孤独の意味も、女であることの味わいも (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101043715

作品紹介・あらすじ

人に絶望しても、性暴力に遭っても。愛する子を喪って、すべての「いま」に正解がないように思えても。人生には必ず意味がある。救えない人間などどこにもいないのだからーー。母親の後ろに隠れていた少女が、異性の欲望に晒されて呆然とした青春時代を経て、自由を渇望し、自らの言葉だけで生きるに至るまで。気鋭の国際政治学者が、端正な文章で紡ぐようにして綴った等身大のメモワール。

感想・レビュー・書評

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  • 何年も前、三浦瑠璃ちゃんを初めて認識したのは朝まで生テレビだった。
    多分眠れずにいた夜で、どの番組をみるでもなくテレビのリモコンを押してチャンネルを変えていた。
    で、久しぶりに朝生に出くわした。
    出演者同士がお互いを論破しようと相手の話も終わらぬうちから話し始め、醜かった。
    暫くぶりに見る田原さんも、なんだか精彩に欠けていた。
    歳とったなー。(それはイコール自分にも言える事なのだけれど。)

    その中で、冷ややかにも見える冷静さで、軌道修正しているのが三浦瑠璃だった。
    正しいか否かは別にして、どんな肩書きをつけた有名な年配の皆さんよりも、彼女は凛として美しかった。
    理路整然として、実にすっきりした物言いだった。

    あっという間に彼女のメディア登場回数は増え、今ではその一言でSNSは大炎上もする。
    多くの人がそうであるように、発言の一部分だけを切り取られ独り歩きしてしまう事もあるし、実際言い過ぎる部分もあるのだろう。
    でも今のところ、私は三浦瑠璃という人が好きだ。
    だから読みたかった。

    正直、「女であること」を「味わい」と言えてしまうことに少し引いたし、
    冒頭のbloomやエルゴベビーなどのブランド名に、それって書く必要ある?とも思った。
    けれどそんな事どうでもいい程に、彼女は正直だった。
    ページ数も丁度良かったが、共感も多々あってカフェで一気読みした。
    人間を単純に男と女に分けて意見を述べるのも憚られる中、女で生まれてきた三浦瑠璃を生々しいくらい正直に明かしていた。

    本書を読んでいる最中、私は度々自分自身とも向き合う事になって、目が潤む瞬間もあった。
    具体的に感想を述べようとすると、自分自身の生き様までここで晒してしまいそうなので書かないが、
    それほど彼女の生き様が、まんま明かされていた。
    きっちり時系列に並んでいないので、彼女の人生を行ったり来たりしながら、自分自身の過去とも自然と向き合う事になった。

    性別の違いを持ち出すのは好きではないし、多くの場合は無意味だけれど、敢えて言うなら。
    本書は、女性が読む方がより身近にすっと内容が入ってくるかもしれない。
    彼女が万人に共感されるわけではないし、生き方なんて正しいとか綺麗とかいう尺度では計れないけど、彼女を形作っているものが見えた。
    自立しているからこその幸福な孤独とか、そこに至るまでの苦しみや悲しみや喜びの記憶。
    だから、彼女の経験を知ったうえで迎える21~22章は、ストンと素直に受け取れた。
    そしてどの年代の方も、今のこの歳まで生きてきた自分を、これまでより認めてあげる事が出来るのではないだろうか。

  • 1人の人間が経験した消えようのない悲しい体験と、そもそも女であることや孤独を生きることについて、丁寧かつ正確に努めた描写で表現してあり、それらを噛み締めるように読むと、悲しみが自分の中にも湧き起こり、涙が出そうになるエッセイ。

    ご自身の人生における内省や、ある意味での成長と発展を書き起こした本で、読むとその波長と観察眼と記憶力にうっとりさえする。

    この方の波長は、自分の中の暗い部分にとても合うと感じ、読んでいて心地良い本であった。

  • 今だからこそ読む!
    エコーチェンバー現象
    キャンセルカルチャー


  • 三浦瑠麗はどちらかというときらい。

    FBでフォローしてみると、山猫研究所のコロナピーク予測は便利で、現状と近い将来の理解に役に立った。そのあたり、三浦瑠麗バンザイ。

    しかし、週末のおいしそうな手の込んだ料理の数々、おしゃれな服、美しい長い黒髪、美しい着物に身を包んだ美しい姿、その娘もまた美しい着物を着て、またどこかの外国での休日のひととき。センスが良く美しい幸せな自分を見てほしいという自意識が溢れ出ているのが鼻について、ケッと思いページを閉じる(しかし気にはなるのでフォローしつづける)

    この人は素晴らしい仕事をする。だかどきらい。だけど気になる。私の複雑な心境のその理由はなんなのだろうと思い、この本を読んでみたら止まらなかった。

    彼女の文章を書く才能に感嘆。自分の人生に起こったいろいろなことへの感受性の高さ。恋愛遍歴と恋愛観。それを公にしようとする正直さ。正直であることしかできない不器用さ。模索の結果得た、人生の結論。高い知性と感性でもって、自分の人生に起こることを咀嚼し糧にし前進している。

    私はこの人に烈しく嫉妬しているのだ。その高い能力に、美しい外見に、生活の豊かさに。そしてこの本では、その書く能力に、その前提となる高い教養と完成と思考力とに、烈しく嫉妬する。この人は私が持っていなものを持っていて見せびらかす。FBで感じる鼻につく表現をこの本でも感じる。

    本人には悪意なく、しかし、いい大人である私にさえ(そしてたぶん多くの女性に)劣等感を抱かせる。

    それは私の問題。ちょっと彼女をしっかりと追いかけてみようと思う。自分の劣等感を理解したい。

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著者プロフィール

国際政治学者。1980年神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学公共政策大学院修了。東京大学大学院法学政治学研究科修了。博士(法学)。専門は国際政治。現在、東京大学政策ビジョン研究センター講師。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『日本に絶望している人のための政治入門』(文春新書)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)。

「2017年 『国民国家のリアリズム 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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