ルポ川崎 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 422
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101028415

作品紹介・あらすじ

工業都市・川崎。過酷な住環境の中をヤクザが闊歩し、貧困が連鎖するこの街で、陰惨な中一殺害事件やドヤ街での火災、ヘイト・デモといった暗い事件が続くのは偶然ではない。しかし、熱狂を呼ぶスターとして巣立っていく若者もいる。ここは地獄か、夢の叶う街かーー。負の連鎖を断ち切ろうとする人々の声に耳を傾け、日本の未来の縮図とも言える都市の姿を活写した刺激的ルポルタージュ!

感想・レビュー・書評

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  • 文庫の帯には”貧困、殺し、薬物、そして夢 ここは、地獄か?”と書かれている。
    (ここは、地獄か?は赤字)
    著者自身もエピローグで書き、文庫解説にも書かれている通り、”偏り”のあるルポだが、書かれた側・書いた側の双方にとっては現実の話。

  • 磯部涼『ルポ川崎』新潮文庫。

    神奈川県川崎市という街の表と裏を描いたルポルタージュかと思ったら、川崎市のヒップホップ文化や不良文化と犯罪や事件を描いた掴みどころの無いサブカル的な作品だった。

    工業都市という一面と様々な人種や地方出身者が集まる東京都に隣接する大都市という一面を持つ川崎市。この猥雑な街では貧困や暴力と騒乱、陰惨な事件や若者たちの造り出す新たな文化とが同居し、大都市というカオスを産み出している。

    本体価格850円
    ★★

  • 「"予定"があればとりあえず生きていける」
    岡崎京子のリバーズ・エッジと15年に起きた事件で、街のことが気になっていた時にこの連載を目にした。
    著者の目を通した川崎は、偏りはあるだろうが私の知りたい川崎だった。
    細倉真弓さんの写真も良い。

  • 同市に住まう者として、読んでおかねばと思っていた一冊。数年以上前かつ偏った掘り下げであることを念頭に置いた上でも、非常に興味深い内容だった。

    主に川崎南部の貧困・暴力・犯罪について取材されたその文章の隙間からは、文化的に複雑な味わいが立ち昇っている。それは苦味であり辛味であり渋味であり、決して当事者として日常的に摂取したい類いのモノでは無い。それなのに、ひと舐めくらいならしてみたいかも?と惹かれてしまうのは何故なのか。その危うく妖しい魅力こそが川崎を蠱惑的な街として成り立たせているように感じた。

    綺麗事が通じない環境だからこそ育まれた反差別や多民族共存の精神とHIPHOPカルチャーに、尋常ではない説得力が宿る一方で、ドヤ街や反社会的勢力が諦念の受け皿とでも言うべき機能を果たしている現実には、逆境における人の強さと弱さについて考えずにはいられなかった。

    まだまだ川崎の野蛮な印象は強く認識されているものの、徐々に暗黒街的な一面は薄れつつある今こそ、このルポを地続きのリアルな話として味わえる最後の機会かもしれない。

  • 普段読むような物語じゃないから、なかなか読み進めるのに時間がかかったけど、おもしろかった。家が近くて用事はいつも川崎だから、これ読みながら探検したい
    わたしももっと過酷な環境で育ってたら、熱いリリックかけたかな笑

  • 十数年前によく出入りしていた川崎。
    BAD HOPの登場で改めて注目され、深掘りをされていく記事や映像などで興味を持っていてこの本を手に取りました。
    川崎という土地の文化、そこから光を見つけるように発展してきたカルチャーについて、あくまで第三者の著者の目線で伝えられ、むしろリアリティーを感じました。
    何気なく触れる街の風土や営みにも表と裏の顔があるのだなと思わされた本です。

  • 昔川崎に住んでいたので読んでみました。
    身近なところにこんな世界があったのかと驚きました。
    ただ、あまりに自分とは違うので感情移入できませんでした。

  • 川崎に行く機会が増えたことをきっかけに読んだ。登場するラッパーの方の名前の読み方が一人もわからないほどHIPHOPに馴染みがなかった私でも興味深く読むことができた。

    以下は読み終わって少し日が経ってしまってから考えたこと(細部や趣旨はズレている可能性あり)

    取り上げられている方々にはそれぞれ違った背景があって一言にまとめられないが、音楽に興じるだけでなく、それを家族や仲間のため、地域のために活かしていきたいという信念は大方共通していると感じた。
    困窮した子どもたちやいわゆる不良少年に手を差し伸べる「ふれあい館」の紹介も勉強になった。
    人生の大半を川崎で過ごし、「世間の狭さ」を感じるという人の話が度々出てきていた。自分は経済面や環境面で恵まれているほうで、行動範囲こそ複数の地域やコミュニティに及んでいるものの、元々興味のあったものにしか目が行かず、精神的に狭い世界で生きていると気付かされた。何か大きな目標や信念を持って生きていきたいと思った。

  • ①HIPHOPは好きでよく聞いていた。川崎と言えばSCARSというのはなんとなく知っていたが、SEEDAやNORIKIYOなどが有名だと思っていたし、BADHOPはオートチューンが苦手であまり聞いた事はなかった。

    ②今回BADHOPの背景が知れて非常に興味が湧いた。THABLUEHARBのようなどん底から這い上がるといったHIPHOP的精神とはまた違うどん底が垣間見れて、日本であって日本でない世界観が新鮮だった。

    ③部落問題や二世三世の話など、知っている人権問題とはまた違う視点での切り取り方だった。いくつもの世界観を集めて知見を得、新たな発見をする。読書の良いところはここですね。

  • あまりに近い全く違う世界

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著者プロフィール

ライター(Twitter→ @isoberyo)。著書『ルポ 川崎』 『令和元年のテロリズム』。『リバーベッド』が初の漫画原作となる。

「2023年 『リバーベッド(2)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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