オレたちのプロ野球ニュース ――野球報道に革命を起こした者たち (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.09
  • (15)
  • (8)
  • (9)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 87
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101026411

作品紹介・あらすじ

1976年4月1日、「こんばんは、プロ野球ニュースです!」という初代キャスター佐々木信也の第一声で、のちに伝説として語られるスポーツニュースは始まった――。歴代キャスター、解説者、各局アナウンサー、番組スタッフなど20人以上の関係者へのインタビューをもとに、プロ野球の魅力を余すところなく伝えて、その発展に寄与した国民的番組の誕生から地上波撤退までを追ったドキュメント。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1976~2001年にフジテレビ系地上波で深夜放送されていた番組の足跡を辿ったもの。当初、良質のスポーツジャーナリズムを掲げて好評を博した番組が、「楽しくなければテレビじゃない」のバブル期にバラエティ路線に舵を切り、Jリーグ発足などプロスポーツの多様化とともに終焉を迎える過程が丁寧につづられている。系列各局も含めた関係者への取材が手厚く、当時の熱気が十分に伝わってくる。バラエティへの路線転換についての評価も様々だということが分かった。プロ野球史の枠にとどまらず、現代文化史としても楽しめる作品。

  • 『プロ野球ニュース』が始まったのが1976年。それ以前のプロ野球の報道って、ニュース番組のおしまいに精々2,3分のスポーツニュースコーナーで結果をサラッと舐める程度だった。

    関西在住のタイガースファンは、サンテレビが当時より試合終了まで完全放送を放映していたからまだ良かったけど、それでもビジターの結果はジャイアンツ戦以外はダイジェスト映像で観ることはできなかった。

    そんなプロ野球報道不毛時代に、『プロ野球ニュース』出現の衝撃は凄かった。司会は佐々木信也。録画ならまだしも生放送番組の司会を元プロ野球選手を起用。当初の不安をヨソにご本人はやる気満々で明朗な口舌で仕切り、番組の売りはFNS系列を総動員し、12球団を公平に扱い、全試合をアナウンサー&解説者の1セットで詳細解説。それに加え、球場の打球音や歓声を遺漏なく拾い臨場感まで映像に反映、長引く延長の試合も映像で観ることができた。

    要するに、現在のプロ野球報道の基礎というかフォーマットをフジテレビが46年前に創り上げた。生放送だけに毎夜時間との戦い。ビデオテープではなく撮影したフィルムをテレビ局まで何回かに分けバイク便で送り、それを凄腕編集マンが神業を発揮し、OAに間に合わすべく寸前まで編集を行った。

    本書は国民的番組に躍り出たプロ野球ニュースの誕生秘話から、80年代に入るやフジテレビが打ち出した『楽しくなければテレビじゃない』のエンタメ路線に翻弄され、瑕疵がないにもかかわらず降板させられた名司会者 佐々木信也の悲劇と引き換えに野球のルールも知らない新人アナ 中井美穂を司会に抜擢する大胆なリニューアル、名プレー珍プレーに代表されるスピンアウト番組の誕生とみのもんたの超絶アドリブナレーション、そして地上波撤退までの栄枯盛衰を丹念に追う。

    手本となる番組はなく、日本テレビ『イレブンPM』全盛期に、ジャイアンツ一辺倒の時代に、無手勝で挑んだテレビマンの殺気も孕んだ情熱と本気度が脈打ちながら読み手に伝わってくる。70年代以降のテレビ史としても読める好著。

  • 1976年、「こんばんは、プロ野球ニュースです!」という初代キャスター佐々木信也の第一声で、革新的スポーツニュース「プロ野球ニュース」は始まった――。
    巨人一辺倒の時代に「12球団公平」をモットーに掲げ、「見て楽しい映像作り」にこだわった「プロ野球ニュース」は、「珍プレー・好プレー」「今日のホームラン」「わがふるさと」
    といった人気コーナーを生み出し、プロ野球報道に革命を起こした。
    佐々木信也、野崎晶一、須田珠理、福井謙二……といった歴代キャスターをはじめ、解説者の土井淳、平松政次、大矢明彦、各局アナウンサー、番組スタッフなど20人以上の関係者へのインタビューをもとに、プロ野球の魅力を余すところなく伝え、その発展に寄与した国民的番組の誕生から地上波撤退までを詳細に追ったドキュメント。

    地上波時代はリアルタイムではほとんど見られなかった。むしろCS時代になってからよく見ている番組。初期のフィルム編集のエピソードが特に印象的。

  • 私が一番愛している番組、フジテレビの「プロ野球ニュース」がついに本になりました。これは文庫本です。よく取材されているなぁと思います。プロ野球ファンは、読むべし。

  • 個人的に、小中学校は野球部・高校はサッカー部という風にだんだんと野球を見ることが少なくなり興味が薄くなっていったので、このプロ野球ニュースという番組も世の中の流れで衰退していったのだろう。
    熱心に見ていたわけではないがたまにテレビをつけるとやっていたという印象。いまだにCSで放送されているというのは驚き。

  • 最近、CSのプロ野球ニュースをいつも欠かさず見ている。
    多分、東京ヤクルトスワローズと阪神タイガースの接戦、その後の死闘の日本シリーズの影響だと思う。いや、その前の東京オリンピックの侍ジャパンからか。
    これを見たら、見るほうはもとより、するほうもかなり頑張れると思う。

    プロ野球ニュース自体は子どものころから知っていた。
    佐々木さんが口角の上がった表情で、小気味いいせりふまわしていたのも印象に残っている。「がんばれタブチくん」にも出ていたかな。
    故野村克也氏が選手にメディアに出ろ、と口やかましく言ったのもよくわかる。
    野村氏の先見の明は言うまでもない。特定のファンではない一般化がとても大事なのだ。

    この本を読むと、時代が、歴史が見える。
    生中継がそうそう簡単ではないことや映像に説明的解説を加えるだけでなく、合いの手を入れながら、映像を見る(見えない観客)を相手にする手法・システム化を何十年も前から開発してきたことがわかり、脱帽した。

    ニュースステーションが夜の番組を変えたように、プロ野球ニュースはプロ野球を変えた。プロ野球ニュースの終焉にJリーグの登場があったように、いまや、野球しかなかった時代ではなく、野球に匹敵するサッカーあり、それらを追いかけるように、バレーボールあり、ラグビーあり。みな同じような感じで変わってきている。

    今は当たり前だと思うことも誰かが始めたことだ。
    革命的なことに対する評価は良いと悪いの両方があるのも言うまでもない。
    肥大化したときに矛盾が起きること、進化がなければ、停滞したままだ。
    本当の価値「真価」は熱い思い「心火」を進化させてこそ。…高津監督、うまい事言う(笑)。

    巻末の対談がこれまた歴史的で、垂涎ものだ。

  • プロ野球全試合を平等に、詳しく伝えることにこだわり、プロ野球の発展に貢献したと言っても過言では無いテレビ番組「プロ野球ニュース」

    いかに革命的な番組であったか、プロ野球発展にいかに貢献したか、ファンや選手、関係者にどれだけ愛されたかなどなど、番組創生期から地上波終了まで関わった様々な人たち(佐々木信也さんはじめ、解説者、アナウンサー、スタッフなどなど)の取材を通じてまとめられています

    自分は、物心ついた時は既に野崎さん、中井さん時代でした。それでも、他のスポーツ番組とは別次元であることを感じながら視聴していた世代(佐々木信也さんをお目にかかったのはCS時代になってから)

    そんな自分でも、興味深い内容の連続でした

    特に、名物アナウンサーのお話は懐かしかったです。色々思い出しましたし、知らないこともいっぱいあって興味深かった。

    佐々木信也さんが降板される際のスタッフたちの苦悩っぷりも、リアルで、そうやったんやぁ、の連続でした

    最後に、関根さん、土橋さん、佐々木さんの県談が付録されてるのと懐かしく、今は亡き関根さん、土橋さんのお姿が頭の中に蘇りました

    何もかもレジェンドな番組だと、改めて認識させられました

  • プロ野球の歴史を変えたであろう懐かしい番組。

    総放送回数8846回。1976年の放送開始以来番組内で伝えたプロ野球公式戦は19662試合。日本のプロ野球報道を牽引した『プロ野球ニュース』は2001年に終了する。

    本書は初代キャスターを務めた佐々木信也ほか多くの解説者、さらにアナウンサー、ディレクターなど裏方のスタッフにもら取材をした作品。

    ビデオの普及する前、放送が始まっている間にもフィルムの編集が行われていたという。職人の神業が番組を支えていた。

    パリーグも含め全6試合を公平に伝えるコンセプト。特にパリーグの球団はインタビューの謝礼を断るほど、選手の露出を喜んだという。

    フジテレビに対する、日テレつまりは巨人の露骨な嫌がらせにも負けず、人気番組に成長する。

    転機は1988年。中井美穂など女子アナの起用など番組の大改編。プロ野球に女性ファンが増え、また選手と女子アナの結婚の増えるきっかけになった。

    本書は番組のスタート、試行錯誤の頃から大改編を経て終了するまでを時代の空気、関係者の熱意と共に描く。
    プロ野球が地上波で人気のあった時代からJリーグの発足やCS、インターネットの普及により番組は終了。番組がプロ野球界に果たした役割は限りなく大きい。

    自分もプロ野球ニュースなかりせば、これだけ野球マニアにはならなかっただろう。

    既に鬼籍に入られた解説者の思い出も含め、懐かしい思いと共に読むことができた作品でした。

  • 40代以上で野球が好きな方なら、1970年代~1980年代にかけて、夜11時過ぎからの「プロ野球ニュース」を視聴していた方は多いのではないでしょうか。
    12球団の6試合全て、しかもそれぞれの試合にアナウンサーと解説者が1名ずつ担当するスタイルで、得点シーンなどだけではなく、駆け引きや配球などの深い解説も魅力的でした。進行役は佐々木信也氏。さわやかな語り口で、「プロ野球ニュース=佐々木氏」というイメージでした。
    本書はこの番組がスタートする時点から、地上波での放映が終了するまでを出演者やスタッフなど関係者に丹念に取材して、この番組が生まれてから終わるまでを追ったノンフィクションです。
    私にとってプロ野球解説者として印象に残っている方のお名前を挙げていくと、西本幸雄氏、別所毅彦氏、豊田泰光氏、関根潤三氏、平松政次氏、谷沢健一氏、大矢明彦氏、などほとんどが当時のプロ野球ニュースに出演していたFNS系列の方がほとんどです。私が小学生ぐらいで、プロ野球に夢中だったころに毎日視聴していたからなのでしょう。本書でも触れていますが、プロ野球人気の裾野を拡げ、とりわけ当時人気低迷であったパリーグの選手が動く映像でテレビに登場するこの番組の貢献度は本当に大きいものだったと思います。
    ホームランシーンを全て放映する「今日のホームラン」、試合のないオフシーズンの企画では、みのもんた氏のナレーションで有名な「珍プレー好プレー」、相性の極端に良い、悪いを数珠繋ぎでたどる「カモと苦手」など懐かしいコーナー誕生の裏側なども興味深い内容でした。
    また番組誕生からキャスターを務めた佐々木信也氏に担当プロデューサーが降番を言い渡すシーンや、中井美穂さんが後継キャスターに指名された時に”会社を辞める”と泣いて抗議したエピソードなど、知られざる事実が臨場感たっぷりに描かれています。
    今では全ての試合をスタジオのアナウンサーとゲスト開設者が全て紹介するスタイルが多いですが、当時のプロ野球ニュースは関東地区の試合はフジテレビ、関西地区は関西テレビ、広島や名古屋はそれぞれのFNS系列局が担当するという形式で、今から思うと非常に手間と時間をかけた構成だったようです。
    番組終焉の背景にはJリーグや日韓ワールドカップ、F-1やK-1といったプロ野球以外のスポーツコンテンツの成長から、プロ野球だけを扱っていては将来がないとの判断、コアな野球ファン向けのスポーツジャーナリズムの追求から、より広いファンを獲得するスポーツエンターテイメントの追求など局としては仕方のない部分も本書からは読み取れます。致し方ない部分も理解できますが、時代の流れと割り切るには少し寂しい気もします。一つの番組の栄枯盛衰を追って400ページ弱の大作としてまとめた著者の野球への愛情が伝わってくるノンフィクションです。

  • 1976年4月にスタートした伝説のスポーツニュース『プロ野球ニュース』。20人以上の関係者にインタビューし、番組の誕生から地上波撤退までを追ったドキュメント。
    タイトルにもある通り、正に野球報道に革命を起こした番組である。巨人一辺倒ではないダイジェストや解説、珍プレー好プレー、今日のホームラン、斬新なオフ企画…。国民の野球偏差値を向上させた歴史に残る名番組だった。限られた予算で制作されるCS版も毎日の楽しみ。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年5月13日東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、出版社勤務を経てノンフィクションライターに。05年より中野ブロードウェイに在住。『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』(白夜書房)、『私がアイドルだった頃』(草思社)、『ギャルと僕らの20年史 女子高生雑誌「Cawaii!」の誕生と終焉』(亜紀書房)、『いつも気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『詰むや、詰まざるや 森・西武VS野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(角川新書)他、著書多数。

「2022年 『中野ブロードウェイ物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

長谷川晶一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×