巨人の磯 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101109404

感想・レビュー・書評

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  • 大洗海岸に巨人と見間違えるような膨張した死体が流れ着いた。死体は死後ある期間が来ると体内の臓器にある腐敗物のためにガスが発生して異常に膨れ上がるという。死体はどうやって流れてきたのかトリックが面白い表題作「巨人の磯」
    元銀行副頭取の原島は57歳で31歳年下の敬子と再婚する。年下の若い妻をもらった原島は徐々に悲劇に陥っていく。「礼遇の資格」
    古代史と絡める「東経139度線」。
    この短編集は古代史と絡めながら、動機は人間的な俗物的なもので面白いです。
    2023年10月21日読了。

  • 「松本清張」の短篇集『巨人の磯』を読みました。

    『聞かなかった場所』、『或る「小倉日記」伝 傑作短編集〔一〕』、『張込み 傑作短編集〔五〕』、『黒い画集』、『眼の気流』に続き「松本清張」作品ですね。

    -----story-------------
    一見、犯罪とは無縁な日常生活の中に潜んでいる不可解な人間心理を、斬新なアングルと手法でえぐった傑作推理小説集。

    大洗海岸に巨人のように膨張して漂着した海外旅行中の県会議員の死体と巨人伝説を巧みに結び付けた『巨人の磯』。
    実力はありながら、地味な風貌が災いし、どの組織でも決してトップの椅子にはつけない元銀行副頭取。
    男が三十一歳も若いバーのマダムと再婚したとき、悲劇が幕を開ける… 妻の不貞を知った夫の犯行を、その奇抜な凶器と、巧みな人物設定で描『礼遇の資格』。
    ほかに、『内なる線影』、『理外の理』、『東経一三九度線』を収録。
    一見、犯罪とは無縁な日常生活の中に潜んでいる不可解な人間心理を、斬新なアングルと手法でえぐった傑作推理小説集。
    -----------------------

    以下の5篇が収録されています。

     ■巨人の磯
     ■礼遇の資格
     ■内なる線影
     ■理外の理
     ■東経一三九度線



    『巨人の磯』は、水戸大串貝塚の巨人伝説と、大洗海岸に漂着した巨人のように膨張した溺死体を関連付ける古代史推理要素と、アリバイ崩しのミステリ要素を兼ね備えた物語、、、

    被害者の県議「水田克二郎」は台湾旅行中のはずであったが、周囲を欺いて帰国していたことが判明… 義弟「広川博」が容疑者として浮上するが、死亡推定時刻にはアリバイがあった。

    「水田克二郎」と義妹「トミ子」の関係は想定内でしたが、死亡推定時刻を誤認させるためのトリックには驚かされましたね。

    なかなか奇抜なトリックでしたが、法医学の知識が豊富でないと創造できないトリックでしたねぇ。


    『礼遇の資格』は、三十一歳年下の女性「敬子」と再婚した、風采のあがらない元銀行副頭取「原島栄四郎」の悲劇を描いた物語、、、

    両者の人間性が巧く描かれた作品でしたね… 地位のある人の妻になりたいという結婚目的を最後まで果たそうとした女性の言動に驚かされるとともに、妻の浮気相手を殺し人生の階段を転落した男性があまりにも哀れで同情してしまう作品でした。

    殺人の際に使われた凶器が、妻「敬子」の好物で、その後、その凶器を「敬子」に食べさせるという設定が秀逸でしたね。


    『内なる線影』は、精神科医「枝村」が、偶然知り合ったヒッピー画家「白水阿良夫」と「白水」の紹介で知り合った画壇の重鎮「目加田茂盛」とその妻「美那子」とともに玄界灘に面したリゾート地で殺人事件に巻き込まれる物語、、、

    ノイローゼが原因で投身自殺したと思われた「目加田茂盛」と謎の窒息死体(絞殺によらない短時間での窒息死)で発見された「白水」の死の真相… 慢性的なガス中毒と硫化水素を使った物理的トリックが用いられていましたね。

    物理的(科学的)トリックについては、「東野圭吾」の「ガリレオ」シリーズに通じる印象を受けました。

    そして、本作も『礼遇の資格』に続き、年の差婚(二十五歳年下の妻)が生んだ悲劇でしたね。


    『理外の理』は、娯楽小説誌の編集方針が変更されたことから、時代モノを得意としていた文筆家「須貝玄堂」は持ち込み原稿を没にされ続け、その結果、生活に困窮し、妻にも逃げられ(これまた二十歳くらい年下の妻でしたね… )、自らの作品『縊鬼(いき)』をもとにした復讐を実行する物語、、、

    堆積した怨念の恐ろしさを感じさせる作品… 蔵書を詰めた風呂敷という意外な凶器を使い、非力で小柄な老人でも工夫しだいでは殺人を犯すことができるということを証明した意外なトリックが使われていましたね。


    『東経一三九度線』は、古代史における大胆な仮説(東経一三九度沿いに新潟から伊豆まで並んでいる太占(ふとまに)の神事を行う五つの神社と卑弥呼("一三九"を"ひみこ"と読む)の東遷を関連付けて考察)と殺人事件を絡めたミステリ作品、、、

    妻との密通や職場での上下関係による忍従が動機となり、自動車事故にみせかけた犯行を計画したという展開は、面白くないことはないのですが… ミステリよりも、古代史における大胆な仮説を主張するために書かれた作品のような気がしましたね。



    本書に収録された作品は、殺害方法等のトリックが凝っていましたねぇ… 面白かった。

    最近、「松本清張」中毒気味ですね。

  • 一般的には序破急だが、清張作品は真ん中の破がなく、突然怒濤の展開となる。寧ろ最後に破局。

  • 短編集。古代史に造詣の深い松本清張ならでは素材が、活かされている。

  •  
    ── 松本 清張《巨人の磯 19770530 新潮文庫》中島 河太郎・解説
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101109400
     
    …… 大洗海岸に巨人のように膨張して漂着した海外旅行中の県会議員
    の死体と巨人伝説を巧みに結び付けた(あらすじ)。
    …… 法医学の文献ではありませんが(下記に)詳述されています。
    http://q.hatena.ne.jp/1146924651#a522413(No.1 20060507 16:37:43)
     
    ── 松本 清張《巨人の磯 19730720 新潮社》249p 15cm 220円
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4103204044
    http://www.timebooktown.jp/Service/BookInfo.asp?CONT_ID=CBJPPL1B(削除)
     
    (20170830)
     

  • 推理短編5つ。著者の博学、特に古代史の魅惑が、その重々しさに加えて淡々とした文脈に荘厳な感じを抱かせる。物語の前半に伏線ないまま、終盤にどっと解決に至る説明がなされるところが、そこがポイントとする他の推理小説と違うところか。2016.12.28

  • 「巨人の磯」
    法医学の教授清水康雄は大洗海岸に泊まった。
    夜の海岸を見に出た清水は岩場に水死体を見つける。死後2週間と見られ、身元の確認も難しいと思われたが、指紋から県会議員の水田と判明した。しかし、水田は沖縄と台湾に視察と称して旅行しているはずだった。その水田が何故大洗海岸に流れ着いたのか?
    関係者は水田の妻、秘書であり義弟でもある広川、広川の妻。
    果たして真相はーー?

    「礼遇の資格」
    銀行協議会副会長の原島は、常に「副」に甘んじる地味で目立たない男だった。原島には年若い後妻がいた。原島の妻敬子は派手なタチで、原島に満足せず、浮気を繰り返していた。
    敬子と再婚したことで、原島の運命は変わってゆく。

    「内なる線影」
    精神科医の枝村は、某ホテルのラウンジに一日中居座っている絵描きのヒッピー白水と知り合う。
    そして、白水の紹介で目加田夫妻と知り合った。
    目加田はここ半年ずっとノイローゼだという。付き添う夫人も半年ほど前にノイローゼになったが直ぐに治ったそうだ。
    そんな目加田の相談を受けていた矢先、目加田が失踪する。また、白水の遺体も見つかった。そして、目加田の死体も海から発見される。
    目加田はノイローゼからくる自殺とされた。一方の白水は、絞殺でないのは確かだが、急速な窒息死であるとされた。しかし薬物は見つからなかった。
    この2人の死に関係はあるのか?目加田は本当にノイローゼだったのか?白水は何故窒息死したのかーー?

    「理外の理」
    雑誌Jの売上を伸ばす為に新しくR社に入社した編集者の方針により、今までJに寄稿していた作家達の作品は全て載せないこととなった。
    だが、随筆家玄堂は何度も何度も原稿を持ち込む。だが、ある日玄堂は「これで最後にする」も担当の細井に告げた。そして、最後の原稿「縊鬼」を模した実験をしてみないかと誘う。

    「東経一三九度線」
    文部政務次官となった吉良栄助。仕事にも慣れて来た時、かつての級友でもあり同じ文部省に所属している小川課長補佐が訪ねてきた。東経一三九度線に関する謎に元皇族の殿下が興味を示しているという。俄然乗り気になった吉良は、小川を始めとした級友前川、谷田、そして恩師岩井教授たちと共に、下調べに行く。
    だが、そこで吉良は自動車を運転している最中に崖下に転落し死んでしまう。なぜ、吉良は死んだのかーー?

  • 推理と言うよりは人間ドラマが主軸の短編集。それだけに(特に表題作)トリックや犯行が凝っていると浮いた印象を受けてしまう。登場人物の犯行に追いやられる悲哀というか、自尊心をすり減らす描写が印象に残った。

  • 大洗、大磯などを舞台とした作品です。

  • 2011.5.31読了
    清張は好きだけど、この短編はちょっとまどろっこしい。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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