懲役病棟 (小学館文庫 か 46-3)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094072600

作品紹介・あらすじ

舞台はなんと女子刑務所! 「後悔病棟」「希望病棟」に続くシリーズ第三弾!神田川病院の“金髪女医”太田香織と看護師・松坂マリ江は、ひょんなことから女子刑務所に派遣される。当初は、受刑者との距離を感じていたが、同僚から授かった不思議な聴診器を胸に当てると――惣菜四三〇円の万引きで懲役二年を科せられていたり、夫からの執拗なDVに耐えきれず殺害に及んでいたり、はたまた悪い男にそそのかされ、クスリに手を出していたり、と彼女たちの切実な事情が見えてきた。二人は受刑者たちとは個人的に接してはならないという禁を破り、あっと驚く方法で解決に乗り出してゆくが……。「受刑者は私だったかもしれない――そんな想像を読者に抱かせる本書を心からお勧めします」村木厚子さん(元厚生労働事務次官)

感想・レビュー・書評

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  • 04月-14。3.5点。
    病棟シリーズ第三弾。今回は金髪医師が例の聴診器を引き継ぐ。女子刑務所の診療所へ半年間出張、例の中年看護師と一緒。

    シリーズで一番面白い。

  • 病棟シリーズ第三弾。
    「後悔病棟」の早坂ルミ子医師、「希望病棟」の黒田摩周湖医師に続き、パツキンの太田香織センパイが登場!

    太田香織(37歳)と、ベテラン看護師の松坂マリ江(50歳)は、青葉市の女子刑務所に常勤医と看護師として出向することになる。
    彼氏に付いて暴走族に入ったこともある香織だが、元々がお嬢様で世間知らず。
    刑務所に入るような女はクズばかりだろうという偏見を持っていた。
    熱を出して診察室を訪れる受刑者の印象が、「普通の女」でいささか意外に思う。
    ルミ子から託された不思議な聴診器で診察するうちに、彼女たちは加害者ではなく、むしろ被害者ではないかと気づく。
    なんで被害者の方がチョーエキ受けてるの?
    不条理である。

    本当なら、覚醒剤を勧めて稼がせる彼氏や、暴力を振るって何度も怪我をさせる夫の方を監禁して、性根を叩き直すべきだと私も思う。
    しかし一方で、刑務所とは、頑丈なシェルターという一面を持ってはいないだろうか。
    不自由な生活ではあるが、塀の中にいる間、彼女たちは守られているのだ。
    DV夫への傷害で実刑を受けている二人の女性は、服役中に家族の奔走で離婚が成立し、差し入れ、手紙、面会も多く、その表情は笑顔。同室の者たちから羨ましがられている。
    しかし、釈放されたら、元夫がまた干渉してこないとは限らない。
    刑務所を出た後の方がいろんな意味で大変なのではないだろうか。
    再犯を犯さないためには、出所した後に安心できる居場所があることが一番大切である。
    香織は、若い頃に見た暴走族の少女たちは居場所が無かったのかもと気づく。

    女性の受刑者の多くが、男によって人生を狂わされている。
    彼女たちの人生は重たいが、同室の受刑者同士の友情や、香織とマリ江の軽快な会話のやり取りが、読むことをつらくさせない。
    「治って出ていく」という点で、刑務所は病院と似ている。



  • 後書きにもありました。

    人はどうしたら罪を犯さずに済むのか、
    また、真に更生するにはどうしたらいいのか。

    人生は、自分の思うようには動いてはくれず、思わぬ方向に進んでいくことの方が多いのかもしれない。
    更生するには……住む場所や最低限のお金、そして「希望」。
    どれか一つ欠けても更生するのは厳しいかもしれない。

    聴診器の件はファンタジーだけど、
    ハラハラドキドキしながら十分に考えさせられる良書でした。

  • 聴診器でその人の考えが読めるシリーズで、今度は女性刑務所の病棟での話。前作の希望病棟とテーマが近く、社会の(特に女性が抱える)の課題ゆえに犯罪を犯してしまった人々を描いていた。
    犯罪を肯定するような描写にはさすがに「どうなの?」とは思ったが、犯罪者に同情の余地があるのは確かなので、このような作品がきっかけで制度や法律が見直されれば良いと思った。

  • 2024.03. Audible

    本当に加害者というよりは被害者。
    どうにかしたいね。

    Amazon 本の紹介
    舞台はなんと女子刑務所!
    「後悔病棟」「希望病棟」に続くシリーズ第三弾!
    神田川病院の“金髪女医”太田香織と看護師・松坂マリ江は、ひょんなことから女子刑務所に派遣される。当初は、受刑者との距離を感じていたが、同僚から授かった不思議な聴診器を胸に当てると――

    惣菜四三〇円の万引きで懲役二年を科せられていたり、夫からの執拗なDVに耐えきれず殺害に及んでいたり、はたまた悪い男にそそのかされ、クスリに手を出していたり、と彼女たちの切実な事情が見えてきた。
    二人は受刑者たちとは個人的に接してはならないという禁を破り、あっと驚く方法で解決に乗り出してゆくが……。
    【編集担当からのおすすめ情報】
    シリーズ第三弾となる本作も、垣谷節全開! 現実に根差した理不尽をうま~く料理しながら、時にピリッとしたスパイス(怒り)をもまぶした物語を、著者は私たちに、すっと差し出しだします。本作の最初の読者といってもいい、解説を務めた村木厚子さん(元厚生労働事務次官)の言葉を紹介します。
    〈読み始めてしばらくは、リアルさにとにかく圧倒されました。ここに書かれていることは本当のことばかりと思いながらページをどんどんめくっていったんですが、途中から「こんなにリアルだったら、どうやって話をまとめるんだろう?」と勝手にハラハラし始めたんです。そうしたら……エンターテインメントとしても見事な仕上がりになっていた〉
    極上のエンタメ作品をどうぞご賞味あれ!

  • 聴診器を通して心の声が聞こえる病棟シリーズの第3弾。
    第1弾の後悔病棟が良かったが、この懲役病棟はそれよりもずっと良かった。
    女子刑務所に出向?になった元暴走族の女医 太田香織と看護師の松坂マリ江。
    特に太田香織は囚人たちは犯罪者、同情の余地はないと豪語していたが、聴診器を通し万引き犯、殺人犯、覚醒剤犯、放火犯の心の声を聞き、元の病院の医師たちの力も借りつつ、生きる希望を与えていく。
    みんながみんな同情に値する事情のある人ばかりでは無いのだろうが、読後は少し考えさせられるところもあり、しみじみと感動した。

  • 受刑者と医師の関わり合いが面白い
    受刑者は極悪人なわけでもなく自分達にとっても身近な話だった。
    特に放火で捕まった人はこれから誰になったとしてもおかしくはない話
    柿谷美海の話は誰かが悪いと特定するわけでもなく、いろんな人の立場になって考えることを教えてくれる
    香織とマリエさんがなんだかんだ仲良くしていて途中から楽しくなった

  • **「心の刑期を解く鍵―『懲役病棟』を読んで」**

    『懲役病棟』は、ただの物語ではありません。女子刑務所の静かなる日常を舞台に、金髪女医・太田香織と看護師・松坂マリ江の目を通して、私たちにもう一つの世界を垣間見せます。このシリーズ第3弾では、特別な聴診器を通じて、受刑者たちの心の奥に秘められた物語が浮かび上がります。

    物語の核心は、犯罪と向き合うことの難しさと、罪を犯した人々が背負う重い心の荷物です。しかし、それだけではなく、人間がどのようにして環境や日常のストレスによって狂わされるのか、そして、どうやってその状況から抜け出し、自身を再構築するかというテーマが織り交ぜられています。

    シリーズ第3段として、この物語は一貫して、罪と罰だけでなく、希望と再生についても語ります。犯罪者を単なるラベルで見ず、彼女達の背後にある人間性と葛藤に焦点を当てることで、読者に対し深い共感と理解を促します。また、香織とマリ江のユーモアと温かさが物語に光をもたらし、暗い舞台背景の中でも人間の強さと優しさを見出します。

    この物語を読むことで、自分たちも同じ過ちを犯す可能性があるという事実に直面させられます。しかし、それと同時に、どんな状況からも立ち直ることができる希望と勇気も与えてくれます。『懲役病棟』は、刑務所の壁を越え、人間の弱さと強さの真実を描き出した、極上のエンターテイメント作品です。

    読後感としては、ただの続編を望む以上に、作者がこれからも私たちに提供するであろう深い洞察と人間の心に対する温かいまなざしを待ち望んでいます。この物語は、読む人々の心に長く残り、多くの人にとっての視点変容を促すことでしょう。

  • 女子刑務所にお馴染み神田川病院の医師が派遣されるお話。

    派遣されたのは、暴走族経験のある香織先生と肝っ玉母さん看護師まりえさん。もう、ピッタリ。

    2人は人情味溢れた診察で、家族問題にも首を突っ込み、受刑者のこれからの人生を方向づけていく。

    たまたま恵まれた部屋仲間で、例の聴診器があったから、そして小説の世界だからだけれど、ハッピーエンドで、爽快。

    でも現実は厳しい。
    舅や教育長みたいな、自分が諸悪の根源という自覚のない凝り固まった人物が、改心しないまま被害者意識でいることが、悔しい。

  • 前作に引き続き、暖かくて人情ある素敵なストーリーでした。

    病気だけでなく、精神的な部分までも診てくれるお医者さんがいてくれたら助かる人沢山いると思います。
    病気は精神的な面が大部分ですから。
    香織先生のようなおせっかいまで焼くような先生も昭和の昔はいたような気がします。

    これは続編あるのかな?と思うような終わり方でしたね。
    秋月さんはその後どうなったのでしょう?

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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