- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101093017
感想・レビュー・書評
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(2012.11.15読了)(1979.11.18購入)
【11月のテーマ・[石川啄木を読む]その②】
石川啄木の詩、短歌、日記、手紙、評論、小説、随筆、等が収められています。
啄木の人生にふれることができます。短歌を読んでみると、どんなことでも短歌になってしまう、という感じです。しかも、読みやすく、わかりやすく、共感できるものがたくさんあります。今まで何気なく聞いていて、覚えている作品の多くが、啄木の作品でした。
詩は、この本を読む前に『あこがれ』角川文庫、を読みましたが、短歌に比べると、親しみにくいものが多い印象でした。
手紙は、借金のお願いや、返済できないお詫びなどが多く、生活の苦しさが伝わります。
小説は、彼の自信の割には、ちょっと売り物にはならない感じです。
【目次】
飛行機
一握の砂
蟹に
我を愛する歌
ひとりゆかむ
林中日記
妹よ
白き顔
煙(一)
二筋の血
幽思
煙(二)
食うべき詩
君が花
秋風のこころよさに
性急な思想
桜のまぼろし
硝子窓
辻
月と鐘
二十一歳の手紙
啄木鳥に
二十三歳の手紙(一)
水無月
二十三歳の手紙(二)
柳の葉
菊地君
はてしなき議論の後
墓碑銘
時代閉塞の現状
石川啄木対照略年譜
解説 古谷綱武
●目をあげ給え(10頁)
年若き旅人よ、何故にさはうつむきて辿り給ふや、目をあげ給へ、常に高きを見給へ。かの蒼空にまして大いなるもの、何処にあるべしや。如何に深き淵も、かの光の海の深きにまさらず、如何に高き穹窿もかの天堂の高きに及ばじ。日は恒に彼処にあり。
●宝玉(11頁)
賢女コルネリオ、一婦人のために其の所持の宝玉を見んことを望まるるや、己が愛児を指して、彼等こそ妾が第一の宝玉なれと答へき。まことに然り。たゞ可愛ゆしといふのみにては、恐らくは其の意足らじ。神の如く無邪気なる小児ほど、何物にもまして貴きものはなからむ。
●朝寝(24頁)
目さまして猶起き出でぬ児の癖は
かなしき癖ぞ
母よ咎(とが)むな
●仕事(26頁)
こころよく
我にはたらく仕事あれ
それを仕遂げて死なむと思う
●雨降り(33頁)
雨降れば
わが家の人誰も誰も沈める顔す
雨霽(は)れよかし
●借金(35頁)
実務には役に立たざるうた人と
我を見る人に
金借りにけり
●なまけ者(85頁)
そのかみの学校一のなまけ者
今は真面目に
はたらきて居り
●死(107頁)
八歳の年の三月三十日の夕!それ以後、先ず藤野さんが死んだ。路傍の草に倒れた女乞食を見た。父も死んだ。母は行方知れずになった。高島先生も死んだ。幾人の友も死んだ。やがては私も死ぬ。
●詩を創る(124頁)
自分でその頃の詩作上の態度を振り返ってみて、一つ言いたい事がある。それは、実感を詩に歌うまでには、随分煩瑣な手続きを要したという事である。譬えば、一寸した空地に高さ一丈位の木が立っていて、それに日があたっているのを見て或る感じを得たとすれば、空地を広野にし、木を大木にし、日を朝日か夕日にし、のみならず、それを見た自分自身を、詩人にし、旅人にし、若き愁いある人にした上でなければ、その感じが当時の詩の調子に合わず、また自分でも満足することができなかった。
●東京(184頁)
とにかく僕は東京が好きになった。ペンを置いて、大いなる都の響きを聞くのは誠に心持が可い。
☆石川啄木さんの本(既読)
「ROMAZI NIKKI」石川啄木著、岩波文庫、1977.09.16
「あこがれ 石川啄木詩集」石川啄木著、角川文庫、1999.01.25
(2012年11月19日・記)詳細をみるコメント0件をすべて表示