【本の内容】
「わたし、馬と話ができるのよ…」あのこはそういった。
村の遠くでサイレンがなり、高い空に、きれいな鳥みたいな飛行機が、いくつもいくつも町へむかって飛ぶのが見えた。
町が空襲にあったのは山あいの村からあのこが消えた夜のことだった。
日本がいくさに負けた年の疎開地での少年と少女を描いた永遠の名作「あのこ」など、児童文学の第一人者が魂を込めた「あの戦争と少年少女たち」の物語。
抒情的なファンタジーから、おとなが語る戦争の真実、そして幻想的な童話まで―子どもにもおとなにも読んでほしい感動の名作十六篇を一冊に編集した、オリジナル文庫。
「あの戦争と少年少女たち」の感動の物語
[ 目次 ]
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生きるか死ぬかという極限状況に人間を追いやり、人間性を奪う戦場は恐ろしい。
しかし、戦争の恐怖は戦場にのみあるのではない。
父や子、恋人が戦地へと駆り出され、残される人がいる。
疎開で環境の激変を強いられる子どもがいる。
そして空はいつもと変わらない空だけど、その空からいつ爆弾が落ちてくるかはわからない。
当たり前の日常が、当たり前でなくなる。
それが戦争だ。
今江作品を愛読してきた編集者の手によって編まれたこの童話集は、なんということもない日々の暮らしを描きながら、そこに忍び寄る戦争の黒い影を描く。
〈わたし、馬と話ができるのよ……〉と語る少女を描く「あのこ」。
いくさが終わってからも、町の空を見張るおじいさんを描く「ひどい雨がふりそうなんだ」など16編。
ファンタジーから叙情的な作品まで、いずれも静謐で美しい。
そして、美しく、静かであるゆえに、その悲しみが深い。
ひんやりとした読後感に終戦の夏を思う。
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