二つの祖国 上巻 (新潮文庫 や 5-19)

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  • 新潮社
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104195

感想・レビュー・書評

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  • <言>

    ぼくんちの積読本の小山の中から発掘して読み始めた。文庫本 上/中/下の構成でしかも一冊がまあ3㎝程の厚みがあって読み始めるのにはちょっと決心が必要だった。4月の中旬に2泊3日の帰省&音楽会参加の旅に出るのでその移動時間を使って読もう,とこの一冊だけ持って出かけた。僕の旅は基本貧乏なので高速バスを多用する。するとバスに乗っている時間は異様に長く本を読む時間はタップリある。

    でも今はスマホという強力な敵?がいて,油断すると変な動画ばかり見て本を読み進められない事が有る。65歳を過ぎてこんな強敵が現れるとは思ってもみなかった。まあ,面白いから見てるんだからそれはそれでいいけど。本の作家さんもスマホに負けない作品をどうぞ書いてください!(しかし世の中老若男女ほぼ全員があらゆるところあらゆる時間でスマホを見てるね。もう認めざるを得ないけどスマホというインフラを制する者は人類を制するねこりゃ。戦争なんてやってる場合じゃないよw)

    山崎豊子の書く文章は読んでいて,僕自身が一番納得できる正しい日本語の文章だなぁ,とこの『二つの祖国』を読んであらためて感じた。言葉はどんどん変化してゆくものなので,その時場合によっては今読むとおかしい もしくは古臭い言い回しもあるかも知れないが,僕が日本語として 小さなころから沢山触れて学んだ文章はこの山崎豊子と概ね一致するのだろう。加えて丁寧に状況を説明してくれていて読者を煙に巻くような最近はびこる無粋作家の様な事はしていない。ここも好感が持てる。

    今回はいつもと違って物語の要約/概要を少し書くことにする。なぜ,って。なんかそういう気分なのだ。

    全体として二次大戦当時のアメリカと云う国の豊かさや民主的な部分がかなり詳らかに描かれていると感じた。当時の日本側の悲惨さと比べるとこりゃもう戦争したって端から勝てるわけがない,ということの確たる証拠みたいなもんだな。もちろん僕の年齢では当時の事を我が目で見たり耳で聴いたりしたわけではないが 戦時中の事は映画やテレビや本 あるいは曾祖父母からの直接口伝などで 嫌と云う程に事情を仕入れているからなぁ。

    洗濯物は男女別,と云うお話。リトルトーキョーでは洗濯屋を営んでいた主人公の両親がもし故郷鹿児島へ帰っても。「いや,鹿児島の加治木は,家族の洗濯もんも,男と女は別々の盥(たらい)を使う土地でアメリカ式の洗濯屋をやるちゅうことは,・・・」そっか,昭和初期のしかし日本の一部の地域でのことだな。うちなんかは四国の田舎町だったけどいしょくたに洗ってたもんな。(笑いながら「中(巻)へつづく,と思うw)

  • 覚悟はしていたが、重い。
    上下巻続けて読むには非常に体力を要するね。。。

    二つの祖国をもつ人々は、共に両方の祖国から疎まれて生きてきた事実。

    紛れもなく“祖国”であるはずの国家からの信頼を得るためにと、血の証しを立てねばならなかった人々。そこに散らされてゆく生命。。。

    血を分けた肉親でありながら、歴史の運命に弄ばれて敵味方に別れざるを得ない家族。。。

    重い。重すぎる。

    戦の結末は歴史が証明しているのを考えると、登場人物たちの未来には、どう考えても一抹の光明さえ見出だせそうにない。。。。。

    下巻は、そうとうな覚悟をもって読まねばっ。

    ★4つ、8ポイント。
    2017.02.17.図。

    ※主人公の妻が、嫌なヤツすぎる。
    ……育った環境のお国柄の違いによる不可抗力でもあるのだろうが。

    ※友(“親友”未満)の元妻との、淡く切ない、自覚すらできていない程にかすかな恋心が、やるせない。

    ……山崎さんなら、安易に結ばれさせたりはしないだろう(「白い巨搭」で証明?)と思われる点が、、、、、
    不倫愛の肯定に嫌悪感を感じる自分にとって、安堵できるような、逆により切なくなるような、、、。

  • 大学入試の赤本に問題の関連本として載ってた作品。

    上下に分かれてる版を読んだんだけど、上下がセットになってる本しか登録できなくて、上だけ読み終わったからここに感想書く。

    色んな立場の人が出てくるけど、それぞれの背景があってみんな自分の信念を貫いて生きてるから誰も悪いと言えなくてそこが読んでてすごく辛い。特に帰米二世は日本にもアメリカにも居場所がなくて、アメリカ国籍であっても見た目が日本人だからバカにされ、日本に行ってもスパイだと疑われて苦しかっただろうなって。主人公賢治と弟の忠が戦場で出会ってしまい、賢治が間違えて忠を撃ってしまうシーンが悲しい。

  • 最近テレビドラマ化されていたポスターを見て再読、ドラマ化もこういう契機にはなりますよね。
    ともかく、★評価は読了後ですが、長い、正直申しまして。色んな事を書き込みたい気持ちは良く分かりますが、それが正しい選択か否かはまた別の話、という感を受けますな。
    題材は重いものだし、考えさせるものなんですが、若干主張が濃すぎるかもしれませんね、現在の当方の置かれている読書環境からは。
    色んなことを考えさせてはくれます、確かに。

  • 1巻目なので、物語に対しての詳しい感想は書かないが、濃厚な物語に圧倒される。
    第二次世界大戦の当時、日系人が強制収用されていたことは知っていたが、詳しいことはわかっていなかった。アメリカ国籍を持つ二世が、いったい、なぜ、差別され、排除されなければならなかったのか。その不公平に対しての不条理、理解できなさを、どこにぶつければ良いのか、一世も二世たちも憤懣やるかたなかったことと思う。
    自ら志願してアメリカ兵として戦場に赴くことも、そのアメリカ人としての証明と自身のアイデンティティを求めてのことだったのだろう。

  • 私の時代で記憶がある限りでは、日系アメリカ人のアメリカでの迫害について、収容所の中で何が行われていたのか、まさか同じアメリカ人でも日系人というだけでこのような迫害を受けていたとは歴史の授業の中で習わなかった。日本史では、いつだって日本側で起こった歴史のみにフォーカスしていてこういったアメリカ側の日本人についてはいつも置き去りにされているように感じていた。
    今、上巻で始まってどんどん彼らの中で何が行われていたのか、日系の中の右翼左翼、一世や二世、そして日本で教育されたものとアメリカで教育された者の考え方の違いから彼らの中でも論争や暴動などが行われてきたことなどが読み進めることで明るみになってきたところ。
    ナショナリズム、ナショナリティとは何か。今の日本がこれからの未来でかかわっていく問題。アメリカのような多人種国家になっていく中で、肌の色、宗教、人種の違いはあれど、その国で生まれ育っていくというのはその国のナショナリズムを持つことである。人種の違いなどで色眼鏡で見る時代はもう終わり。

  • 第二次世界大戦中の日系二世の話。
    僕たちの知らない戦争がアメリカの国内でもあったんだな。
    国対国、個人対個人、個人の集合が国であるはずなのに、国と個人がイコールにならないなのは、悲しいことです。

    そして、きっと今もこの世界のどこかにはこれと同じ種の悩みを抱えてる人たちがいるというのは怖いな。

  • 強い有色人差別の中、生活基盤をゼロから築き上げ米国への忠誠を誓ったにも関わらず日米開戦と同時に全てを奪われ、翻弄されていく日系移民の生き様を描いた作品。

    パールハーバーアタック後、12万人の日系移民が砂漠の強制収容所に送られ、その中には米国生まれ米国育ちで米国籍を持つ日系二世や、先の世界大戦で名誉勲章を大統領府から授与された日系軍人も多くいた。
    国とは何なのか、国籍とは何なのか。同民族間の対立がどれだけ悲劇的なのか。戦前の有色人種差別の実態。
    今の日本では平和すぎて想像が及ばないテーマを、二重の祖国をもちそれ故に狭間で苦悩する日系人の描写に否が応でも考えさせられる。

    山崎豊子の作品は質量共に重く、読むには覚悟がいるけれど読み出すと一気に止まらなく引き込まれてしまう魅力がある。

  • この本に出会うまで、第二次世界大戦中にアメリカに移住していた日系人が迫害されていたという事実を知らなかった。
    その史実を知らなかった自分を恥じたし、20代前半で事実を知ることができてよかったと思う。

    調べたところによると、物語は半フィクション。
    実際のモデルといわれている人物は何人か存在する。

    歴史によって隠されてしまった事実。
    物語の完成度の高さは言うまでもない。(山崎豊子の作品ゆえ、期待は裏切られることはない。)
    読後、日本人としてこの歴史にどう向き合うかという大きな課題を与えてくれた一冊だった。

  • (全巻読んでのレビュー)
    アメリカと日本、二つの祖国の間で揺れる心。
    どちらも自分にとって大切な祖国なのに。

    日本に生まれて、日本で育った私には生まれ得ない葛藤。
    簡単にははかれないものが世の中にはあると高校生のときに実感させられた作品でした。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

山崎豊子の作品

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