海とジイ (小学館文庫 ふ 29-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094071771

作品紹介・あらすじ

最期を見据えた生き様から光を得る人生賛歌 舞台は、美しくもありときに恐ろしい顔を見せる海と島。3人のおじいさん=ジイの生き抜く姿と,そのジイから思いを受け取る人々の心模様をときに温かく、ときにいきいきと、ときに静かな筆致で描ききります。全3編の物語。●海神~わだつみいじめが原因で不登校になった小学四年生の優生。ある日、瀬戸内の島に暮らす曾祖父を訪ねることになる。死期が近いはずの曾祖父・清次は、病人とは思えないほど元気に優生らを案内し、饒舌に振る舞う。その後入院となった曾祖父と優生が交わした二人だけの約束とは……。●夕凪~ゆうなぎ70代後半の老医師とそのクリニックに20年以上勤め、支え続けてきた48歳看護師の女性。ある日、クリニックを閉院すると宣言した後老医師が失踪する。必死で探す看護師の女性が行き着いたのは瀬戸内の島。もう戻らない、と告げる老医師の覚悟とは。静謐でほのかに温もる大人の慕情。●波光~はこうすべてを陸上競技に捧げてきたが、怪我により人生どん底になってしまった澪二。試験を前に逃げるように子供の頃訪れていた島にある祖父の家へ。石の博物館のリニューアルオープンの準備を手伝ううちに、今まで知り得なかった祖父の青春時代、親友、そして唯一の後悔を聞き……。 【編集担当からのおすすめ情報】 藤岡陽子さんは、おじいさんを描かせたら日本一の作家と思っております!小説のキーである「海」と「おじいさん=ジイ」をテーマに、誰にも必ず来る最期までを「生き抜く」人間の姿を描いていただきました。 三人三様のジイの生き様。ジイたちは悲しみ、悔恨を抱えながらも生き抜いてきた年月の分だけ強く、その強さを周囲の人々に分け与えてくれます。 読んでくださった方々の心に、温かな希望が灯る一冊となりました。 そして、文庫化にあたり、解説を担当してくださったのは絵本、児童文学の大ベストセラー作家、きむらゆういち氏。独自の目線で、この作品の魅力を伝え、『ベストセラー絵本のように長く読み継がれるべき作品』と語ってくれています。この巻末解説原稿も、必読です。

感想・レビュー・書評

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  • 短編1話と中編2話からなる連作作品集。3作品共に各々完結していますし、いずれも素敵な物語です。3話を1つの物語として「人」「時」「場所」を絡めてバトンを繋いでいく様も見事です。中でも1話と3話の繋がりは絶妙で伏線回収の為に何度もページを行ったり来たりしました。
    全体を通して第2話の位置付けが微妙に思えますが、それは私では分からない何か意図があったのかと思います。
    「この作品はロングセラー絵本のように長く語りつがれていく作品だ」と帯にありましたが、正にその言葉の通りの名作でした。

  • 読む前から期待感がありましたがやっぱり良い本でした。
    年齢を重ねてきた人の話す言葉にはなんて重みがあるのか。一言に今までの人生の経験がつまっているのを感じるからなのかな。
    主人公は3人のおじいさんです。
    一人一人が後悔と誰かのために残りの人生を生きていこうとします。
    きっとこんなおじいさんがいてくれたら、どんなにほっと出来るかな。
    帯に書かれているように生き抜く力を与えてくれるおじいさん達です。
    私も人に何かを伝えられる、安心してもらえるような歳の取り方が出来たらな。

  • とても素敵な物語でした。

    『海とジイ』
    漁師のジイ 医師のジイ 石の博物館長のジイ
    3人のジイの物語。
    それぞれのジイの今まで生きてきた想い、そして、これからの想いが静かに優しく、悩みを抱えている登場人物を励ますようであり包み込むように描かれていた。
    3人のジイが色んな事を語っている様子が本当に優しくて温かくて、「私がジイと呼ばれるような歳になった時に、私は誰かに語れるほどの物があるだろうか。」と考えたら、物語に登場するジイのことを少し羨ましく思った。
    と言っても、ジイと呼ばれる年齢になるには、まだウン十年あるので、経験を重ねて素敵なバア(ジイにはなれないので)になりたいな。
    そんなことを考えながら読み終えた。

  • 夕凪が刺さったー

    なにも持たないまま、大切なものがなにもないまま死んでいくことが、怖いんですよ

    私からしたら医者という仕事をしている段階で、月島先生は社会からは必要とされている人間として、羨ましさはあるのだけれど
    そんな月島先生が「怖い」という
    そんなの、突きつけないでよ。って思う。立派な仕事をしている月島先生がそんな不安があるのなら、、
    自分はどうか、、

    あー怖い。
    そして、海を毎日眺めるような生活がしたい

  • 積んである新刊を思わず掴み購入したが、大変嬉しい事に素敵な作品である、出会えたんだよね。初めて聞く知らない藤岡陽子さんは人生設計もちゃんとして資格とか前向きな生き方。作品に表れているって事 清ジイは言葉を残して亡くなって、1人の少年を助けてくれた とにかく海が綺麗だと目に飛び込んで来る。3話とも違う話で でも繋がってた とても静かな力強いのでした。大晦日に孫と過ごして励まして語ってと嬉しい出来事でした。時系列がとても満足してた。あーあーまた読みたいです藤岡陽子さん

  • 自分も含めて多くの人は
    まっすぐ、平穏に暮らしたいと
    思っているだろう。
    それなのに、社会も人間関係も歪んでいるから
    歩くたびに何かにぶつかってしまう。
    “勇気を出して一歩踏み出そう“なんて
    美辞麗句を並べても
    ピクリとも動かない凝り固まった心に
    作中の3人のジイは寄り添ってくれる、
    “光はあるんだよ“と。

    自分も大切な人に寄り添えるジイに
    なれたらと思うのと
    いつかまたこの小説を思い出す日がくるのを
    楽しみにしながら最後のページを閉じました。

    素敵な作品との出会いに感謝です。

  • 帯に
    「3人のジイの生き抜く姿から光をもらう、人生を希望に変える3編」
    とあったが
    その通り

    私が一番よかったのは『海神』

    優生はジイのどこに影響されたのかな

  •  『海とジイ』は、藤岡陽子ファンであるわたし好みの作風でした。 いつものように、大いに感動し優しい気持ちになった。

     随分古いたとえですが、小柳ルミ子の『瀬戸の花嫁』のような、穏やかで素朴で美しい瀬戸内の島を舞台に、それぞれの人生の一つの帰路に立つ三人に、図らずも、三人のジイが己の人生・生きざまを見せる物語。

    第一話『海神 わたつみ』
     穏やかだけではない荒々しい瀬戸内の海。
    漁師のジイと不登校の孫の"命をかけた"約束。
    涙を誘う。


    第二話『夕凪 ゆうなぎ』
     地元医療に尽くしてきたジイと看護師、
    老いへの不安からの覚悟、凪ていく想い。
    『ここに自分の仕事がある』


    第三話『波光 はこう』
     石の博物館館長に転身したジイと受験生の孫、

    『時間というのは不思議なもんだぞ。 なんの目的もなく生きていると、時間は無制限にあるような気になってくる。どうやってつぶせばいいのかと、厄介なものにさえ思えてくるんだ。』
     
    『自分の弱さを受け入れた時に初めて、人は強くなれる。』

    ジイの語る半生に、胸が熱くなる。

  • 心が温かくなる

  • 良い本だと思う。離島で老後を過ごしたいなと思ったけど、いろいろ考えると無理だな。もっと歳をとったらいいじいさんになりたいな。これも無理だろうけど。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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