母影 (新潮文庫 お 112-2)

著者 :
  • 新潮社
3.46
  • (14)
  • (26)
  • (27)
  • (11)
  • (3)
本棚登録 : 440
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101044521

作品紹介・あらすじ

小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の“探し物”を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪を鋭く見つめる、鮮烈な中編。芥川賞候補作品。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 作家、尾崎世界観さんを初めて読みました。
    訴えかけられるものもあるのですが、この物語私は嫌いでした。

    経験がその人の人生の糧になり、いつかは花を咲かせると信じていたいので、親としてはなるべく希望を持たせたい。
    尾崎世界観の名前を知っていただけに、興味本位でこの本を手に取り読む若者は多いと思います。
    果たしてこの物語が若者層にどう響くのか未知数ではありますが…

  • 尾崎世界観さんの2作目にして、芥川賞候補作に選ばれた作品。
    前作『祐介』とは作風も文体も全く違う。そうなるのは主人公が小学生なので必然だが、それを書き切る表現力が凄まじい。

    ———あらすじ———

    小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。
    「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」
    電気を消し、隣のベッドで客の探し物を手伝う母。
    カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。
    母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。
    少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。
    第164回芥川賞候補作。

    行き場のない少女は、カーテン越しに世界に触れる。
    デビュー作『祐介』以来、4年半ぶり初の純文学作品。

    ———感想———

    小学校低学年の主人公「私」の見る世界と心情を、丁寧に描写する文章が秀逸。主人公の純粋さがダイレクトに伝わってきて、面白くも、心苦しくもあった。

    いけないことをしてそう、だとはわかっていても、具体的に何をしているのかはわからない世界を、大人になってこんな解像度で書くのがすごい。僕は小学校低学年当時の感覚や感性なんて忘れてしまっている。

  • あらすじからもうストーリーはなんとなく分かるし嫌な予感しかしないのにそれが尾崎世界観さんによってどう表現されるのか気になって読んでしまった。
    最悪な状況を純粋でまだ表現できる言語や世界が限られた小さな子供の目線で一生懸命に感じたままに描写されているところに胸が苦しくなるが、暗いテーマを暗いままに表現しないのがこの作者の上手なところなのだろう。

    唯一の味方であり支えである母親の仕事が何か汚い仕事だと感じながらも母親の温もりや愛情を欲し母親も精一杯に娘を愛する姿に、こんな家庭環境の全ての人達にどうか幸せになって欲しいと心から願うことしかできない。
    まともな大人が一人も出てこない本作だからこそ、あとがきの又吉さんの文章と自分の感覚を擦り合わせて安心感を得られた。

    この本を読んだ人には、全く同じテーマと環境が描かれた美しい映像の映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』もぜひ観て欲しい。

  • うまいなあ
    カーテン越しの音でしか母を知ることができない
    子供の限られた語彙で伝える惨状
    よくわからないことは救いなのかどうか

  • 小学生の目線で書かれたお話
    タイトルの意味は最後まで読むと理解できる。
    貧困やシングルマザー、性感マッサージ…
    カーテン越しで行われている母親の行為。
    「イク」「行く」の聞き違いなど、大人になって理解できることが読んでいて苦しくなりました。
    又吉さんの解説も読みごたえあります。

  • 小学生の視点で、分かることと分からないことが明確に書き分けられているのがすごいなぁと思った。

    お母さんがマッサージ店で働いている間、隣のベッドで待つ主人公。「言っていい?」とか「こわれたところを直す」とか、主人公が性的な施術を分かりきれてないところも、行為の生々しさを際立たせていた。

    「変タイマッサージ店」とか杏仁豆腐にハムスターのウンコ乗せられたりとか、あからさまにいじめを受けているのに、傷ついているように見えなかった。ハムスターが死んだときも。お客さんからお母さんに向けられる、蔑む視線以上に禍々しいものはないのかも。

    描写を小学生までにとどめることで、突き放しも引き寄せもしてもらえない痒さが、純文学って感じした。

    世の中にあるエンタメ、すべて人間関係がテーマになってると思うと不思議だな。その視点で読み解くと、それぞれの癖が見えて面白そう。

  • 簡単に言うと親ガチャに失敗した少女の内面の成長の物語。
    幼い少女の目を通して描かれる社会があまりに残酷で、何度も目を背けたくなった。
    影のない父親を含めて男たちの人間性がどれもこれも悍ましいのだが、現実世界にも確実にこの手の男は存在するだろうという嫌な説得力がある。
    母親の行動や描写に少し引っかかったが、おくれてるという表現で腑に落とされた。
    この母の人生も読んでみたい。

  • 所々のひらがな・子供なりの変換能力があり、子供視点になりやすかった。
    小説と映画で、小説にしか出せないものってなんだろうと考えていたが、まさにこの作品だった。

    誰も名前が明かされないまま話が進む。
    (選挙ポスターのお父さんを除く
    異様なまでに会話が少なく、主人公の心情がベース。
    拙い表現で、よく汚れを思い浮かべる。

  • ああ、居心地が悪い
    でもここにしか居場所がない

    小学生の時って分かってないけど分かってる事っていっぱいあったなぁ

    椎名林檎が、釣り人が釣った川魚を水筒に入れてるのを見て「棺桶みたい」って言ってるのを見た時その感性が羨ましくてゾワッとしたけど、
    それと同じゾワッが続く本だった

  • お母さんがいるからこわれるのに、お母さんがいるから直った

    私の反たいがわにはいつもお母さんがいて、お母さんの反たいがわにはいつも私がいます

全38件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル、ギターを担当。作家としても活動し、これまでに小説『祐介』、日記エッセイ『苦汁100%』『苦汁200%』(いずれも文藝春秋)、『犬も食わない』千早茜との共著(新潮社)を上梓。

尾崎世界観の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×