こうふく あかの (小学館文庫 に 17-5)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094086089

感想・レビュー・書評

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  • 『こうふくあかの』— 複雑な人生を紡ぐ、愛と再生の物語

    西加奈子氏の『こうふくあかの』は、個々の感情と運命を細やかに綾なす作品であり、家族や自己認識のテーマを掘り下げています。本作は、中間管理職の男性と、プロレス界の無敵の王者アムンゼン・スコットという二つの異なるストーリーを交互に描いており、それぞれの物語が読者に強烈な印象を与えます。

    物語の一方では、39歳の調査会社の中間管理職が主人公で、彼の妻が別の男性の子を宿すという衝撃的な出来事から始まります。彼の内面の葛藤や逃避行が繊細に描かれており、読者に深い共感を呼びます。彼の成長と変化は、特に妻の出産とその後の家族との絆の再構築を通じて感動的に描かれています。

    一方で、プロレス団体のチャンピオン、アムンゼン・スコットの物語は、彼の競争の世界での挑戦と対立を背景に、彼の強さと脆さを掘り下げています。彼の戦いは、文字通りと比喩的に、彼自身のアイデンティティと人生の目的についての深い自己探求を表しています。

    西氏はこれらのキャラクターたちの心理的な複雑さを鮮やかに描き出し、彼らの苦悩や喜びをリアルに伝えています。特に、主人公の内面の変化と成長が、生きる希望と再生の美しいメッセージを提供しています。

    『こうふくあかの』は、西加奈子氏の卓越した文才が光る作品で、人間関係の複雑さと生の多様性を見事に表現しています。この小説は、登場人物たちの心の動きを通じて、読者自身の感情や経験に深く訴えかける一冊です。生きることの困難と美しさを同時に描き出し、最後には読者に希望と癒しを提供します。

  • 作者が意図したプリミティブな勢いは受け取れたと思う。

  • 生命力の強さが感じられた作品でした。
    主人公の取り巻く世界とプロレスラーの話と境遇は違うけれど似通って並行していて楽しく読めた。

























































  • 猪木…素晴らしい人なのですね。

    人は赤いトンネルを生死をかけて通ってくる。
    命を生み出す器と世界を結ぶ道。

    神秘とはこういうことなのだろうなぁ。

  • こう言うことを言うと、誤解を生むかもしれないが、女性だから書ける男性小説。

  • 西さんにしては駄目じゃない人が主人公 ある意味駄目なんですが
    プロレスが題材になってる作品、プロレスを知る人間ならより楽しめる
    ただアムンゼンと新人レスラーの試合の描写は残念に思った
    兎島と主人公のやり取りは結構良かった

  • SFになるんだろうか?近未来ものとしては、異質で、みどりの、より俺は好きでした。

  •  部下に気を遣い、理想の上司を演じる靖男(俺)。美人だがバカでつまらない妻や、同期の男などを見下している。妻とは3年もセックスレスなのに、突然妻から妊娠を告げられる。
     プロレスのリングのある不思議なバーで、アントニオ猪木のビデオを見ながら飲むようになる。ここも不思議な雰囲気。恋バナに花を咲かせる婆さん二人もそこの常連。

     もう一つの、2035年プロレスラー、無敵のアムンゼン・スコットの話とどこかでつながるのだろうな、と思っていたら、最後にわかった。

     主人公の靖男が嫌いだという感想が多いが、私は結構親近感を持った。誰しもこういう思いを持っているのではないかな。好かれたくていろいろ頑張っているのに、空回りする。それは、心の底では相手を見下しているからかもしれない。

  • 人間って、血なんだろうか。そんなことをおもった。

  • ムッとした汗の匂い、バリの街で漂っていた匂い、生命の匂い

    すごく生きることが大変そうな男性の話。
    みんなの共通項、赤くて暗い女性の体の中から、この世に出てきたこと。

    あ、あと「あんた、エロくって、えらい」には声出して笑いました。

著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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