警部ヴィスティング カタリーナ・コード (小学館文庫 ホ 2-1)

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094066548

作品紹介・あらすじ

2019年北欧ベスト・ミステリー受賞作!

「ガラスの鍵」賞、マルティン・ベック賞、ゴールデン・リボルバー賞の三冠に輝いた『猟犬』の警部ヴィスティングが帰って来た!

2015年の『猟犬』以来、久々の邦訳となった本作は、2019年英国ペトローナ賞(英訳北欧ミステリ・オブ・ザ・イヤー)受賞作である。
著者のヨルン・リーエル・ホルストは、自身が警察官出身。ノルウェーの警察小説の第一人者として、本国ノルウェーのみならず、北欧各国、英語圏で人気を博している。

ノルウェー南部の小都市、ラルヴィク警察犯罪捜査部の警部ヴィリアム・ヴィスティングが、謎の失踪を遂げたカタリーナ・ハウゲンの行方を追い始めて24年がたっていた。ヴィスティングは毎年、事件が起きた十月十日になると、夫のマッティン・ハウゲンを訪ねていた。24年目の十月十日も同じように訪ねたが、マッティンは不在だった。異例のことだった。
明くる日、オスロの国家犯罪捜査局(クリポス)未解決事件班の捜査官アドリアン・スティレルが来訪する。スティレルは、カタリーナ事件の2年前に起きたナディア・クローグ誘拐事件の再捜査を始めていた。事件は殺人事件と見なされ、その最重要被疑者として名前が挙がったのがマッティン・ハウゲンだった。
スティレルがヴィスティングに言う。「力を貸していただきたい。ハウゲンと親しいあなたに」
ヴィスティングは了承のしるしに短くうなずき、こう続けた。「一点だけ問題がある。マッティン・ハウゲンが消えた」

感想・レビュー・書評

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  • 北欧・ノルウェーのハードボイルドな刑事が事件を追うミステリー。ヴィスティング警部が24年前に失踪したカタリーナという女性の捜査資料を定期的に見返す。彼は失踪日には彼女の夫マッティンと会い、事件を見返す。そこに国家犯罪捜査局の捜査官スティレルが現れ、26年前のナディア・クローグ事件を捜査し、捜査線上にマッティンが浮上。ヴィスティングはマッティンを友人として、容疑者として裏で捜査する。カタリーナが残した数字の羅列暗号によりナディア・クローグ事件が一気に重なる!ヴィスティングとマッティンの心理戦が見どころ!!⑤

  • ノルウェーの人気ミステリ、警部ヴィスティングもの。
    「猟犬」もとてもよかった、あのシリーズです。

    ノルウェーの地方都市ラルヴィク警察の警部ヴィリアム・ヴィスティングは誠実な男。
    24年前に失踪したカタリーナ・ハウゲンの事件をいまだに気にかけていました。
    カタリーナ・コード(暗号)とは、台所に残されていたメモのことで、意味が解らないまま。
    失踪した10月10日には、カタリーナの夫マッティンを訪ねて、語り合うのが習慣となっています。
    ところが今年、行ってみるとマッティンは留守。

    国家犯罪捜査局(クリポス)未解決事件班の捜査官アドリアン・スティレルがやってくる思いがけない事態に。
    26年前のナディア・クローグ誘拐事件の新たな証拠が出て、マッティンが容疑者だというのです。

    ヴィスティングの娘のリーネはすぐ近くに住んでいて、「猟犬」の頃は大手新聞社の記者でしたが、今はフリーのシングルマザー。
    ヴィスティングは関連した事情を探る手伝いに、いずれは記事にもできるかと取材に慣れたリーネに参加させることにしていました。
    そこへ、有能だが癖のあるスティレルが加わり…

    マッティンとどこか友人のような穏やかな関係になっているヴィスティング。
    無実を信じているから悲しみに寄り添っているようにも見えるし、親しくなったから事実がわかった場合に斟酌しそうにも見える。
    しかし…
    どうなるのか?
    息詰まるような関係と、少しずつ判明する事実。
    元警察官である著者ならではのリアリティと、いや規則違反ではと思う面も一部ありつつの人間模様。
    真実を追求する執念、長い年月を経た真相は。
    心に残る作品でした。

  • ノルウェーの地方警察署で警部をしている主人公ヴィリアム・ヴィスティングは55歳。
    妻に先立たれ一人暮らしだが、近所にはジャーナリストでシングルマザーの娘リーネが住んでいて孫娘の子守を頼まれたりしている。

    24年前のカタリーナという女性の失踪事件が心に引っかかっていて、事件ファイルを家に持ち帰って、暇があれば眺めている。
    失踪したと思われる10月10日にはカタリーナの夫のマッティンと当時の話をするうちに毎年会うようになって友人のような関係になった。
    今年も10/10に訪ねたがマッティンは不在。

    オスロの国家犯罪捜査局(クリポス)未解決事件班の捜査官アドリアン・スティレルが来訪する。
    スティレルは、カタリーナ事件の2年前に起きたナディア・クローグ誘拐事件の再捜査を始めていた。
    事件は殺人事件と見なされ、その最重要被疑者として名前が挙がったのがマッティンだった。
    スティレルがヴィスティングに言う。「力を貸していただきたい。マッティンと親しいあなたに」

    そんなわけで26年前の誘拐事件との関わりを探る主人公。
    クリポスの捜査官スティレルは策士で、主人公の娘リーネも捜査に巻き込む。

    主人公は休暇で、マッティンと電気もガスも水道も無いような山小屋へ行く。
    マッティンと過ごしながら推理してカタリーナが残した暗号の解読に成功する主人公。
    二人で釣りをしたり、湖をボートで移動したり、ハイキングをしたり、主人公がマッティンに仕掛ける心理戦。

    盗聴器マイクでの録音など、小物を用意するが、肝心のスマホの充電を忘れるとか間抜けすぎじゃないのか?

    帰り道でのマッティンの告白で何もかも明らかになる。
    結局は誘拐事件も失踪事件も明らかになるのだが、最後がいささか尻切れな感じが否めない。
    まあでも、心に残る物語ではある。

  • ヴィスティング警部シリーズ12作目。邦訳としては『猟犬』に継ぐ2作目。今回もヴィスティングは過去の事件と向き合うことになる。

    24年前、主婦カタリーナ・ハウゲンは、忽然と姿を消した。キッチンに不可解な暗号を残して。警察は徹底的に捜査したが、カタリーナは発見されないまま現在に至る。かつて捜査を担当したヴィスティングは、年に一度、夫のマッティンに捜査の報告をしに訪問を重ねるうちに、彼への疑惑を抱きつつ、友情に近い感覚も覚えるようになっていた。
    そんな折、スティレルという国家安全捜査局の人間がヴィスティングを訪れる。マッティンが、同時期に起きたナディア・クローグ失踪事件の犯人と目されるというのである。スティレルはヴィスティングに、マッティンとの関係性を利用して自白に追い込むよう持ちかける…。

    本書でも人間心理を捉える描写は現在である。また娘のリーネも絡んできて、ヴィスティングのパートと静と動が交互に入れ替わり、飽きさせない。リーネには娘が生まれており、なんとヴィスティングはおじいちゃんになって、孫娘に目尻を緩める姿も描かれる。

    ヴィスティングは優秀だが、天才型の警官ではない。コツコツと証拠を漁り、積み重ねた知識が沸点に達した時点で天啓を得るタイプの捜査官だ。家族思いだが、完璧な男でもなく、不器用で、我々と同様に些細な嘘もつく。そこが彼の魅力でもある。

    本書最大の山場は、山小屋でのヴィスティングとマッティンとのヒリヒリするようなやり取り。どんどん緊張感が高まり、このままどこへ進むのかと、手に汗握らずにいられない。このシーンだけでも読む価値あり!

    本書から版元が早川書房から小学館に移り、コールドケースシリーズと銘打たれて3作が訳出されている。ヴィスティングものの迷宮事件を扱うということか。これは次も読んでしまおう。

  • 最初から最後までずっと面白かった。中だるみすることもなくどんどん進んでいき、気づかぬうちに夢中になってしまっていた。シリーズ化されているのも納得だ。著者の他作品も読んでみたい。

  • 猟犬を読んだ時も感じたが警察とマスコミとの関わり方が独特。面白かったんだけどミステリーを読むには勢いが必要、暑さとオリンピックに阻まれてすごいノロノロ読みになってしまった。

  •  人間に寄り添った小説、と巻末解説でミステリ評論家杉江松恋が書いている。ミステリ―国籍では珍しいノルウェイ。人口2万3千の地方都市ラルヴィクは著者の住む町でもある。ヒーローは初老の警部ヴィスティング警部。ジャーナリストの娘リーナは、組織的に対立に近い立場でありながら、作品の一方のヒロインでもある。

     この地方都市にやって来たのは、出世頭であり冷血ぎみの手段を択ばぬ実績主義者の捜査官スティレル。鑑識技術の進歩により、27年前の未解決失踪事件の新たな証拠が出たという。ヴィスティング担当した25年前の別の未解決事件の被害者の夫がスティレルの第一容疑者として狙われる。マッティン・ハウゲンは妻が暗号を残して失踪し、その後毎年命日が近づくとヴィスティング警部の訪問を受け、私的に親しくなっていたので、スティレルは警部を利用しようと考えたのだ。

     スティレルはマスコミをも捜査に利用としてリーナにも近づき、古い事件の捜査再開ののろしをあげる。かくして出来上がる捜査のトライアングル。ヴィスティング警部と娘のリーナ、最新技術を駆使して捜査計画を描くスティレル。中心には失踪したカタリーナの残した暗号。

     地方都市の暗い10月が良い。警部と容疑者の25年の関係がもたらす距離感が良い。二人の間に流れる静かな男同士の血と温もりが良い。ヴィスティングを取り巻く家族たちの温かみが良い。容疑者マッティン・ハウゲンとの山小屋でのアウトドア・キャンプのシーンがクライマックスとなる。映画の如くノルウェイの美しい森と湖。小さなボートでのルアー・フィッシング
    や薪ストーブにコーヒーとコニャック。

     とてもとても大切に事件を扱うヴィスティングを、とてもとても重厚に、人間愛で包み込むように描く作家のペンが良い。疾走型のサービス過剰な作品が多い中で、時にはゆっくりした時間の中で、人間たちの営みを深く描きこむようなシック極まりない作品に飢えることがある。そうした望みを満たしてくれる時間が、この作品にはこめられている。

     極上のミステリ。優しさと残酷さが交差する北欧の家族や兄弟や夫婦や恋人たちの物語。本編は毎年一作ペールのシリーズ作品ということだが『猟犬』(こちらも素晴らしい作品である)以来邦訳は二作目。これだけ魅力的なレギュラー・キャラたちだ。日本でも人気シリーズとなって邦訳が進むことを強く願いたい。

  • ヨルン・リーエル・ホルストの初読。
    ヴィスティング警部の未解決事件シリーズ第一弾。

    静かな物語だった。
    派手な事件が起きるわけでもなく。外連味があるわけでもない。だけどとんでもなく面白い。

    24年前にカタリーナという女性が数字の羅列を残して消えた。ヴィスティング警部はカタリーナの夫マッティン・ハウゼンと、被害者の親族と捜査官を超え、ある種親友のような付き合い方をしている。
    一方、26年前の大学生行方不明事件に新たな証拠が出る。その証拠から、カタリーナの夫が容疑者として浮かび上がり。。。

    北欧の小説によく見られる、重く暗く残酷な感じは一切せず。ヴィスティング警部らが地道に、コツコツと捜査を重ねて真実を特定する、静かな作品。アン・クリーヴスのような。
    途中の場面でもあるが、波一つ立っていない湖面に向かってボートを漕いでいく、オールで水をかく音しか聞こえない、そんな静けさと寂しさが感じられる作品だった。

  • あらすじ
     警部ヴェスティングは24年前の未解決事件をまだ気にかけていた。カタリーナという女性が突然失踪した事件だ。夫のマッティンのもとを毎年訪れ、友情ではないが穏やかに交流していた。しかし、国家犯罪捜査局の捜査員がカタリーナ事件の2年前に起きたナディア失踪事件とマッティンの関係を再捜査しはじめた。ヴェスティングの娘、大手新聞社記者のリーネを巻き込んで。

     着実で堅実な作品。みんなひたすら26年前と24年前の事件について考え、新しい事件は起こらない。どんでん返しもない。突飛な人物も出てこない。ぱっと見地味な作品。でも、事件当事者と細く関わりながら事件についての考察を進めるヴィスティングや、産休明けからの復帰を望みガツガツ仕事をするリーネとか頼もしかった。潜入捜査?疑心暗鬼?の状況でヴィスティングとマッティンが釣りをしている場面は、ついつい楽しそうで心が和む。

  • スリリングな展開を繰り広げるミステリではなく、人と人との対話で物語が進んでいく。疑う者と疑われる者の心理戦。
    タイトルにもなっている〝code〟は予想外に呆気なかった。また、登場人物の長い名前がフルネームで何度も繰り返され読み難いと感じた。

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