不信のとき 下 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2006年6月27日発売)
3.64
  • (32)
  • (65)
  • (80)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 441
感想 : 64
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784101132235

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昭和42年日経新聞に1年間連載された長編作品。
    当時の「サラリーマン」読者はどれほど肝を冷やしたことか、クスリと想像しながら頁を閉じる。

    有吉さん作品の常套句「石女うまづめ」は本作でもキーワード。今は完全アウト!の用語だが、当時世間の暗黙の了解は「子を産み育て、家を守ること」こそ結婚や夫婦の一義だったことが透けて見える。

    50年近くの年月が過ぎ、価値観も次第に変わってきていることを実感する。

    主人公は一流商社宣伝部長のサラリーマン浅井。有吉作品には珍しい男性主人公だが、今ならばどうしようもないダメ男。

    妻への裏切り、自らの度重なる不貞行為の正当化、言い訳の数々。有吉さんの筆が容赦なくダメっぷりを露呈させる。彼は自己弁護に終始し男性側の愚かさを顕していくが、最終盤は怒涛の展開。痛快そのもの。

    主人公浅井が手に入れたつもりのものと、失ったものを想像する。
    同時に専業主婦として安穏と過ごしていた本妻道子が書家として経済的にも自立し、世間の耳目も夫以上に集め、自らの脚で歩き始めた気概にスカッとする。

    終盤は当時まだ先駆け的だった人工授精や男性の不妊症についても触れられ、有吉さん流の社会問題提起だったのではと読む。
    「産む/産まない/産めない」は人それぞれであり、子どもを産んでこそ女性として一人前という当時の価値観へ一石を投じたのではないか。

    それは今まさにアメリカを二分する中絶や問題山積の代理母出産にも通じるものであり、正解が一つではないことの重さを嚙みしめる。

    男とはこういうものだとか、「男の甲斐性」の轍にはまり切ってしまった男性の愚かさと、虎視眈々と自ら欲しいものに手を伸ばして前に進んだ女性たちの強い眼差しの対比、やっぱり有吉さんの作品は癖になる。

  • 女性サイドだと、痛快な下巻でしょうか?随分、身勝手な男で自業自得でしたが、男性サイドから読むと、腹をくくった女性は怖いですね。特に、全て計算しつくして、演じてきたマチ子は怖すぎでしょ。太刀打ちできません。

  • 感想は上巻の方に纏めて書いてしまひました。

  • マチ子のように 何もいらない、何も求めませんから
    みたいに欲のないフリをしている女が一番怖いんだよ。
    もっともそれに騙されてる男が一番哀れ。自業自得。
    男たち、奥様を大切になさるがいいわ。

  • 昭和時代に書かれたとは思えないほど、今の時代にも通じる話。男女の関係は今も昔も同じってことでしょうか。

    不倫する男に対する女性の復讐、それも非情な復讐ということで惹かれて読んだのですが、うーーーん、そこまで、でした。
    道子はいいと思うんです。
    ですが、なんで路子があそこまで偉そうになれるのか、話を大きくできるのか、よくわかりませんでした。ちょっとイライラ。

    浅井と小柳のおばかコンビは滑稽で、なんか憎めなかったです。私の関係者にいたら吹っ飛ばしますが。

  • 怖いですね~。不倫がばれる修羅場ってこういうことなんですかね~。とつい気になって読んでしまいました。

  • 新婚さんや超ラブラブの恋愛中の人は読まないほうがいいのかな?
    不倫がばれちゃう瞬間は
    なんて怖くて楽しいのでしょう。

  • 上手に株で儲けているひともいるわ
    私は株より子供
    子供は絶対危険のない成長株よ

  • ようやく読了。いつ浅井の不倫がバレるのか、誰が誰に対してどんな復讐が始まるのか、最後はどんな結末を迎えるのか、と、今か今かと待ちくたびれながら読んでいたが、下巻の260頁からが、スパート。
    結局、浅井も小柳も、これからどうすりゃいいんだ⁈なにが真実(だったん)だ⁈という終わり方で、まさに不信のとき。
    解説にもあったけど、浮気はときに男性が想像していた以上に恐ろしい結末を招く。本作は、男性に対する警笛だと(笑)。高度成長真っ只中に書かれた作品だから、男性社会への警鐘というわけだけど、今は女性にも同じことが言えるだろうから、今度は男が女をはめる『不信のとき』が読みたいな。
    ストーカー殺人事件とかじゃなくて。

    それにしても、有吉佐和子さん、いわゆる才女なんだろうなって勝手に想像してたけど、キュリー夫人に憧れて、理系(科学)専攻だったなんて意外だった。

    たしかに、華岡青洲の妻も、歴史物・女のドロドロものっていう印象が強いが、医学という科学が取り上げられているもんな。

    次は、悪女について、恍惚の人、複合汚染、紀ノ川、香華を読んでみたい。

  • ドロ沼系のお話です。。。

    長年子供ができなかった奥さんの妊娠
    浮気相手の妊娠

    旦那は奥さんと浮気相手との二重生活を両立して、
    奥さんは騙されっぱなしなのかと思いきや、
    最後の最後でどんでん返しが来ます。
    奥さんも浮気相手も一枚上手だったなぁー

    女って怖いと思う作品の一つ。。。

  • 大好きな作家さん。
    これは、初めて読んだときに、実は下巻から読んだ。
    下巻から読んだのに、「早く上巻読みたい」と思うほど、有吉さんの文章は、何度読んでも飽きない。しかも古くない。他の著作もそうだけれど、内容まで古くないのは有吉さんが鋭いのか、人間とは変わらないものなのか、さてさて。

  • オチの強烈さというより、結局子供の父親が誰か分からんということの方が男に対する激烈なほどの当てつけ。
    多分こういう感じの戦闘的な女性作家はあんまり最近見かけないし、何より種の存続ということに対する強烈な自負心がすごい。そのエネルギーがこの小説を書かせているとさえ思います。

  • 女は計算高いなと、自分も女なので思うが、男はつくづくバカだな。

  • 上卷主要是小柳老人和淺井偷情過程的開展,中間情人紛紛產下小孩之後暫時書中步調較為沉寂,沒想到其實是在鋪後面女人們的復仇的一大段梗,最後面讀起來真是暢快淋漓,也不禁再度佩服作者編織故事和安排情節的功力。自從進入高潮階段之後,就一路極速狂飆的暢快感,完全一掃前面的沉寂,令人拍案叫絕,實在是一本相當出色的小說。其實整部故事閱讀過程一直覺得非常有趣不忍釋卷,我也感謝這本小說陪我度過最近面臨的新挑戰,完全帶我沉浸於書中的另外時空。或許科技總有一天會發明出任意門或者時光旅行機,但優秀的文學和藝術作品早就一直都能讓人浸淫於不同的時空與世界,而這種充實感是任意門或時光旅行機完全無法創出的。不管科技再怎麼進步,希望人類不要忘記文學帶給我們神遊的每一刻。

  • めっちゃおもしろかった!
    女こわい

  • 夫の不倫を知った妻の復讐話。
    全体の四分の三(下巻の前半)までは不倫相手に子どもを産ませたことがバレないので、ハラハラしながら読むことになる。

    復讐は見事なほどに容赦ない。
    女2人の賢いやり口に斬られる男、って感じ。
    ちょっと可哀想かな、とも思ったり。

    この本が出版された頃は不倫する男なんて今以上に沢山いただろうし、現実では泣き寝入りする女の方が圧倒的に多かっただろう。
    それを思えば、これくらいでも生ぬるいのかもしれない。

    昭和40年代の日本は、今とはいろいろ違った部分があって、その点でも楽しめた。

  • こういう浮気男の話はいつの時代も変わらないんだよな~と呆れ、60年代(?)の風俗描写に時代の移り変わりに愕然とする。

  • 女は怖い・・・

  • 初読は女性のドロドロした内面が鼻についてしまったのですが、落ち着いて読み返すとどんでん返しも面白く読めました。
    ミステリーですね。

  • どっちの言い分が本当なの???

全54件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

有吉 佐和子(ありよし・さわこ):1931年、和歌山市生まれ。作家。東京女子大学短期大学部英語科卒。1956年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』『和宮様御留』など話題作を発表し続けた昭和を代表するベストセラー作家。1984年没。

「2025年 『有吉佐和子ベスト・エッセイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

有吉佐和子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×