マザー/コンプレックス (小学館文庫 み 23-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094072624

作品紹介・あらすじ

地下鉄の”ある事件”を機に母性が暴走する 蜂須賀恵理子は、悲嘆に暮れている。自慢の息子が痴漢行為を咎められ、逃げようとして地下鉄に轢かれ、死んだのだ。冤罪だと信じる恵理子は、亡き息子のSNSにのめり込み、事件の真相を探ろうと奔走する。夏川美夏は、激怒している。高校生の娘が電車内で痴漢を捕まえたが、被害には長い間遭っていたというのだ。美しい娘には芸能界で活躍してほしい。週刊誌記者に身辺を嗅ぎ回られ、美夏は苛立つ。高奈琴絵は、幸せの絶頂から突き落とされる。不妊治療の末、ようやく待望の子供を妊娠した矢先、夫が痴漢をして逮捕されたのだ。琴絵を責める義母に、逆ギレする夫。離婚がちらつくが、一人で子供を育てる自信がなく琴絵は途方に暮れる。地下鉄で起きたある事件を発端に、歪み、崩壊していく三つの家族。そして、新たな悲劇が起こる――暴走する母性の先に衝撃の結末が待ち受ける、ドメスティック・スリラーの新たなる傑作! 【編集担当からのおすすめ情報】 『冷たい手』『あなたが選ぶ結末は』他、衝撃のミステリを放ってきた著者が「母性」をテーマに書き下ろした、新たなる傑作です。解説はミステリ評論家の若林踏さん。

感想・レビュー・書評

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  • ◎編集者コラム◎ 『マザー/コンプレックス』水生大海 | 小説丸(2023/06/08)
    https://shosetsu-maru.com/column_editors/2023-06-03

    「社労士のヒナコ」シリーズ著者・水生大海さんに聞く「時代を写すお仕事小説」の魅力 『希望のカケラ 社労士のヒナコ』(水生 大海) | インタビュー・対談 - 本の話(2023.01.06)
    https://books.bunshun.jp/articles/-/7706

    雪下まゆ(@mayuyukishita) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/mayuyukishita/

    Works | Mayu Yukishita
    https://www.yukishitamayu.com/

    マザー/コンプレックス | 書籍 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09407262

  • いい加減にして、の一冊。

    家族が痴漢事件に関係した…突然崩れた平穏な日常。

    息子の無実を何が何でも信じて疑わない母、娘の被害にただ怒り狂う母、夫に不安がやまない妊娠中の妻という、三つの家庭模様を描いたミステリ。

    増殖していく、家族のために家族に対しての感情、行動。
    そしてさらなる悲劇に辟易。

    特に周りが見えない猪突猛進型の母たちの行動はただ単に次なる誰かを追いつめるだけにしか思えず、これ以上はいい加減にして、という思いが募った。

    勘違いな愛ほど後々まで厄介だ。

    そしてムカつきやまないアイツにいい加減にしろ!な読後感。


  • 我が子のことしか見えなくなった母親が
    狂騒する様を描いた物語に、自分のことしか
    考えられなくなる怖さをしみじみ感じました。

    身勝手な願望と歪んだ愛情は、
    視野を狭め冷静な判断力を奪う。
    そして、強すぎる愛情が交錯して
    更なる事件の扉を叩く。

    やったことはいつか自分に返ってくる。
    大きすぎる代償に立ち竦むとき、
    後悔のニ文字が頭を過るけれど
    その因果応報に抗う術はない。

  • 自分の子供のこととなると暴走して先走ってしまう母親たち。
    こういうのは現実にも結構いるものなんだろうな。
    見たいものしか見ない人間にならないように、自分も気をつけたいと思った。

  • 色々な母親が出てきて
    私も母親なので共感するところもあり
    ここまでするかと思ったり。

    大切に大事に育てたつもりでも
    子供からすればエゴを押し付けられているだけ。
    その圧力で心が歪んでしまうなんて
    そんなことは望んでいなかったのに。。

    ちょっと後出し感はあったけれど
    考えさせられた。

  • 名古屋の地下鉄で起こった二つの痴漢事件。
    一つ目の事件で容疑をかけられたまま地下鉄に轢かれて死亡した男性の母親と、二つ目の事件で逮捕された妻と、その被害者の母。
    三人の女性がそれぞれに「真相」を求めて暗闇の中に手を伸ばしていく。
    何が起こっていたのか。何が見えていないのか。「人間」の嫌な部分を描かせたら天下一品の水生大海。
    今回もさすがですわ。登場人物に共感度ゼロ!!!
    そうきたか、そうくるのか、の最後にまちうける「結末」にニヤリ。
    この後味こそが水生小説の醍醐味。途中で休憩挟めないので休みの日の一気読みがよろしいかと。

  • 電車内での痴漢行為を取り巻くお話。
    出てくる人ほぼ身勝手で、誰にも共感出来ないのに、胸くそ展開に引っ張られてページを捲る手が進んだ。
    恵理子と美夏は典型的な毒親。暴走っぷりが凄まじかった。
    やったことはいつか自分のところに返ってくる。まさにその通り。

  • 嫌な感じ。ここに描かれる母親は皆んなイヤな感じ。
    痴漢の事件から始まるように見える母親達の歪んだ愛と欲望と感情の沼の様に見せるストーリー。
    上手い表現と人物描写。
    子供を持つ親として、面白くない、そして面白い。

  • 地下鉄の痴漢事件に端を発する、3家族の崩壊物語

    以下、公式のあらすじ
    --------------------------
    地下鉄の”ある事件”を機に母性が暴走する

    蜂須賀恵理子は、悲嘆に暮れている。自慢の息子が痴漢行為を咎められ、逃げようとして地下鉄に轢かれ、死んだのだ。冤罪だと信じる恵理子は、亡き息子のSNSにのめり込み、事件の真相を探ろうと奔走する。
    夏川美夏は、激怒している。高校生の娘が電車内で痴漢を捕まえたが、被害には長い間遭っていたというのだ。美しい娘には芸能界で活躍してほしい。週刊誌記者に身辺を嗅ぎ回られ、美夏は苛立つ。
    高奈琴絵は、幸せの絶頂から突き落とされる。不妊治療の末、ようやく待望の子供を妊娠した矢先、夫が痴漢をして逮捕されたのだ。琴絵を責める義母に、逆ギレする夫。離婚がちらつくが、一人で子供を育てる自信がなく琴絵は途方に暮れる。
    地下鉄で起きたある事件を発端に、歪み、崩壊していく三つの家族。
    そして、新たな悲劇が起こる――
    暴走する母性の先に衝撃の結末が待ち受ける、ドメスティック・スリラーの新たなる傑作!
    --------------------------

    子供想いの母親が、三者三様の暴走
    登場人物に共感できる要素がほぼない
    もし一番近しい人を挙げる、せいぜい恵理子の長男くらいか?

    解説でも書かれてあるけど、敢えて感情移入できないように描いているんだろうなぁ……

    高奈の家族はどいつもこいつもやべぇ
    義母は言わずもがな、夫も加害者なのに典型的な被害者妄想に取りつかれてるし、琴絵も見かたによっては被害者ではあるんだけど加害者家族という意識が薄いというか、いくら夫の暴走を止めるためとは言え被害者家族に謝罪を促すのはおかしいでしょ


    子供を溺愛する母親という存在って厄介だよなぁ
    本人は悪いと思ってないんだもの……
    善意からくる無自覚な悪意が一番対処に困る


    それはそうと、地理的によく知っているところが舞台になっているのでものすごくわかりやすい

    東山線の藤が丘、上社、栄、伏見はまぁ利用するし
    浄心、西高蔵もなんとなく位置関係はわかる

    物語の舞台としては東京や関東地方がメインで描かれる作品が多いけど、その都市をよく知らない人にとっては解像度がどうしても低くなってしまう
    でも、今作は作中の情報と自分の知っている情報がマッチしているのでわかりやすい

    地下鉄の描写に関しては現実に即してあるけど、学校に関しては架空のところと思われる
    お嬢様学校と言えば椙山、淑徳、金城だけど、作中の条件全てに当てはまる学校はない
    どの学校も制服はチェックスカートではないのでね
    金城は最寄り駅が東山線ではないし
    淑徳、椙山は覚王山、星ヶ丘なので該当するけど、流石に特定のモデルではなく混ぜた要素になっているのでしょうね

  •  痴漢事件をめぐる、3人とその家族の人間模様。水生大海さんらしい次々に起きる展開に一気に引き込まれる。痴漢事件をめぐる被害者、加害者と母親の人間模様。犯罪かえん罪か。3人3様に母親の思いの強さや支配欲が詳らかになり、その子供たちや身籠もる家族の心情が徐々に明らかになる。隙を見せない小気味よい展開、いつしか背筋がゾーッとするホラーの世界に紛れ込み冷や汗する。母子関係を考えさせられる作品でありつつ、男尊女卑や家父長制に警鐘を鳴らす作品でもある。

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著者プロフィール

三重県生まれ。2009年、島田荘司氏選考の第1回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作を受賞した『少女たちの羅針盤』でデビュー。14年「五度目の春のヒヨコ」が第67回日本推理作家協会賞短編部門の候補に。20年『ランチ探偵』『ランチ探偵 容疑者のレシピ』が「ランチ合コン探偵 ~恋とグルメと謎解きと~」のタイトルでTVドラマ化。ほかに「社労士のヒナコ」シリーズ、『冷たい手』など著書多数。

「2022年 『ランチ探偵 彼女は謎に恋をする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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