- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094072891
作品紹介・あらすじ
家族と愛をめぐる難題に挑む鮮烈な傑作長編 タイ・バンコクからの帰国子女である高校1年生の漣は、通学中の痴漢や思いやりに欠ける日本の日常に馴染めず、心細さを感じていた。家に帰れば、理解あるやさしい両親と大好きな姉が漣を心配してくれている。だが、姉は離婚をしてから、人が変わってしまった。そんななか、高校の渡り廊下で出会った先輩に、漣の心は一瞬で囚われてしまう。やっと見つけた自分の居場所に、高まる気持ちを抑えることができない漣だったが、あるとき漣は、彼との恋が漣の家族を傷つけるものであることに気がついてしまう。大切な家族のために、別れるべきなのかもしれない。でも、自分の幸せを優先することは、そんなにいけないことなのだろうか。漣は家族と自分の幸せのため、新たな未来を探す覚悟を決める。初恋と青春を捧げ、漣が導き出した答えとは……。バンコクに住んでいた著者が描くタイの描写は圧巻! 気鋭の作家が、高校生のみずみずしい視点で家族と愛をめぐる難題に挑む傑作長編、待望の文庫化!
感想・レビュー・書評
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主人公の少女は、父親の転勤に伴いバンコクで中学まで生活して帰国。忙しない日本になかなか馴染めない。
バンコクでの観光でない生活感がうまいなと思っていましたら一木さんバンコクにお住まいとか。
少女の姉が元夫のDV(精神的肉体的経済的!)で精神的に追い詰められて離婚。
それを知らなかった少女は元夫の弟に恋してしまう。DVについて知った後でも なかなか彼のことを諦めきれない。少女の家族は当然大反対。
DVに堕ちていく状況、共依存となっていく恐怖、別れるための裁判と その後の精神的打撃を濃厚に読める。
そして、他のDV系の小説と違うところは DVを病気として認識して 更生プログラムや施設の存在に言及して 加害者の将来にも意識しているところ。
少女は 自分の恋の為でなく 姉の幸せ 元夫の未来までより良い方向へと動き出す。
一木さんは、初版印税を更生施設に寄付するとしている。それは、一木さん自身も厚生の必要性 加害者である人達への救済も考えているということなのかな
果たして 被害を受けた人と家族はどこまで受け入れるか。病気と性格の区別はあるのか。
難解な問題提示です。
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一木けい(いちきけい)さんは初めて読みました。とても読みやすい文章ですぐに小説の中に入れた。
テーマはDVと重く、心に響く言葉がところどころにあった。『生きているではなく、ただ死んでいないという暮し』『この人は自分にとって唯一無二って相手に出会ってしまうのって幸せなことじゃないのかも』人生は楽しいことと辛いことを比率で言うと1:9なのかも知れない。思い通りに行かないことしかない。
その中で家族がDVされたら、家族にDVされたら、私だったら。。。主人公のようには思えないし出来ない。主人公はDVした人が変われるかもしれないと信じている。私は絶対変わってほしくないと思う。でないとDVを受けた人は何だったのか?殴られ損?こいつが変わるために殴られたの?結局こいつのために生まれてきた?なんて考えてしまう。
主人公には感情移入出来なかったけど、お姉さんの気持ちは痛いほど分かった。味方になってほしい家族にあんなこと言われたら、私だったら耐えられない。結局DVを受けた人じゃないとその気持ちは分からないのかもしれないね。
タイ在住の著者はさすがで現地の様子が素晴らしく描写されてて、行ってみたくなってしまった。国王が亡くなって国民が悲しみにくれる姿や、渡れない道路、聞いたことのないフルーツなど、住まないとこんな風には書けないだろうなぁなんて思いました。
読むのは辛い人もいるかも知れないけど、素敵な小説でした。