- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098253555
作品紹介・あらすじ
世界の果てに発見! こんなところに中国人
中国本土14億人。世界の華人6000万人。中国人観光客1.5億人。分け入っても分け入っても中国人はそこにいる――。では彼らはその地に何をもたらしたか。ケニア、ルワンダ、カナダ、NY、タイ。大宅賞作家がもっと分け入る!
◎主な内容
アフリカど真ん中に出現した「紅い帝国」――ルワンダ・キガリ
“中華鉄道”で味わうサバンナ紀行――ケニア・ナイロビ
秘密結社チャイニーズ・フリーメイソンを直撃!――カナダ・バンクーバー
中国農村版マッドマックス――広東省掲揚郊外
元ニート、中国一の恐竜博士になる――北京
民主活動家のアジア潜行2000日――タイ・バンコク
国際指名手配・郭文貴、かく語りき――アメリカ・ニューヨーク
世界に広がる「中華システム」を炙り出す弾丸ルポルタージュ7連発!
【編集担当からのおすすめ情報】
未知なる中国を探し求めて、日本や東南アジア、さらには中国本土のアンダーグラウンドを訪ね歩いた『さいはての中国』がパワーアップして、帰ってきました。ルワンダやケニアのルポルタージュ、カナダの秘密結社チャイニーズ・フリーメイソンやNYの国際指名手配実業家への直撃・・・・・。今回も安田ワールド全開です!
感想・レビュー・書評
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中国の郊外や国外に住んでいる人々の話である。アフリカで鉄道事業に関わっている人、北米の秘密結社、恐竜博士、民主活動家、アメリカの実業家などなど、著者の取材対象は多岐にわたる。
一番緊張感が漂うのが、海外に居を移しひっそりと暮らす民主活動家の話だ。こんなふうに本に書いて大丈夫なの?と心配になる内容。しかし彼の立場が「逆」かもしれない可能性もあって、読む方も気が抜けない。誰も真相が分からないという結末はミステリー小説のようだ。
アフリカの鉄道事情は興味深かった。鉄道車両や駅そのものが中国大陸のシステムそのもの、というのは中国の支援のたまもの。影響力の強さがよくわかる。
著者の中国語力の高さや的確な質問、行動力が結実して生まれたルポ。ここまで相手の懐に飛びこんでの取材に感心すると同時に、著者自身の身の危険も他人事ながら感じた次第。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
怪しい魅力を放つ中国ルポ。
現地インタビューでかき集めた話が濃厚。
著者にしかできない芸当。
恐竜の話とアフリカと中国の関係が興味深かった。
中国は商魂たくましいのがよくわかる。
国民性を知るのに前作と合わせて参考になる。 -
やっぱり面白いし、多面的に現代中国を知ることができるのでよい
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だいぶ前に読んで登録忘れ。恐竜オタクが博士になる話と、最後の国際的指名手配富豪のインタビューが面白かった。定点観測して欲しい。
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中華圏の周縁を生きる人へのルポルタージュをまとめた一冊。同著者の書いた「さいはての中国」の続編的な一冊。
内容的には濃くなっていて。中国本土の村同士の抗争が起こった地域に踏み込んだり、恐竜オタクから研究者になった人に話を聞いたり。中国の深淵をさらに覗き込んだ一冊になっている。
なんだけど…前作とはなんか味わいが違う感じがしていて。
それが何によるのかがわからずモヤっとしていて、レビューも書けずにいたんだけど、それが「読み手(聞き手)が書き手(話し手)に期待するもの」によるものの変化だとわかって、やっとレビューを書く気になった。
それを端的に感じさせるのが、本著の最後にある郭文貴という人物へのインタビュー記事。
「昔は中国政府の要人とも付き合いのあったビジネスマンだったが、今はアメリカに亡命して中国政府要人の暴露をネタにユーチューバーをしている」という人物。実際、その「ネタを暴露された政府要人(王岐山)」が先々月も訪日して日本首相と会ってたりする、そんな人物。
別にこの「暴露ユーチューバー」の記事がどうこう、ということではないのです。
ただ、この人物はお金を持ち政治力も持つ(あるいは持っていた)「声の大きな人物」。だからこそ、本人は本人の言いたいことを話して影響を与えようとするし、周りもそれを理解して自分自身の主張をこの人物が語ってくれることをどこか期待している。
前作の「さいはての中国」で取り扱っていた人物には、例えば中国のネットカフェでくすぶっている人のような「声の小さな人物」が結構いて。そんな声をすくい上げているのが魅力であった反面、それが今の中華圏を代表・左右しているのか、と言われると疑問だった。
今作の「もっとさいはての中国」でも扱っているのが中華圏の周縁であることは間違いがない。ただ、より「中華圏を左右しうる人物」にもアプローチをしていて。
だからこそ、読者も発言力のあるそんな登場人物(や著者)が自分にとって都合のいいことを話してくれることを期待してしまっている。それが自ずと味わいに変化を与えているんだろう、と。
そういう無意識の先入観を排してみれば、前作同様、中華圏を非常に興味深い観点から見ている良著。
著者のライターとしての成長と、読者の未熟(それを自覚するのに一か月以上かかることも含め)を実感した一冊でした。 -
東2法経図・6F開架:302.22A/Y62m//K
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相変わらずどの章も面白いが、特に興味を引かれたのが伝統私的集団を扱う2つの章。前者は洪門、有名な伝統秘密結社。しかしバンクーバーの地では中国共産党の統一工作や「反日」運動に協力しているというのにがっかり。ただその協力自体もしょぼく、若い移民は入らず、衰退する老人会といった感じだ。
もう一つは2013年、広東省の田舎村同士での、それぞれ数百人規模による武力衝突(械闘)。背景には中国南部に多い村ごとの宗族の団結と対立があるという。21世紀の中国、社会主義国かつそこそこ発展している国でこんな伝統が残っているのが驚きだ。ただ、著者が「華南の農民の伝統的な風習」とまで呼ぶ械闘は、2010年代半ばからは大幅に減っている模様だという。
なお、恐竜大好き少年が夢を追い続け、ついに大発見を成し遂げる話は国に関わらずほっこりする。