- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101003528
感想・レビュー・書評
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読みやすかった。著者である燃殻さんの記憶がそこに詰まっているようで、読んでいて他人の記憶を覗き見しているような感じがした。自分も忘れてしまう前に記録として記憶を残していきたいと思った。
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ドラマ化になった作家さんということで興味があったので手に取りました。
自宅に戻ってから作家さんの名前が「燃え殻」というのに気が付いて吃驚しました。
なんでこんな名前になったのかと想像して読んでいましたが、
この作品だけで考えてみると掴みどころが無いですが、
もしかしたら仕事や人生などに燃え尽きてしまった所から
由来しているのかと勝手に想像してしまいました。
本当の所はどうなのでしょうか?
さてこの作品は何とも掴みどころが無くて、
日常の一部のたわいのない話題ばかりです。
もしかしたら男性の方が共感する部分が多いかと思いますが、
女性でも共感できる部分があったり、
思わずくすりと笑える部分があって面白かったです。
著者も仕事をはじめとして色々と気苦労などがあるみたいで、
身体的に精神的にも疲れてしまった辛い経験があったことから
少しダークな話もありますが、そんな事にもさらりとした言葉で
心を軽くしてくれていたので何となく肩の力が緩んだ気がしました。
印象的な言葉があったので心に留めておきたいと思います。
「逃げちゃダメだ!」は事故併発本の常套句だ。
それもあるひとつの真実だと思う。
だけど、「逃げた先にみつけられるものもあるかもしれない」
という注釈でいいから書いておいて欲しい。
(中略)
何もなかったよりかは良かったじゃないか、と言い切れる今がたしかにある。
生きていると全部が、元には戻らない。
壊れた部分は壊れたまま、抱きかかえがら生きていくしかない。
大きい溜息をひとつ。今は溜め息じゃない、大きい深呼吸だ、
と自分と他人を騙しながら、今日を生きてみる。
飄々とした中にも淡々として説得させられる部分もあるので、
飲み屋でのトーク話を聞いているような感覚で作品を楽しめました。
良いことも悪いことも、そのうち全て忘れてしまうけれど、
なるべくなら良いことは忘れないで長い間記憶に留めて
おくことが出来たら良いなと思ってしまうこともあったり、
何気ない日常だからこそ特別に思い出として残したいという
気持ちが詰め込まれたようなエッセイ集でした。 -
まるで自分についても、そういえばこんなことあったな、あの時こんなことがあったっけ、そんなことを思い出すよう。
忘れてていたことをふと思い出すような。 -
感想
大切な落とし物をひとつずつ拾っていく。生活を送る中で見落としてしまっていることが言葉にされて輝いている。日々の感動を残しておくことの尊さ。 -
各話、見開き2ページだけなので、ちょっとした時間で読みやすくてよかった。このわずかな文量で読者を惹き込む構成を立てられるのってすごいなあ。
燃え殻さんの文章は、弱さを許容できるような気にさせてくれて、何でもない日常を大切にしようって気付かせてくれる。ゆっくり心に沁みてく感じがよいんだあ。
↓特に好きだったお話たち。繰り返し読みたいなあ。
セックスしなくても幸せだった夜
そもそも、エモってなんだ
写真の中のあの人は、どんな声をしていたのだろう
偉そうにするなよ、疲れるから
何も持たずにすべてを置いて僕たちは死ぬ
俺は似合ってるか?ここに
アラーキーより今を残す人
あの記憶は誰のものなのだろう
男と女は、世界でふたりぼっちだったんじゃないだろうか
「本当は日々のほとんどはグラデーションの中にある気がする。」「まだ名前のついてない感情と出来事に囲まれて、僕たちは生きている。」
「やばい」「えもい」で会話が成り立ってしまいそうな現世で言葉の意味を大事にしていきたいなあと思う一方で、まさに燃え殻さんの書く世界からはまだ言葉になっていない「エモさ」があるような気がするんだ。
「各々が無心になれる何かをずっと続けられることが、勝った負けたなんてチンケなことを考えなくてもいい状態を作ってくれるんじゃないのかなと、資本主義の成功者たちが歌うきらびやかな映像を見ながら、ぼんやりと考えていた。」働かない天才の万年ごたつ -
燃え殻さん3冊目。本書は週刊SPAに掲載された2018年から2020年までのエッセイ。都内の美術制作会社に会社員として勤務する傍ら、作家・コラムニストとして活躍する燃え殻さん。2足のわらじ&テレビ局に出入りするなどマスコミ業界に身を置いているだけあり、本当に顔が広く、バラエティに富んだ燃え殻さんの知り合いについて楽しめる。燃え殻さんのこれまでの経験の考察なども面白い。常に淡々としており、地に足がついた感じがとても読み易い。
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なぜペンネームが『燃え殻』なのでしょうか…?
本書は、「人生はままならないから、デビュー小説で希望を書いた」(私は未読…)という著者のエッセイ集です。
自分を卑下し、自虐感溢れる印象は、内容からも筆名からも伝わってきます。ただ、文章からは重苦しさは感じられず、スラスラ読み進められます。
書き残さなかったら、なかったことになるかもしれない出来事や人の営みがあって、それらを残すのもいいのかも、と考えられたのでしょうか…。
かつてのことや最近のことを取り留めなく書くことで、大半が苦難であっても、後で振り返った時に「抗って生きてたな、その時は輝いていたな」と思えるのかと、我が身に照らしてぼんやり考えました。 -
これも装幀やタイトル、各章の手書きのタイトルがハードルを上げに上げていて「さあエモいと思いなさい」感が演出されすぎているので、純粋に本文だけを読めたら楽しめただろうになあと思ってしまった。
各章のタイトルが良すぎて、出オチ感が強いのかな… -
ゆるくて面白いすき
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心を救ってくれる本はこういうものなのだと実感した。各編ごと大きく心が動くことはないが、それが心地よい。事態が進展しなくても、上手くいかなくても、今日なんとなく生きていることやなんとなく会った人との出来事が糧になったり、ならなかったりするんだろうなあ。