浅草博徒一代―アウトローが見た日本の闇 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101075211

感想・レビュー・書評

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  •  バクチ打ちというのは、今の暴力団とはまったく違います。バクチ打ちというのは、サイコロひとつで生きて行く一種の職人です。だから人情というものが大切で、人を痛めつけて自分だけ儲かりゃあいいというような考えでは、到底生きてはいけない世界ですよ。
    (P.78)

    親分になるような人間は、根性があるとか腕っぷしが強い、なんていうだけではまったくだめです。そんな人間はいくらでもいますからね。大切なのは、親分の為だったら命も惜しくない、と子分が惚れ込んでしまう器量です。
    (P.109)

    「さあ、どっちが足りねえんだ、どっちからでも張ってやら、なにぐずぐずしていやがるんだ。考えて勝てるものなら百年でも考えてろ!」なんて言って、札束を、まるで新聞紙でも張るようにばっさりと賭ける。
    (P.305)

    私は、確かに深川の女郎屋に足を踏み入れたこともなければ、駆落ちしたこともない。しかしどうしたわけか、そのようなことを過去において絶対にしたことがないとは到底思えないのだ。
     もしかしたら彼の世界は私の世界であり、同時に父や祖父や、平凡な大勢の人々の共有の宇宙なのかもしれない。彼の生きた時間の異質性は単に見せかけのものであり、その深部には、私たちと同じ空気が流れているのかもしれない。
    (P.417)

  • 『浅草博徒一代-アウトローが見た日本の闇-』
    佐賀純一 著

    関東大震災に、二度の戦争を経験した明治、大正、昭和初期を生きたやくざの親分伊地知栄治の体験記を、町医者である著者が録音テープから起こした一冊。

    暴力団でも香具師でもなく、やくざの親分。
    当時の下町の町人たちの生活や、軍部の動向など、当時を知る手掛かりとしては大変に面白い。
    敗戦時の玉音放送の際には、国民皆が泣いたなどと言われているが、実際には殆どのものが終戦に歓喜し、手当たり次第、軍部が貯蔵していたものをかっぱらっていったなど。

    満州での当時の状況や、戦争中の凄惨な行いが、べらんめえ調で語られる。
    正に爺さんの戦争体験記や昔話を聞いてるみたいである。

    本書は昭和60年に発刊された作品だが、数十年後ボブディランの引用疑惑で、再び日の目を見ることになった一冊。
    英語版『confessions of a Yakuza』

  • 大正から昭和にかけて生きた浅草界隈の賭場の親分さんの一代記。本人の話もいいが、ディケンズっぽく挿話で語られる別の人物の物語がまた面白い。親分はやくざの決まりごとの中でまっとうに(?)生きているけれど、もっとアウトローな世界で生きている人たちの目はとても冷めていてとても孤独だ。そっちのほうにぞくっとした。

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