ゴッホの手紙 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101007137

作品紹介・あらすじ

昭和22年、小林秀雄は上野の名画展で、ゴッホの複製画に衝撃を受け、絵の前でしゃがみ込んでしまう。「巨きな眼」に見据えられ、動けなくなったという。小林はゴッホの絵画作品と弟テオとの手紙を手がかりに彼の魂の内奥深く潜行していく。ゴッホの精神の至純はゴッホ自身を苛み、小林をも呑み込んでいく……。読売文学賞受賞。他に「ゴッホの絵」「私の空想美術館」等6編、カラー図版27点収録。

感想・レビュー・書評

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  • まだ出て無いのですね、…

  • ゴッホが弟に宛てた手紙と、その手紙からわかる彼の苦悩、性格。そして彼の人生の足取りが書かれた本。作品もカラー写真で何点か収録されている。昭和20年代初発刊の本で旧仮名遣い、難しい言葉などでわかりにくかったが彼が精神病に悩み、生きずらさを抱えた天才だったということはわかった。彼の作品の生まれた背景も書いてあり収録されている作品のカラー写真で確認しながら読めたのが良かった。彼の苦悩を知ると残された絵から感じる暗さ繊細さを理解できるかも。精神的な苦しさが芸術、名作を生むのかもしれない。

  • ゴッホの絵を眺めゴッホの手紙を読み進めることで、恐ろしいほどに作者がゴッホに呼応してゆく。ゴッホの弱り切った精神の純粋さゆえか。読み進めれば進めるほど、ゴッホ作品の力強さと儚さを益々愛おしく思う。

  • アルル滞在中に読んだが、また理解を深めるために読み直したい。
    日本人がゴッホに対してこれほどまで理解しようとしてくれていてゴッホは喜んでいるであろう。

  • ゴッホの絵(レプリカ)を観て衝撃でうずくまってしまった小林秀雄。
    この本は簡単に言えば、ゴッホがなぜ絵を描いていたのかを、ゴッホの手紙を通して読解する試み。
    小林曰くゴッホの手紙は告白文学に相当するとのことである。もちろんゴッホの狂気と作画もヤバいんだけど、衝撃を受けたゴッホのことを知るためにその手紙=文学作品をひたすら読む、そこに入り込む小林の力というか、衝撃に揺さぶられてるのがとにかく伝わってくる。
    音楽でも絵でも、読解と感受性をもって、それと1対1で向き合ったものが小林秀雄の批評だなと改めて感じさせられた。
    小林秀雄は音声で講演を聴くのもオススメです。

  • 後半はほぼゴッホの手紙の引用になっており、批評というより、ゴッホの人生の紹介?のようになっていて、いつか小林秀雄が透明になってゴッホになっている。批評は必要ないということかも。
    ゴッホは何かに取り憑かれたように絵画に奮闘する。その何かは、狂気ともいえるし、自分自身の強すぎる個性ともいえるし、神様のようなものかも知れず、とにかく自分でもなんだかわからない情熱に小突き回されるような感じで、本人も大変そうだし、弟はじめ周りの人は苦労する。
    羨ましいような気もするし、これが才能やら天才ということなのであれば、辞退したいような気もする。

  • 小林秀雄のドフトエスキー、モーツアルトに次ぐゴッホの芸術家人生探究の評論である。ゴッホの弟テオに宛てた手紙を繙くことで彼の人生に並走し、作品に込めた思いと課題を書簡の文面に沿って抽出していく。かつて牧師を目指した倫理と知性の画家は貧窮に喘ぎながら作画を続け、究極を求める創作への焦燥に次第に神経を病む。テオや家族への手紙の言葉が絵のことを語ると同時に心の窮迫も伝える。ドラクロアやミレーに影響され、土と百姓・労働の視点から描き、似た境遇のゴーガンとの短い共同生活を経て、モネに触発され印象派を代表する作品を数多く残す。大胆な構図で色彩に満ちた強烈な絵であることが伝わってくる。小林が言う「愕然として巨きな眼に見据えられ動けずにいた黒い鳥の群がる麦畑の絵」を描いた時には、ゴッホは既に自らの死をその絵に暗示していた。
    この評論の後半部分、ゴッホが発作を繰り返しながら描き続ける切迫したくだりは、彼の心の軌跡に小林が同調し没入する感情の昂ぶりを滲ませる。小林の透徹した分析のなかで異色の盛り上がりを呈する場面である、まるでゴッホに憑依したかのようだ。
    ゴッホはピストル自殺を図りガッシュに看取られ瞑目する、一年後にテオも発狂してこの世を去る。
    読み終わって、ゴッホの苦悩からの解放に心底安堵するとともに、小林の評論の凄みに今更ながら感服させられる。

  • 小林秀雄氏の著書についてはいくつか読んできたが、この著書については難解すぎて挫折。
    前提知識が必要なのか、文筆の抽象度の高さについていけていないのか、もしくは単に記載が不親切なのかは正直わからない。

  • 小林秀雄に圧倒される。単に心の底から一枚の絵に魅了されたというだけでは、これは書けない。どこからこんなエネルギーが湧き出てくるのか。エネルギーという考え方が間違っているのかもしれない、そんな思案が初めて頭によぎった。少なくとも、エネルギーは高いところから低いところに落ちるというエネルギー(エントロピー)の法則だけでは、なぜ他ではないのか、絵画であり音楽であり、芸術であり批評なのかというところが説明できない。それが個性なのか。個性という言葉で取り敢えず表しておくしかないのか。
    ところでまだエネルギーの連想で考えてしまうが、個性または精神は、ひょっとしてエネルギーの法則に逆らうものなのか、と思えて恐ろしい。逆らうまでいかなくとも、エネルギーの消費ではなく、化石燃料の精錬のような形態を彷彿させる。どうしたらそんなことが可能なのだろう。

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著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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