- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098254316
作品紹介・あらすじ
こんな時代だからこそ心に沁みる名句がある 「孤独」や「孤立」を感じる時代だからこそ、深く心に沁みる名句がある。漂泊・独居しながら句作を続けた“放浪の俳人”種田山頭火と尾崎放哉の自由律俳句が今、再び脚光を浴びているという。その厖大な作品の中から、現代俳句の泰斗・金子兜太が生前選んだ山頭火55句と、お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹が選んだ放哉55句を合わせて110句を厳選・解説した“奇跡の共著”。労れて戻る夜の角のいつものポストよ 山頭火……東京暮らしには多少の余裕が出てきたものの、妻と別れて一人身になった孤独感は、やはり深かったのだろう。そんな折だから、町角のポストに友だちのような親しみを感じるのである。(金子)こんなよい月を一人で見て寝る 放哉一人で月を眺めていて、「よい月だな」と感慨にふけることがある。……だが、どこかでこの喜びを誰とも分かち合うことができない淋しさも感じてしまう。……一人だからこそ感じることのできた喜びと淋しさが句の内部で循環している。(又吉)うしろ姿のしぐれてゆくか 山頭火……感傷も牧歌も消え、生々しい自省と自己嫌悪も遠のいて、宿命をただ噛みしめているだけの男のように、くたびれた身体をゆっくりと運んでいる姿が見えてくる。(金子)咳をしても一人 放哉……誰もいない孤独が満ちた部屋で咳をする。その咳は誰にも届かず、部屋の壁に淋しく響く。一つの咳によって部屋に充満していた孤独や寂寥が浮き彫りになる。(又吉)「孤独」を磨き続けた2人の自由律の名句を“再発見”する一冊。 【編集担当からのおすすめ情報】 戦後の俳句界を牽引し続けてきた金子兜太氏が亡くなったのは、2018年のことでした。生前、山頭火の名句55句を厳選して解説した雑誌(ムック)がありましたが、長らく入手困難になっていました。その選句とインタビューをあらためて書籍の形で甦らせたいというのが、本書の企画の出発点でした。放哉について55句を選び、解説する大役を引き受けてくれたのが、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹氏です。又吉氏は芸能活動の一方で、小説『火花』で芥川賞を受賞。さらに、自由律俳句の句集(共著)や俳句に関する著書もあり、今も句作を続けていることから、放哉の選句と解説を依頼したのでした。そうした経緯のため、金子氏と又吉氏は直接相見えることはなかったものの、山頭火と放哉の自由律俳句を介することで、今回の“奇跡の共著”が誕生することになりました。選句された110句は大きめの活字を使い、コンパクトな新書判ながら1句1句をじっくり鑑賞しやすくなっています。本書を手に旅に出る――そんな読み方もおすすめです。
感想・レビュー・書評
-
山頭火と放哉の俳句それぞれ55句に、金子兜太氏と又吉直樹氏が解釈を加えたもの。山頭火に関する本はいくつか読んでいるので、漂泊・独居の様子は少し知っていたが、放哉に関しては今回が初めて。エリートコースを歩んでいた、という事実が驚きだった。自由律俳句を詠む二人の"生き方"に、ますます興味がわいた。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“放浪の俳人”と言われた種田山頭火と自由律俳句の尾崎放哉。漂白、独居しながら句作をした二人。
「孤独」「孤立」とは、人は常に淋しいものなのだ。哲学者、三木清の言葉に「孤独は山になく、街にある」と、これは孤独とは自分が個性を持つひとつの存在であり、自分を曲げてまで人に合わせることはないと。
二人とも、孤独になるのが淋しいのではなく、その時我の心が静まるときであったかもしれない。
私は二人の俳句では、尾崎放哉の方がダントツに好き。そこにはユーモアのあるなしかもでおます -
書けそうで書けない自由律。
二人の共通項した部分を知ることが出来て良かったです。間違えて覚えている俳句もありました。孤独で力強い俳句が心に染みます。繰り返して読みたいです。又吉直樹の鑑賞も良い。
-
職場の人が読んでいた本を教えてもらった。
とても好き、と思った句がいくつか。
柘榴が口あけたたはけた恋だ
何かつかまへた顔で児が藪から出て来た
労れて戻る夜の角のいつものポストよ -
俳句とはあまり馴染みがなく、山頭火と尾崎放哉についての知識はほぼゼロで読みましたが、又吉さんのおかげでいい出会いができました。
以下自分用メモ
又吉直樹 17.18歳のときのノートについて...
『みんなの日常は喜怒哀楽みたいな感情の動きでリズムができているけど、俺はもう、ため息と舌打ちだけで生活のリズムができている』みたいなメモがあって、めちゃくちゃ暗くて驚きました(笑)
コントでネタにしたらウケたので暗いノートに書き殴られた言葉たちの居場所があった
頭で考えたものより感情の発露として出てきた言葉の方が強度をもつ
→尾崎放哉への確信
絶望の果ての大笑い 的なことby太宰治
種田山頭火
山口防府出身 既婚(のち離婚)
母の自殺〜父の放蕩、弟の自殺、酒造業の失敗など不幸が重なる
一度東京にでるが、精神衰弱で帰郷、熊本にもいったりきたり
尾崎放哉
一高、東大のエリートだが戦時中の失恋等で崩落していく
病に臥せながら俳句を詠みまくる
痩せ細る自分と煩い蚊を対比している句など客観的なものが多い
こんな生き方をした人間は何かを見つめすぎて悟るのか
面白かった -
山頭火の句を金子兜太さんが、放哉の句を又吉直樹さんが、それぞれ55選ずつ厳選、解説した共著。
山頭火と放哉の酒による失態や後悔には自分も共感出来る部分がある。孤独を磨きながら吐き出した2人の言葉は擦り減った心を慰めてくれる。
2人の略年譜と行脚地図は、自分には分かりづらかった。もっと句に対する情報量が多ければ良いと感じたが、入門書としては丁度良い1冊だろう。 -
山頭火、放哉と言う名前は知っていても、彼らの句を鑑賞することは今までなかった。
この本の選ばれた110句を読み、それぞれの句に何か感銘を受けたとは言えないが、きっと心の奥底にひとつくらいは沈み込み、ふとした拍子にその句のことを思い出すのかもしれない。
放哉の句を選んだ又吉氏の解説に、
「人生を上手く渡れそうな材料は一通り揃っていたが、その部分がことごとく使い物にならなかったのではないか。」(P164. 釘箱の釘がみんな曲がつて居る)
とあるが、そんな悲しみか絶望かを体験した放哉の生き方が心に沁みた。