項羽と劉邦(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152325

感想・レビュー・書評

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  • 生きるために、食物を得るために、戦って領土を拡げるしかなかった時代。
    たくさんの登場人物が出てきますけど、その誰もが惹きこまれる個性を持っています。もし、この時代に生きていたら自分はどの人のように振舞っていただろう?と考えさせられました。

  • 2015/12/20

  • 有能なリーダーと無能なリーダー、そんな対照的な二人の闘いの物語・中盤戦。

    上巻では影も形もなかったですが、張良という人がいきなり登場します。
    彼は劉邦を天下人に至らしめた名軍師で、楚漢では項羽と劉邦に次ぐ魅力的な人物であります。

    この張良には、超大国を滅ぼしてしまった伝説の英雄・太公望呂尚の兵術書を謎の老人から授かったという、なんともドラマチックな伝説があります。
    そのため、彼の戦術は呂尚に非常によく似ている、ということが、本書でも指摘されています。

    宮城谷昌光さんの「太公望」という作品を読むとよく分かりますが、太公望はまさしく「準備の人」です。
    戦ってから勝つのではなく、勝ってから戦うというスタイル。
    張良という人はやはりこのスタイルを受け継いでいて、情報収集を柱にして、慎重に事を進めるタイプの人間です。

    さて中巻では、劉邦に手柄をとられたことでキレてしまった項羽が劉邦を呼び出して殺そうとしますが、劉邦がごめんなさいをして許されるという、かの有名な鴻門の会が描かれてます。
    ただ見所はそこではなく、中巻の最後の方、劉邦軍の籠城戦だと思います。

    劉邦は項羽軍に兵糧攻めされて、絶体絶命のピンチを迎えるのですが、最後の数ページ、ある方法で難局を乗り切ります。
    この最後の数ページで、ある下っ端の兵士がある行動をするのですが、その行動が劉邦軍すべてを助ける結果になるというのが、なんとも熱いです。
    同時にこの兵士の劉邦に対する忠誠心というのが、単なる忠誠心ではなくて、少し複雑だというのがポイント。

    終わり方が劇的だった中巻、楽しかったです。

  • あらためて劉邦が大きな空虚であることを思った。張良が将権を代行すると、まずいことが多かった。かれが一個の実質であるため、かれに協力する劉邦の幕下の多彩な才能群ともいうべき諸将は張良の意中をいろいろ忖度することに疲れ、結局はその命を持って動くのみで、みずからの能力と判断でうごかなくなってしまう。とくに後方補給と軍政の名人という点で張良以上である蕭何の場合、この幣がいちじるしかった。張良の作戦が正と奇を織り交ぜて複雑になるため、蕭何にすれば補給をどこに送っていいかわからず、結局は悪意でなく怠業状態におちいり、張良が後方の蕭何へ連絡者を走らせて命令と指示を伝えねばならなくなった。このため、張良も疲れ、蕭何も疲れてしまうのである。
    これが劉邦に指揮権がもどると、幕下の者たちは劉邦の空虚をうずめるためにおのおのが判断して劉邦の前後左右でいきいきと動き回り、ときにその動きが矛盾したり、基本戦略に反したりすることがあっても、全軍に無用の疲労を与えない。

    義は、正しさのために自然の人情を超える倫理姿勢をいう。この語感には、後世「外から仮りたもの」という意味が加わっていく。この当時から、すでに「実行上むりはありながら」という意味も詞(ことば)の中にまじっていた。しかし言葉の建前としての意味は、あくまでも正しさ、ということである。但しその正しさは個人の倫理感覚による判断というより衆人がともどもに認めるというたぐいのもので、この時代の場合の語感としては「衆ノ尊厳スル所ハ義ト曰フ」というほどの意味であった。

    「どうも勝手が違うのです」
    片頬の血だけを凍らせたように不快な表情でいった。正直なところ、韓信は巧妙な作戦をたてているつもりだったが、結果はそれを必要とせず、つねにむこうから勝利が勝手にころがりこんでくるようで、あれだけの軍の指揮をしたがったこの男としては、この点、不本意だっただけでなく、自信をうしないかけていた。戦とは自分がかつて考えぬいてきたものとは違うのはないかという、奇妙な恐怖もあった。この恐怖は、自分の才能に対する疑問というべきものだが、本来、勇気とそれと同量の臆病さをかかえこんでいる韓信としては、臆病のほうの内質にその疑問が食い入っていた。(なぜ、こうも勝つのか)ということを、韓信は懸命に考えていた。この経験から韓信はやがて哲理や法則をたぐり出すのだが、ともかくもこのときは劉邦からほめられることさせ物憂く、わずらわしかった。

  • 張良、陳平と新たな味方を迎えた漢軍。ついに始まった劉邦対項羽の攻防に、起死回生を狙う策略、そして死に物狂いの逃亡とさらなる攻防戦。
    まだかまだかと待ち構えていた鴻門の会の場面は、高校時代の古典の授業をぶわわっと思い出させてくれました。上巻でも登場していた范増や樊噲が絡んできて、あっそう繋がるのか!と脳内でリンクして一人興奮。
    司馬さんの淡々とした語り口はやはり苦手だけど、今から下巻の四面楚歌のシーンが楽しみです。

  • 人徳とは何か

  • これまで長い時間をかけて、上巻、中巻と読み進めてきたが、ここにきてやっと大好きだと、もっと知りたいと思えるキャラクターに出会った。
    彼の名は「紀信」という。
    周りの人間、もちろん味方や同郷の者を罵倒し、批判する。劉邦もその例外ではない。
    しかしながら、彼は劉邦だけを愛し、劉邦のために劉邦となる道を選んだ。
    究極のツンデレがここにはある。

  • 「最初に関中に入った者を関中王とする」楚の懐王の言葉を受けて、配下の項羽と劉邦はそれぞれ秦の中心地である関中をめざす。数々の戦いを制して一番乗りしたのは劉邦だったが……。

    強靭な肉体と類まれな戦闘能力をあわせもつ項羽にくらべて、卓越した能力はなにもない劉邦。しかし、彼の度量の大きさに惹かれて優秀な人材が集まってくるくだりがおもしろい。有名な鴻門の会が描かれている。

  • 11月

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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