- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094064803
作品紹介・あらすじ
傷を持つ二人が夫婦になるが…感動人情小説
貧しい小作の娘だった志乃は、女郎になるのが嫌で江戸に出て行き、首切り浅右衛門のもとで松助という名の「男」として仕えることになった。剣術の腕も磨いていたが、ある日浅右衛門家にとって大切な死人の肝を、強盗に奪われてしまう。責任を取って浅右衛門のもとを去り、名前を戻し針売りの娘として生きはじめた志乃。そこに、志乃が憧れていた壮太があらわれた。「男」として介錯を仕事としてきた志乃はまともな幸せなど考えていなかったが、お互いの気持ちを確かめて、夫婦になった二人。
しかし、壮太にも隠された過去があった――。志乃が奪われた死人の肝を盗んだのが、壮太達だったのだ。そして、仲間の男だった沖次が凶暴になって、江戸の町を震撼させていたのだ。壮太は、沖次と決着を付けようと出かけていく。それを追って、刀を持った志乃が追いかけていく。果たして決着は!?(第一部 「月明かりの面影」)
第二部では、夫婦のその後と沖次の子供が絡んでいく。(「裏庭の陽だまり」)
ささやかな幸せを願う市井の女性が懸命に生きる姿を描いた人情小説。
【編集担当からのおすすめ情報】
デビュー作『しずり雪』が書評家の絶賛を浴びた安住洋子さんが、渾身の思いで書き下ろされた時代小説です。
解説は、文芸評論家の縄田一男さんです。
感想・レビュー・書評
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2022.07.04
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2017年12月小学館文庫刊。書下ろし。月明かりの面影、裏庭の陽だまりの2部構成。松助と名のり、山田浅右衛門の中間を務める志乃の数奇な運命を描く1部と、壮太と志乃とその子供達の暮らしを描く2部は落差が大きいです。めずらしいストーリー展開で、楽しめました。ラストは悲しくなりました。
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う~ん、はじめはよかったのです。男として生きていかなくてはならなかった志乃をもっと長く描いてもよかったんじゃないかな。後半はどんどん展開していって、ほとんどあらすじになってしまって、もったいない。一つ一つを短編として丁寧に描いてほしかったな。
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ずっと注目している安住洋子さんの、ようやく出版された新作です。しかし、遅筆ですね。
過酷な過去を持つ壮太と志乃が巡り合い、所帯をもって幸せを得る姿を描いた時代小説。安住さんらしい繊細で良く練られた文体で描かれた二人がお互いを思いやる心や3人の子供の姿がとても心地良い作品です。
難を言うならストーリー展開です。平穏なだけでは物語にならないのですが、とはいえ「闇討ち」や「盗賊団」などの扱いは、壮太/志乃の姿とややかけ離れ過ぎているように思います。もう少し、必然を感じさせる展開なら良かったのですが。 -
鳥羽亮さんとは逆で、なかなか新刊が刊行されない安住洋子さん、「み仏のかんばせ」、2017.12発行、著者の7冊目、デビューが2004年の「しずり雪」、6冊目が2014年の「遥かなる城沼」ですから3年以上の期間をあけての著作ですね。第1部が月明りの面影、第2部が裏庭の陽だまり。首切り役人、山田浅右衛門の元で男(松助)として14歳から24歳の10年間を過ごした志乃という女性の数寄なる生涯を描いた作品です。後に伴侶となる壮太が作品に幅と深みを与えています。読み応えがありました!
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前半、息が詰まるほどの展開を読み始めて「これからどう展開するのだろう」と期待を持っていたが、主人公が女性としてのしあわせを手にしていく過程がいままでの作品と違っていた。
所々、涙を誘われ最後の死へ向かう夫婦の心情に心を揺さぶられた。