彼女が最後に見たものは (小学館文庫 ま 23-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094070934

感想・レビュー・書評

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  •  残り数十ページまで謎が多すぎてハラハラドキドキだったが、真相が分かると、愛の深さに涙がとまらなかった。snsで幸せを装いアピールする里沙や成美と、世界中の子どもの幸せを願い寄付する郁子の姿が対称的で、ストーリーに深みを加えていたと思う。
     このシリーズの虜になった。第三弾も、楽しみで仕方ない。

  • 切ない話でした。
    とある廃ビルの一室でホームレスの中年女性の死体が発見されたところから話は始まる。女性は現場の状況、遺体の状態から一度屋上から転落しその後鈍器で頭部を殴打されて殺害されていた。着衣は乱れ、乱暴目的の行きずりの事件の様に思えたが、現場に残された証拠から少し前に発生した公園での男性刺殺事件との関連性が見えてくる。
    事件解決に向けて再度ペアを組むことになった三ツ矢と田所。一度見たものは忘れない瞬間記憶の能力を持ち、全てのことを簡単に信じない天才、三ツ矢。三ツ矢の能力で一つ一つ真実が明らかにされていく。
    ラストの謎解きは見事。登場した主立った人物のほとんどが何らかの形で事件に関係し罪を犯していた。伏線回収?というと、そこに気づけたのは三ツ矢の特殊能力があったからで、読者には気づく要素はなかったけれど、結末には納得できた。

    ホームレスになった松波郁子さんの人生を不幸と思うか、幸福と思うかは読んだ人それぞれの捉え方なんだろうけど、私には悲しい人生に感じた。

    三ツ矢とペアを組んでいる田所。
    この人、ずーっと『三ツ矢といると自分が惨めになる』『三ツ矢さんは何も教えてくれない』って同じ事の繰り返しで、何の活躍もしていないのが笑えた。唯一役に立ったのが、少年Aのマンションを突き止めたことくらい?
    自分では何も考えず、三ツ矢に言われたことしかやらず、捜査の手助けになる活躍もしない。この人はお話の箸休め的な存在なのかな?

  • シリーズ二作目、2人の刑事さんが事件を解決するのですが、本当にサクサク読めますね。
    他の警察の動きや捜査会議などの描写がほとんど無いので、とてもライトで読みやすいです。

    帯の書評に、
    『ラスト1行、脊髄にズン!ときた。』
    とありましたが、登場人物の松波郁子さんの強さを思い知らされました。
    大人は欲や願望に溺れて、子供は被害者になり、傷付け合ってしまった登場人物たち。
    うまく幸せになって欲しいです。

    ですがね、こんなに悲しい2つの事件、起きて欲しくなかった…
    そうしたら、この物語は無いわけだけれども。

  • 「……さんは殺されて悔しかっただろうし、無念だったと思います。でも、だからといって彼女の人生がかわいそうなものだと決めつけるのは、彼女に対して失礼ではないでしょうか」
    この三ツ矢の言葉が印象的。

    承認欲求、モラハラ、DV、弱者に対する社会の厳しさなど、社会問題が描かれている。そこに、被害者の姿が美しく浮かびあがる。体を張って誰かを守る覚悟があったのは彼女だけだった。

  • 殺人事件が絡んでいるのに…切ない。
    終わりに近づくにつれて特に感情揺さぶられた。

    最初は三ツ矢の掴みどころのない雰囲気が、読者である私も掴めなかったけど…だんだん癖になっていきました。
    振り回される岳斗の気持ちもちょっと分かり、かわいく思えた(笑)


    星4か星5はすごく迷い…
    序盤登場人物が多く、集中して読まないと思考が追いつかないときがあったので…星4つで!

  • 「あの日、君は何をした」に続いてこちらも読了。
    松波郁子視点のパートを読むともう(涙)
    辛い話だったけど、読んで良かった。
    乙女な田所刑事が面白くて、終始暗い感じにならなかったのもとても良い。

    瞬間記憶能力がなければ解決できない感じならちょっとリアルさにかけるかなとは思っていたけど、そこまで突飛なものでもなくて良かった。

    うちにある地球儀に指を当てて回してみる。確かに!

    こうして今平和に感想書いている自分や家族にだって、ひょっとしたら明日何か起こるかもしれない。今の暮らしが突然崩壊したらどうしよう…と思うと怖いなぁ。

  • 前作に続き同じ刑事バディが捜査をする物語。
    パスカルシリーズと呼ばれているみたいで、今後も楽しみ。

    誰の中にも生まれうる狂気。
    悲しい連鎖。
    見栄、身勝手さ。。

    章によって語り部が変わるので、飽きずにどんどん読み進めてしまう。結果一気読み…。

    ハッピーな物語ではないし、掛け違ったボタンに落胆してしまうけれど、人の優しさ、誰かを想うということ(例えそれらが間違った方向だとしても)に目を向けることを忘れないようにしたいとも思った。

  • 街は煌めき、行き交う人々は浮かれ…
    そんなクリスマスイブの夜、空きビルの1階で女性の遺体が発見される。
    他殺とされた50代と思しき女性の着衣には乱れがあり、そしてホームレスだった。

    岳斗(がくと)は先輩の三ツ矢刑事と事件を追ううちに、もう一つの事件に行き当たる。
    無関係に見えた2つの事件に、無関係と思われたいつくかの家族の物語が動き出す。

    ・家の中のことなど、本当のところ、外からでは何も分からない。
    ・SNSで他人が見せられるものは投稿者の〝こう見られたい自分〟でしかない。
    ・自分と他者との優劣でしか生きていることを実感できない人はいる。
    ・自分さえ良ければそれでいい。

    そしてそれが親である場合、いつだってその皺寄せは子どもへとのしかかる。理不尽だ。どうしようもなく理不尽で…痛みを伴う怒りは、自分自信が大人であると自覚し恥いるほどにやるせない。

    まさきさんの人の弱さ、狡さ、傲慢さ、勘違い、独りよがり、我儘さにブレがなく、それぞれの登場人物の人となりがリアル過ぎてゾッとする。
    自分のことしか考えることができない欠落した彼らに振り回されるのは子どもであり、心の美しい人。

    ーーーあなたが産まれてきたとき、あなたは泣いて、まわりは笑っていたでしょう。だから、あなたが死ぬとき、あなたは笑って、まわりの人が泣くような人生をおくりなさいーーー

    彼女が最後に見たものが、彼女の目に心に笑顔をもたらすものでありますように。

    今年の7冊目
    2022.2.7

  • 三ツ矢さんは何でもお見通しなんですね。
    とちょっと言いたくなる(言ってないけど)岳斗の気持ちになりながら読んだ。
    世の中には色々な人がいて、「そんなこと」と思うような事で殺人をする。
    でもその人の中では「そんなこと」ではなくて、
    どうしようもなく追い詰められているんだろうな、、
    と他人事のように思える自分でよかった。

    丁寧な生き方でいいなあ、素敵な生活で羨ましい、とか、
    きっと辛いんだろうな、悲しいんだろうな、可哀相、
    とか思われている人の心の中は誰にもわからない。

  • 前作(「あの日、君は何をした」)と同様に、全く関係がないと思われる二つの事件を探るうちに接点が浮かび上がっていき、意外な背景が明らかになって事件が解決するまでの展開は見事です。
    テンポよく進むストーリーは飽きることなくイッキ読みしました。幸せアピールSNSの不気味さが際立って良い味を出しています。

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。1994年『パーティしようよ』が第28回北海道新聞文学賞佳作に選ばれる。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。
著書に『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ある女の証明』『祝福の子供』『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』などがあり、近刊に『レッドクローバー』がある。

「2022年 『屑の結晶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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