を描く手法も面白い。これ一冊読んだらちょっとした太宰マニアになれるかも。

  • 純粋だからこそ苦悩する青春文学の旗手。太宰治の従来の人物像を覆す評伝です。
    恵まれた出自。太宰の一方的な都合で繰り返す女性関係。評価を得るための卑劣にも見える手口。
    昭和初期の文壇を背景に、生涯つづいた井伏鱒二との子弟関係は、執拗で、太宰をモデルにした井伏の作品に激怒した太宰は、一見、絶賛しているように読める推薦文で、井伏の作品の剽窃を書き記すまでに至ります。
    井伏の剽窃に関しては、あの『山椒魚』が、当時すでに和訳されていたシチェドリンの『賢明なスナムグリ』に酷似している、と著者が本書で指摘しています。
    かって無かった視点から、ピカレスク(悪党)としての太宰治を描いた画期的な作品です。

  • 001.01.2/28 5刷、並、カバスレ、小口黄ばみ、帯なし
    2011.8/28.栄スカイルBF

  • 1948(昭和23)年、6月13日。
    流行作家太宰治は、東京は三鷹の玉川上水で
    愛人の美容師、山崎富栄と心中事件を起す。
    太宰の死顔は、見た者が驚きを覚える程、
    穏やかなものであり、反対に富栄の死顔は、
    両眼をかっと見開いた大変無残なものであったという。

    時同じくして死を迎えた二人の死後の顔に浮かんだ
    この表情の差は何を物語るのか?

    作者猪瀬直樹氏が膨大な量となる資料や、
    太宰の生前交流のあった人々へのインタビューを通して、
    その謎を解き明かそうと試みる。

    生前、太宰が何度も起した心中未遂事件は、
    自分の不始末によって招いたピンチの
    事態打開のためのパフォーマンスだったのか?

    彼にとって、裕福な津軽の生家、政治家となった兄は、
    ただコンプレックスの源になって、
    彼の人生に重く付いて回っただけなのか?

    それともその力を巧みに利用することで、
    彼は流行作家の地位を登りつめていったのだろうか?

    妻の美知子を初め、入籍はしなかったものの
    一緒に暮らしていた小山初代、彼の子供を生んだ
    太田静子、初めての心中事件で命を落とした田部あつみ、
    そして最後、共に死んだ山崎富栄・・・。

    彼にとって彼女達は、作品を生み出すための道具だったのか、
    それとも彼の苦悩を救う女神だったのか・・・?

    「井伏さんは悪人です」
    なぜ太宰は何かと世話になった井伏鱒二に、
    最後の最後になってそのような言葉をぶつけたのか?
    二人の間にどのような事情や葛藤が存在したのだろうか?

    本当の太宰はどんな人間だったのだろう?

    この作品は太宰治の伝記であると共に、
    彼の人生に潜む多くの謎に迫った推理小説でもある。

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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