洪水はわが魂に及び (下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.74
  • (19)
  • (22)
  • (20)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 226
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126135

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アンチクライマクスが代名詞のような大江にあって、驚くほどストレート、かつ見事なカタストロフィ小説。ここまでコートームケイなストーリーでありながら絶妙に現実とリンクする、この時期の大江の咲き乱れる想像力の凄まじさ、充実は何度考えても震えがくる

  • タイトルから受ける印象が読み終えたことで確定され、どうしようもない気持ちになる。やはり解説はとても良く、よくもこんな短い文章でこの本のエッセンスをまとめられるなと思う。ヴァルネラブルな魂、、
    それにしても洪水のイメージを遡及的に、読み終えてタイトルを眺めてる時に実感したのでその瞬間の重さに一瞬耐えきれなかった

  • ううむ。自由航海団の若者らがいったい何をしたかったのかまるでわからん……。
    あさま山荘の連合赤軍の諸君に共感してつくられた小説、とのことだが、自由航海団も主人公の勇魚も、独りよがりで被害妄想をこじらせた(著者はこういうタイプの人物をよく書く)アブナイ人たち、としか思えんのだ。
    これは30年前に読んだときもそうだが、共感できないというか、どちらかといえば鎮圧に向かって射殺された機動隊員がかわいそうだなぁ、とむしろそちら側に寄り添ってしまう。
    まあたしかにジンの設定はきれいだがそれだけだな。

    などと言いつつ初期短編集を読み返してみる。

  • ヒロインがあまりに都合の良い女なのでそこだけ惜しい。
    それ以外は圧巻。

  • 軍事訓練している写真が週刊誌で取り上げられて危険分子とみなされ、機動隊と睨み合いとなりシェルターで篭城することになる。そして、勇魚は「樹木の魂」「鯨の魂」に最後の挨拶をする。とにかく長くで読むのが大変でした。

  • 核シェルターの中で壮絶なまでの死を迎える勇魚の姿は、世界の終末の喩であるかのごときだ。この巻では権力の圧倒的なまでの暴力が、きわめて具体的なものとして語られるとともに、一方では自由航海団の夢は抽象的なままに崩壊してゆく。鯨が鳴き交わす声に包まれたエンディングは、ディストピアながらも感動的でさえある。

  • よいねー。僕らの世代にはないアツさだと思う。最後のほうとかみんな格好よすぎ。

  • 大学の授業中(授業も聞かずに)一生懸命読んでいたころが懐かしい。

    「すべてよし!」
    壮大な展開に圧倒されます。

    各個人の思想の自由が一応許されておりますが、いくら当初は尤もな理想を掲げていても、閉鎖された集団だと理論がこじ付けとなり暴走するのだとつくづく感じた。
    近年だとオウム真理教の一連の事件でその閉鎖された集団の暴走の恐ろしさを、思い知ったと思う。

    この作品はあくまで「暴走した集団」の立場から美しく描かれているが、恐ろしい作品です。
    恐ろしい作品、というのは作者の才能を指しております。

    また、タイトルが美しすぎますね。

  • 100204(m 100509)

  • 上巻参照

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大江健三郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×