ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?: 聖書の物語と美術 (小学館101ビジュアル新書)

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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098230303

感想・レビュー・書評

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  • 豊富な図とともにその絵画にまつわる物語を分かりやすく解説してくれている。サロメの物語と絵の変遷や水浴のスザンナの表現の変遷が面白かった。ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は結構ボロボロになってしまったんだなと思った。裏切り者の描き方、犬と猫、イエスのこめかみに打たれた穴、絵の外部との一体化、イエスの口の描き方で物語のどの場面を指しているのかの特定などが述べられている。絵画の鑑賞は聖書の物語を字を読むことなしに伝えるものだと分かった。

  • 近代になって風景画や静物画が独立したジャンルとして成立する以前は、西欧では絵画は基本的には何らかの物語りと結びついて、その中身を人々に語り伝えるためのツール。つまり絵画とは「読む」ものだった。
    その中心となるのが、「ギリシャ・ローマ神話」であり「聖書」の世界である。

    本書では、後者の「聖書」を中心とした絵画の話で、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井に描かれた「天地創造」から始まり、最後の第7章はタイトルにもなっているレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」へと続く。

    特に第7章は面白く「最後の晩餐」のテーマが過去にどのように描かれてきたかということから説き起こし、レオナルドの「最後の晩餐」への話へ展開してゆく。

    この作品はその誕生から極めて不幸な歴史を歩んできた。遅筆で描き直しを好んだレオナルドは(堅牢で保存性の高いフレスト画を嫌い)テンペラ画で描いたため、レオナルドの生前から既に剥落が始まり、その後2度の洪水に水没し、第2次世界大戦では連合軍の爆撃で、建物が半壊し3年も雨ざらしになり、16世紀~19世紀にかけての修復作業が結果として、かえって絵を損傷させた。このような度重なる不幸にもかかわらず、今でもこの絵を観ることができるのは奇跡であるという。本当に奇跡としか言いようがなと思う。
    そしてこの絵が何故名画なのかの解説が始まる。これ以上書くと、まだこの本を読んでいない人は、楽しみが減ってしまうので、以下省略します。

    ただこの絵にしろ初めに書いたミケランジェロの絵のにしろ、壁や天井に描かれているので、日本では観る事が出来ないのが残念です。

  • 聖書(限らないけど)に書かれていないこと、抽象的なこと、を観る人に伝わるように描けた絵が傑作である、ということかな?
    てことは、観るほうも伝えたいことを読み取らないといけないので、「わー、きれい。好きー。」「よくわかんない。嫌いー。」では駄目てことかあ(^_^;)

著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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