満天のゴール (小学館文庫 ふ 29-2)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094072341

作品紹介・あらすじ

人の生と死に希望をもたらす感涙医療小説 奈緒(33歳)は、10歳になる涼介を連れて、二度と戻ることはないと思っていた故郷に逃げるように帰ってきた。長年連れ添ってきた夫の裏切りに遭い、行くあてもなく戻った故郷・京都の丹後地方は、過疎化が進みゴーストタウンとなっていた。 結婚式以来顔も見ていなかった父親耕平とは、母親を亡くして以来の確執があり、世話になる一方で素直になれない。そんな折、耕平が交通事故に遭い、地元の海生病院に入院。そこに勤務する医師・三上と出会う。また、偶然倒れていたところを助けることになった同じ集落の早川(72)という老婆とも知り合いとなる。 夫に棄てられワーキングマザーとなった奈緒は、昔免許をとったものの一度も就職したことのなかった看護師として海生病院で働き始め、三上の同僚となる。医療過疎地域で日々地域医療に奮闘する三上。なぜか彼には暗い孤独の影があった。 一方、同じ集落の隣人である早川は、人生をあきらめ、半ば死んだように生きていた。なんとか彼女を元気づけたい、と願う奈緒と涼介。その気持ちから、二人は早川の重大な秘密を知ることとなる。 隠されていた真相とは。そして、その結末は・・・・・・・。 【編集担当からのおすすめ情報】 「この本を読んで、死ぬのが怖くなくなったわ。ありがとう」本が大好きだった私の母は、その言葉を遺し、数ヶ月後になくなりました。それは私にとってとても大切な思い出で、故にこの小説は私にとって、とても大切な作品です。これは私が体験した小さなエピソードですが、この作品が多くの人の心に響き「救われた」「死生観が変わった」など多くの熱くて深い反響をいただきました。そしてこの度、ドラマ化を機に待望の文庫化となりました。 著者の藤岡陽子さんは、長年看護師として働き、人の生と死を常に見つめ続けてきた方です。今回、この本の執筆にあたり、実際に京都の丹後地方で僻地医療に奮闘されている医師の方を取材し、物語に厚みとリアリティと熱が注入されました。今回の文庫化では、その医師の方と著者の特別対談が実現。僻地医療、在宅看取りなど、この小説世界が絵空事ではない、リアルな大切な問題だということに気づかせてくれます。 33歳、夫に棄てられ故郷に戻り、看護師として働き始める女性。その母親を一番近くで支える10歳の涼介。父親の入院をきっかけに出会った、孤独と寂しさを抱える35歳の医師。そして、人生をあきらめ、死を待っている72歳の女性。この4人が出会い、物語を動かしていきます。 誰もが心に傷を抱え、辛いことや悲しい思いを乗り越えて、生きていく。この物語は、それぞれの成長譚であると同時に、もっともっと根本的な、生きること、死にゆくことに思いを巡らせるきっかけを与えてくれます。人のすべて。人生のすべてを温かく、小さな小さな希望ととらえることができるようになる、そんな一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • シングルマザーの主人公とその4年生の息子涼介が過疎化する故郷に住む人達のゴールを見届けながら一歩一歩成長する物語ではあるものの、故郷を離れず満天のゴールを目指す人達の姿は穏やかながらも神聖ですらある。物語もグイグイと凄い力で引き込んでくる。
    ここにも素晴らしい作家さんがいたんだと、とっておきのものを見つけた感がたまりません。

  • 物語の舞台は、海が近くて星空も綺麗な医療過疎地域。
    そこが故郷で逃げ帰ってきた奈緒と息子の涼介。そして地元の病院勤務の三上。3人が主な登場人物。

    地域医療、訪問診療などが描かれてる中で、癌を患い人生の終わりが近づいている高齢の患者が登場する。
    読みながら、けっして病院の多くない故郷を思い出し、また、癌で亡くなった父のことを思い出しました。
    そして、これからの日本の医療の課題について語られているようにも感じました。

    『満天のゴール』
    ゴール=死ぬ日

    自分の死ぬ日がゴールと言えるような人生がおくれたら、どんなに幸せだろうと思いました。
    予定?では、まだまだ先のはずだから、それまで精一杯頑張ります。

  • どん底の人生にどう生きるか迷い避けて実家に戻った奈緒
    子供の頃の後悔に自らをせめ続けている三上医師
    自分の人生を諦めてしまっている老人早川さん。
    3人が出会い、お互いがお互いを少しづつ
    温め合いながら、前に進んでいくその姿は
    人生とは、生きるとは、後悔とはと
    たくさん考えさせられました。
    長い人生の中で出会いや別れを繰り返して
    人は深い厚みのある人間になるのだろうと思います。
    ですが、その道中は山あり谷ありで
    苦しい事もたくさんあるのだと思います。

    最後まで
    人間味あふれるお話に感動と涙がとまらず
    明日から私も頑張ろう。
    毎日毎日を大切に過ごそうと思いました。

  • ジイの第一人者に現役の看護師に、この時点で引き込まれる予感しかない。実際にそうなりました。出だしの弱い現実を受け入れられない社会に放り出された奈緒、浅はかな、どうしようもない人間の厚かましい旦那に愛人、愛人なのに立場が対等と抜かしやがる愛人ってあなたはただの愛人でしょうと一声かけてあげたい。まあ数年で同じ運命を辿るであろう、妻になったのが命とり、あーまた管を巻いたよう。三上先生の事ホント知らなかったんだ早川さん、でも最後にゴールが このゴールって石野先生が使っている言葉なのかな、死が怖くないと言わせる先生

  • 生きる力がふつふつと湧いてくるような1冊だった。

    シングルマザーになった奈緒は10歳の涼介を連れて故郷に戻り、資格を取ったきりになっていた看護師として働くことに。

    医療過疎といわれる地域で年老いて病を抱えながらも自分の暮らしを続ける人々や、医師の三上との出会いから奈緒は様々なことを感じる。

    人生の中には苦しいことや悲しいこともあるけれど、それでも精一杯生きるということ。

    満天の星、満天のゴール。
    私も誰かのために、自分のために胸を張って生きたいと思った。

  • 僻地医療、限界集落、かつて祖父母が生活していた離島を思い出しつつも、生活となりますと、都心で暮らす自分には想像もできない。

    そういった世界で、主人公と息子、とあるお婆さん、一人の医師を中心とした、死生観を考える小説でした。

    満点のゴール、素敵な考え方だと感じました。

    途中で心に響いたのは、仕事を階段に喩えた一言。『上がるのをやめてしまったらそこからさきの景色は見えない』頑張ろう!

  • みんな、幸せになれますように

  • この本はスピリチュアルな感じはないのだけれど、心の繋がりは人が思う以上のものだと思わずにはいられない。

    生きることは大変なことだけれど、救われることもたくさんあるし、救えることもあるのかもしれない。毎日、星のシールをもらえるように生きていこう、そして、満天の星空を見たい。

  • 藤岡陽子『満天のゴール』
    2023年 小学館文庫

    NHKで今週9/19と26にドラマ版が放送されるのを見て、映像を見る前にと、積読からこちらをセレクト。ドラマは3月にNHK 4Kドラマとして放送されたものの再編集版だそうです。
    さて、本物語は僻地医療、医療過疎という現代社会の問題をベースにした様々な〝愛〟の物語。
    生と死を誇張してドラマティックに演出するのではなく、身近なものとして見事に表現されてるため、素直に心に染み入ってきました。
    「死は生きたことの証」
    僕も満天のゴールを目指して日々を大切に歩んでいきたいと思いました。
    感涙とともに何とも穏やかな読了感漂う、素晴らしい作品でした。

    #藤岡陽子
    #満天のゴール
    #小学館文庫
    #読了

  • いつの間にか強く育っていた息子の涼介と共に、奈緒も踏ん切りをつけて、新しい生活に進んでいく。
    奈緒の夫はいつかきっと痛い目に遭うだろう。

    過去に大変な思いをした医師の三上、独居で頑張るトクさん、奈緒と三上の人生に深くかかわっていた早川さん。奈緒と涼介に関わる人達が、自分の辛さや痛みを優しさに変えていった人達だった。

    死ぬことを『ゴール』という言葉に置き換えると、気持ちが楽になる。まさしくそうだなと思った。
    頑張った日の数だけ星形のシールを貼り、その星がたくさんたまって、満天の星空ができたときにゴールする。病気で大変な思いをしているときに、そういう考え方ができたら、少しだけでも救われると思う。私も満天のゴールを目指して、頑張っていこう、と力をもらえた一冊だった。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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